25時間目  日々を哲学する

著者 本木周一 小説、詩、音楽 映画、ドラマ、経済、日々を哲学する

禍転じて

2019年08月17日 | 日記

 「もしもし、榎本さんですか。曽根区の役員している●●というものです。民ぱくの件です。お客さんが石垣の下にゴミを置いて散乱してますよ」

「えっ、お客さんはいるはずですが」

「それがいないんですよ。すぐに片付けに来てください」

「ご迷惑をかけて申し訳ありません。二度とこういうことがないよう努力しますんで。今すぐ行きますから」

 ぼくはお客さん代表者に電話をしたが出ない。困ったことだ、と思って車に乗ると、お客さん代表から電話がかかった。

「石垣の前にゴミを置いた?」

「はい、全部持ち運ぶのに、一部置いてあります」

「猫かカラスに荒らされたんだと思う。下へ出て区の役員さんに説明してください」

「そうですか。わかりました」

「僕も、そっちに向かっています」

 昨日は「犬が糞をした。片付けもしないで行こうとした。どこに泊まってるんやと聞いたら、あんたとこや、という、だから今日文句言いに来た」という苦情があった。はてペットなどいないはずだが。隠しペットか。

 よしこうなれば役員さん全員に挨拶と現状、こちらでやっている努力、名簿、誓約書なども見てもらおう。

 カラス問題は話せばわかる。隠しペットも点検すればわかる。10時以降の大騒ぎ事前に同意してもらえば抑制もする。

 現場に着くとお客さん代表者たちが掃除をし終わったところだった。カラスにやられるとは思わなかった。わかる。僕の説明不足である。僕もカラスにやられるなんて知らなかった。曽根でカラスを見たこともない。すでに役員さんは事情がわかったらしく帰っていた。

 お客さん代表者は「これでいいですか。すみまでんでした」とたいへん丁寧に謝った。「いやいやぼくが説明しなかったからごめんね」

   そばに小太りの女性が寄ってきて、 「あんた、榎本達子さんの息子さんの榎本順一さん?」「えっどならですか」「村田清六の娘よ」「あんた頑張っとるんやってな」清六さんは母の父の仕事弟子だった。ぼくも清六さんの家に行ったことがある。「●●役員さんの家わかる?」「うん、説明が難し。神社のところまで行って、人に聞いてみて」

 ぼくは●●さんに電話をした。「事情がわかったんで、もう帰りました」と言う。「ご挨拶に伺いたいんですけど」

「こっちはええから、区長さんと会っとけば」と助言をくれた。区長の家を聞き、その方向に進むとまた清六さんの娘さんがいて、詳しく家を教えてくれた。

 蜜柑畑を整地したのだろう。大きな家が建っている。呼び出しフォンを2回押すと、品のよい老人が出てきた。言葉も標準語アクセントである。あいさつをして何度か苦情があったと思うが、想定外のこともあり、だんだんと苦情もなくなってくると思うので、見守ってもらいたい。民ぱく事業は曽根にぴったりの事業で、他の人もやればいい。お手伝いする。こちらは、宿泊者名簿、禁止、注意事項への同意書ととって毎月県に報告している、ということを説明した。東京都庁に勤めていたのだと言う。退職してこに家を建てたのだという。「尾鷲市は浦村を抱えているからねえ、町としたは効率が悪い」と区長は言う。コンパクトに尾鷲にまとまればいいですけどね。私らも運転免許なくなったらたいへんなことです」ぼくは「あと2年経ったらたいへんかもしれませんね。今は火力撤去工場があります。これが終われば電源交付金はどうなるのでしょう」

「曽根は129人の人がいて、平均年齢が70サインを越えています。仕事をしている人はアルバイトも含めて30人です」

 「ぼくは多くの都会の人は曽根はいいところだと思うにちがいないと思いますよ。海では魚が釣れ、川、海水浴に近い。熊野古道の太郎坂次郎坂もあります。みな民ぱくすればいいんですよ。いわばリゾート化すればと思うんです。今、ぼくがやっていることが大きな民ぱく運営のノウハウとなります。決してつぶさないようお願いします」

  禍転じて福となす。役員さん、区長さん、清六さんの娘さんに会えて、これまで挨拶をするきっかけもなく、気になっていたことが解消された。皆、優しかったことに感謝した。

 そんなことがあって、娘たちを駅まで送った。4時頃名古屋着のはずだ。名古屋からは念のため、指定席を買っておいた。ところが紀勢本線の途中で線路に人が入り込んできて急停車をしたそうな。それで繋ぎの新幹線「のぞみ」に間に合わなくなったらしい。名古屋駅でとりあえず来た「のぞみ」に乗り車掌に事情を説明すると、車掌はグリーン車に案内してくれ、席を確保してくれたらしい。これもまあ、意味合いが違うが結果はよかったのだ。ま、禍転じて福となったのだ。