縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
のんびり温泉に浸かり、美味しい魚で一杯。
夢に見た生活を楽しんでいます。

東京スカイツリーとブルジュ・ハリファ

2010-03-14 00:32:56 | 最近思うこと
 毎朝、東京スカイツリーを見ている。通勤のバスの中から見えるのである。もう随分高くなった。HPによると今の高さは 311m(3/6現在)。東京タワー(333m)を抜くのも時間の問題だ。今月中に抜くかもしれない。
 スカイツリーは2011年末竣工、2012年春開業の予定である。高さは 634m、東京タワーの2倍近い高さだ。完成すれば世界一高い塔になる(因みに、現在の世界一は中国の広州テレビ・観光塔の610m)。

 さて、間もなく抜かれる東京タワーであるが、その完成は1958年。日本の高度成長が始まった頃である。パリのエッフェル塔を抜く世界一の鉄塔であり、当時の時代の高揚感と相俟って、人々は夢と希望のシンボル、日本の成長のシンボルとして、建設を見守っていたのではないだろうか。
 高さで東京タワーを上回る東京スカイツリーであるが、人々の注目度、関心の高さという意味では、当時の東京タワーの足元にも及ばない。おそらく事業主体の東武鉄道と地元・墨田区以外の人は関心が低いだろう。毎日見ている僕にしても、何の感慨も思い入れもない。ただ出来つつある、高くなっている、という事実を淡々と眺めているだけである。
 皆、醒めている。この低迷の続く日本経済の現状を見るに、東京タワーの建設時のように、高くなるタワーに日本経済の高い成長を重ね合わせることなど到底できない。GNP世界第2位を目指していた当時と、中国に抜かれ3位に転落しようとしている今とでは、状況がまったく違う。

 もう一つ関心が高まらない理由として、東京スカイツリーが真の世界一ではないことがあると思う。確かに塔としては世界一であるが、建造物としてはブルジュ・ハリファの方がはるかに高い。ブルジュ・ハリファは、今年完成したばかりの、ドバイにある地上168階、高さ828mの超高層ビルである。ビルより低いタワーというのは、ちょっと様にならない。

 ところで、このブルジュ・ハリファ、建設中はブルジュ・ドバイと呼ばれていた。それが、昨年のドバイ・ショックによる資金難をアブダビが支援したことから、アブダビに敬意を表し、アブダビの首長の名前、ハリファに変更されたのであった。
 話がちょっと飛躍するが、話がブルジュ(塔)だけに、ドバイ・ショックはバベルの塔が思い出される。
 ドバイはイスラムの中では戒律が弱く、外国人であればお酒を飲めるし、女性の服装も自由だという。それにイスラム教では不浄とされるブタ肉もOKらしい。これだけでも他のイスラム国家から十分嫌われていたのに、外国資本を導入し、金融、流通、不動産、観光等で中東随一の成長を遂げていたことから、やっかみもあり、更に嫌われていたのであった。
 勿論ドバイ・ショックは、神の怒りや他のイスラム国家の怨念が理由ではない。単にドバイが金融という虚業と、自らが作り価値を増幅させた不動産・観光によって外国資本を呼び寄せたものの、その外国資本が一気に収縮して行ったことの帰結にすぎない。いわば他人のふんどしで相撲を取っていたツケが回った結果といえよう。

 翻って東京スカイツリー、注目されないものの、人知れず、少しずつ、しかし着実に高くなっている。東京タワーが高度成長を象徴したかのように、東京スカイツリーが今後の日本経済の緩やかな回復、成長の象徴になると良い。少なくとも自信も驕りも失った今の日本の状況で、東京スカイツリーがバベルの塔になることはないだろう。