元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

使用者は従業員が相手に加えた損害を賠償する責任がある!!

2013-03-01 18:07:32 | 社会保険労務士
 民法のいわゆる「使用者責任」とは?
 

 D君は蕎麦屋の店員であるが、出前の丼を回収に行ったマンションで、ドアーの前の丼を取って帰ろうとしたところ、隣のドアーが開いて出てきた住人が、この丼が目障りだといい、どうも酔っているらしくからんでくる。一応謝ったが、つっかってくるので、頭にきたD君は、相手を殴ってケガをさせてしまった。〈この設例は「民法がよくわかる本」(兒嶋かよこ弁護士著、PHP文庫)に出ている〉この場合は、店員はもちろん、蕎麦屋の店主も損害賠償の責任が生じる。

 民法715条は、「ある事業のため、他人を使用する者は、雇われる者がその事業の執行につき、第三者に加えたる損害を賠償する責任がある」となっているところであり、これを「使用者責任」といいます。これには、例外があり、但し書きで、雇われる者の選任とその事業の監督について「相当の注意」をしたときは、責任をまぬがれるとありますが、裁判では、厳密に解釈され、また、それを証拠立てのも、蕎麦屋の店主の側になっているので、無過失責任に近い形になっています。すなわち、雇う側としては、店員の選任や監督に、自分に過失がないとはいえないのが本当のところであって、ケガをさせてしまっては、損害賠償の責任が生ずるのがほとんどである。

 従業員が勝手に喧嘩をしたのであって、そこまで蕎麦屋の「事業の執行」に当たるのかということもあろうが、これも範囲が非常に広い。ちょっと我慢をすれば済むところを、勝手に喧嘩をしてしまったのだからと言っても、蕎麦屋の「事業の執行」に当たらないとかならずしもいえないのである。本来の事業執行だけでなく、付随的業務もその範囲と考えられており、例えば、別の例で、旅館の番頭が、客に為替の取り立てを依頼され横領した事件でも、使用者責任が認められているので、相当その範囲は広く考えられている。

 ただし、雇われている者という表現をしたが、使用者責任は、他人の労働を支配監督下におくことから、使用者と雇われる者の間に実質的な指揮監督関係(服従関係、指揮命令関係も同じ意味)にあることが必要であるとされている。将に労働法でいう指揮命令関係にあることが必要である。したがって、指揮命令のない、「委託」業務の関係にあっては、使用者責任は及ばないことになる。

 社労士が取り扱う労働法関係では、労働基準法やその他の労働関係法が主な法律になるが、この使用者責任は、使用者と従業員との関係について、その責任を使用者に問うものであって、「民法」の条項ではあるが、必要となるべき条項であると考えられます。

 (参考文献)有斐閣双書「新版民法(7)」編集遠藤浩他
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