まだ生きている人の半生を描くのは難しい。本人に話を聞けるメリットはあるものの、気を使って書けないこともあるだろうし。そう、例の忖度ってやつ。
エルトン・ジョンの絶頂期をリアルタイムで知る僕としては、封切り早々『ロケットマン』を観に行った。それも音が良いというDOLBY ATMOSによる上映で大枚2,100円もはたいて観た。
しかし、個人的には、同じデクスター・フレッチャー監督の『ボヘミアン・ラプソディ』の方が好きだし、主演のタロン・エガートンが本作同様「I’m Still Standing」を歌っていた『Sing』の方が楽しかった(おまけに『Sing』は飛行機で観たからタダだった)というのが正直な感想。エルトンの歌はやっぱり最高だし、タロンの歌も良かったのに何故だろう。
まずは映画のあらすじから。少年時代、両親に愛されたかったのに愛されなかったエルトン。彼の孤独を癒してくれたのは音楽。作詞家バーニー・トーピンとコンビを組み、「Your Snog(僕の歌は君の歌)」、「Crocodile Rock」などヒット曲を連発し、富も名声も手に入れたエルトン。しかし、どんなに成功を収めても孤独感は変わらない。今も自分は愛されていないとの思い。不安からアルコールや薬に溺れ、次第に身も心もボロボロになっていく。しかし、彼はあることをきっかけに再生する。
まあ、よくあると言えばよくある話である。もっとも『ロケットマン』が、ただのお涙頂戴物と違うのは、ミュージカル映画としてエルトンの曲が効果的に使われていることである。
『ロケットマン』は、エルトンをよく知らない人の方が素直に楽しめる映画かもしれない。エルトン・ジョンと聞いて、「Your Song」の人、ダイアナ妃の歌を歌っていた人、奇抜な格好をしたおじさん、同性婚をした人といった程度の知識しかない人の方が、悩み、苦しみ、もがくエルトンにうまく感情移入できるのではないだろうか。
これが変に知識があると違和感を覚えることが多く、ちょっと落ち着かない。例えば、時系列の問題。デビュー早々の公演でエルトンが後の大ヒット曲「Crocodile Rock」を歌っていたり、1976年にデュエットするキキ・ディーが映ったりするなど。それに「I’m Still Standing」は、実際にはもっと早くに作られた曲である。
そして、僕が一番違和感を覚えたのは、エルトンが酒や薬に溺れて行った理由である。両親から愛されなかったトラウマやゲイであることなどから、周囲との人間関係を上手く作ることができず、自らの殻の中でしか生きられないエルトン。確かに、それも一つの理由であろう。しかし、それ以上に、以前のように売れなくなったことが、きっかけになったと僕は思う。
エルトンの絶頂期は1970年代の前半である。アルバムは7作続けて全米第1位を獲得した。さらに1975年の『Captain Fantastic and the Brown Dirt Cowboy』というアルバムは、史上初めて、初登場で全米No.1という快挙を達成している。しかし、これがエルトンのピークだった。翌作『Rock of the Westies』は全米1位にこそなったものの、業界の評価は芳しくなかった。そして、以後、エルトンのアルバムが全米のトップに立つことはない。それなりに売れはするものの絶頂期の状況からは程遠く、70年代終わりからエルトンは過去の人となって行った。
一度栄光をつかんだ人間にとって、これは耐えがたいに違いない。売れないという事実は勿論のこと、自らの才能や能力の衰えに対する恐怖、あるいは世間から自分の歌が必要とされなくなったとの不安。映画では、そうした面はまったく描かれていなかった。成功の真っただ中で孤独を感じ崩れて行くというストーリー。大スターであるが故の孤独と演出上分かりやすくしたのか、売れない姿は出さないとの忖度なのか、そのどちらだろう。
エルトン・ジョンの絶頂期をリアルタイムで知る僕としては、封切り早々『ロケットマン』を観に行った。それも音が良いというDOLBY ATMOSによる上映で大枚2,100円もはたいて観た。
しかし、個人的には、同じデクスター・フレッチャー監督の『ボヘミアン・ラプソディ』の方が好きだし、主演のタロン・エガートンが本作同様「I’m Still Standing」を歌っていた『Sing』の方が楽しかった(おまけに『Sing』は飛行機で観たからタダだった)というのが正直な感想。エルトンの歌はやっぱり最高だし、タロンの歌も良かったのに何故だろう。
まずは映画のあらすじから。少年時代、両親に愛されたかったのに愛されなかったエルトン。彼の孤独を癒してくれたのは音楽。作詞家バーニー・トーピンとコンビを組み、「Your Snog(僕の歌は君の歌)」、「Crocodile Rock」などヒット曲を連発し、富も名声も手に入れたエルトン。しかし、どんなに成功を収めても孤独感は変わらない。今も自分は愛されていないとの思い。不安からアルコールや薬に溺れ、次第に身も心もボロボロになっていく。しかし、彼はあることをきっかけに再生する。
まあ、よくあると言えばよくある話である。もっとも『ロケットマン』が、ただのお涙頂戴物と違うのは、ミュージカル映画としてエルトンの曲が効果的に使われていることである。
『ロケットマン』は、エルトンをよく知らない人の方が素直に楽しめる映画かもしれない。エルトン・ジョンと聞いて、「Your Song」の人、ダイアナ妃の歌を歌っていた人、奇抜な格好をしたおじさん、同性婚をした人といった程度の知識しかない人の方が、悩み、苦しみ、もがくエルトンにうまく感情移入できるのではないだろうか。
これが変に知識があると違和感を覚えることが多く、ちょっと落ち着かない。例えば、時系列の問題。デビュー早々の公演でエルトンが後の大ヒット曲「Crocodile Rock」を歌っていたり、1976年にデュエットするキキ・ディーが映ったりするなど。それに「I’m Still Standing」は、実際にはもっと早くに作られた曲である。
そして、僕が一番違和感を覚えたのは、エルトンが酒や薬に溺れて行った理由である。両親から愛されなかったトラウマやゲイであることなどから、周囲との人間関係を上手く作ることができず、自らの殻の中でしか生きられないエルトン。確かに、それも一つの理由であろう。しかし、それ以上に、以前のように売れなくなったことが、きっかけになったと僕は思う。
エルトンの絶頂期は1970年代の前半である。アルバムは7作続けて全米第1位を獲得した。さらに1975年の『Captain Fantastic and the Brown Dirt Cowboy』というアルバムは、史上初めて、初登場で全米No.1という快挙を達成している。しかし、これがエルトンのピークだった。翌作『Rock of the Westies』は全米1位にこそなったものの、業界の評価は芳しくなかった。そして、以後、エルトンのアルバムが全米のトップに立つことはない。それなりに売れはするものの絶頂期の状況からは程遠く、70年代終わりからエルトンは過去の人となって行った。
一度栄光をつかんだ人間にとって、これは耐えがたいに違いない。売れないという事実は勿論のこと、自らの才能や能力の衰えに対する恐怖、あるいは世間から自分の歌が必要とされなくなったとの不安。映画では、そうした面はまったく描かれていなかった。成功の真っただ中で孤独を感じ崩れて行くというストーリー。大スターであるが故の孤独と演出上分かりやすくしたのか、売れない姿は出さないとの忖度なのか、そのどちらだろう。