縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
のんびり温泉に浸かり、美味しい魚で一杯。
夢に見た生活を楽しんでいます。

ボギーに乾杯

2007-03-21 16:41:08 | 芸術をひとかけら
 ひょんなことからアメリカ映画協会(AFI)がアメリカ映画100年を記念して行ったランキングを見つけた。輝く第1位は『市民ケーン』。そして、第2位『カサブランカ』、第3位『ゴッドファーザー』、第4位『風と共に去りぬ』、第5位『アラビアのロレンス』と続く。
 同じアンケートを日本でやれば、『ゴッドファーザー』が落ちて、『ローマの休日』か、ご年配の方が多ければ、西部劇の最高傑作『駅馬車』(ジョン・フォード監督、ジョン・ウェイン主演)あたりが入るのではないだろうか。僕は『ゴッドファーザー』が大のお気に入りだが、日本では主題歌『愛のテーマ』ほど、映画そのものの人気は高くはない。

 AFIは、このほかにもいくつかのランキングを発表しており、その中に“名セリフ・ベスト100”というのがある。この第1位は『風と共に去りぬ』のセリフ。大抵の日本人は、「そうか。やっぱりスカーレットの “ Tomorrow is another day ! ” か」と思うに違いない。僕もそうだった。が、これは31位に過ぎない。では、1位はというと、ラスト・シーンの前、レット・バトラーがスカーレットの元を去って行くときに言う捨て台詞 “ Frankly my dear, I don’t give a damn. ” (訳せば「正直言って、俺の知ったこっちゃないぜ」といった感じだろうか)である。
 なぜこのセリフが1位か、我々日本人には理解し難いが、実は、このセリフ、アメリカ映画史上においては大変意味のあるセリフなのである。それは、映画で初めて four-letter word (ここではdamn)を使ったセリフだからだ。今と違って、昔、映画は上品だったのである。

 では、一番セリフが多くランキングされている映画は何か。それは『カサブランカ』。言わずと知れたイングリッド・バーグマンとハンフリー・ボガードの名作である。6つのセリフがランキングされており、2位の『風と共に去りぬ』や『オズの魔法使い』の3つを大きく引き離し、堂々の1位である。
 この6つの中のトップはお馴染みの「君の瞳に乾杯!」(因みに、全体では第5位)。英語では “ Here’s looking at you , kid. ” である。「君を見つめる喜びに乾杯」といった意味かと思うが、それを「君の瞳に乾杯!」と訳した翻訳者には恐れ入ってしまう。バーグマンの大きく、つぶらな瞳のなせる技かもしれないが、本当にお見事としか言いようがない。まったく脱帽である。

 こうしてセリフを見ると、とてもロマンチックな感じがするが、映画で実際に聞くと、まったくロマンチックではない。ボギーはいつもの調子で、舌足らずで早口にこのセリフを言っている。ボギーといえばハードボイルドの代名詞でもあり、女に甘い顔など見せられないということなのだろうか。
 元々、ボギーは2枚目ではない。昔はギャングとか悪役俳優だったのが、『マルタの鷹』のサム・スペード役で当たり、そして同じ路線である、この『カサブランカ』のリック役でハードボイルドのイメージが定着したのである。

 『カサブランカ』にはもう一つ有名なセリフがある。バーグマンとボギーが再会するシーン、バーグマンが昔馴染みのピアニストに思い出の曲をリクエストするとき言った、“ Play it, Sam. Play ‘As Time Goes By’ .”である(このセリフは28位)。このあと、「覚えておりません(I can’t remember it.)、マダム。」「私がハミングするわ。」で、ハミングを聞き、仕方なくピアニストが弾き語りを始める、「君は覚えているに違いない(You must remember this ~)」と。本当によく出来た映画だ。
 よく出来ていると言えば、先日テレビで『カサブランカ』を見た時、最後に警察署長がヴィシーのミネラル・ウォーターの瓶を、水が入っているのに、ぽいとゴミ箱に捨てるシーンがあった。ナチス・ドイツの傀儡政権であるヴィシー政権を揶揄したジョークである。なかなか洒落っ気のある映画だ。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。