縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
のんびり温泉に浸かり、美味しい魚で一杯。
夢に見た生活を楽しんでいます。

“タン塩”と“おばさん” ~ 森下『静龍苑』と月島『凛』

2013-06-02 01:10:04 | おいしいもの食べ隊
 最近、タン塩のおいしい店を見つけた。森下の『静龍苑』という焼肉屋である。

 「見つけた」と言っても単に僕が知らなかっただけで、東京の焼肉好きの中では有名な店らしい。ここのタン塩、肉は薄いが、味は濃い。本当に深い肉の味わいを楽しめる。良質な肉の旨み、甘みを、塩とネギがそれは上手に引き出している。

 タン塩と言えば月島の『凛』に敵う者はいないと思っていたが、どうしてどうして甲乙付け難い旨さだ。味わいの『静龍苑』に、口当たり・食感の『凛』といった感じであろうか。そもそも両者ではタンの厚さが違い(『凛』のタンの厚さはなんと1cm近くある!)、当然焼く時間(さっとか、じっくりか)も違う。それを“タン塩”と一括りにして比べて良いのかわからないが、とにかく両方とも旨い。焼肉好き、特にタン塩がお好きな方は、是非ご賞味あれ。

 この二つの店、タン塩が一番のウリである以外にも共通点がある。一つは、ともに下町の老舗焼肉屋である点。『静龍苑』は森下で開業し40年。一方の『凛』は、前身の『千花園』から数えれば、同じ月島の町で40年近いであろう。

 もう一つの共通点は、名物“おばさん”の存在。そして両方の店とも接客の評判は芳しくない。
 『静龍苑』の接客は、基本は女主人(2代目?)一人でやっている。いつも満員で忙しく手が回らないこともあってか、応対は結構素っ気ない。オーダーするお客の方が気を使うありさま。そうそう、なぜかタン塩だけは追加注文できないとのルールもある。

 これに対し『凛』の接客は、名物おばさんとバイトらしき女性が一人か二人。このおばさん、店を仕切っているし貫禄があるので女主人だと思っていたが、実はただの古株の使用人とのこと。
 『凛』自体、予約の人数が揃ってからでないと入店できない、店内では帽子を脱ぐ等の決まりがあり、客への注文の多い店である。が、それ以上にこのおばさんがうるさい。それじゃ焼きすぎよとか、もうちょっと焼きなさいとか、とにかく ああしろ・こうしろと口うるさい。肉をおいしく食べて欲しいとの親心なのであろうが、焼肉は自分の好きに食べたいと思っている人には耐えられないであろう。実際、僕は、あの婆あ(失礼)がいるから絶対『凛』には行かないという人を何人か知っている。

 ところで、先日『静龍苑』に閉店間際に行った。お客さんがぼちぼち帰り始め、また店の注文もピークアウトしていたせいか、女主人と少し話すことが出来た。僕が「お店がいつも混んでいて、なかなか入れない。」と言ったところ、彼女は申し訳なさそうな顔をし、「でも、最近は予約を当日電話でキャンセルしてきたり、ひどい時は電話もなしに来ない人がいて困るのよ。」とこぼした。
 30席足らずの狭い店で、その予約のために何人ものお客さんを断ったのに、ということであろう。別に、仕入れがどうとか儲けがどうとか、そんなことではない。ただ、折角来てくれたお客さんに悪いことをしたという思いだ。そもそも彼女に商売っ気があれば、店を10時には閉めないし、もっと店で愛想良く振舞うに違いない。
 僕は、いつも素っ気ない女主人の裏にある、愛情、やさしさを見た気がした。こんな店にはずっと残って行って欲しい。またタン塩を食べに行こう。

(逆に、ここ数年の『凛』のご主人は、串焼きも含め4店オープンする等、商売っ気あり過ぎな気が・・・・。)




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