エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

蔵王温泉

2013年07月06日 | ポエム
蔵王温泉の湯は、白濁している。
湯上りは、サラッとした肌触りであって、正に美人の湯である。



女性ならば、10歳は若返る湯である。
美しくもたおやかな、それでいて朧たけた伴侶と行くが良い。



この季節、朝は山々が煙って幻想的である。
必ずしも、モンスターを見学しなくても感動的な朝を迎えられることは間違いない。







「湯を張った露天の面へ白雨かな」







山から山へ、雲が流れゆく様は見飽きる事が無い。
千変万化、森羅万象、生きとし生けるもの、万物みな・・・ものみな透けて見えてくる。



心身ともに洗われている。
もっと言えば、ピュアになっている自分に気づく。



自分自身が透明になって、蔵王の山々を俯瞰するかのごとく浮遊する。
幽体離脱の心持とは、このような感覚であろうか。

蔵王を降りると、サクランボが真っ赤に色づき無数の龍が群れている。
それを捥ぎ取る。
口に放り込む。



至福の時間が流れる。
今朝まで湯に浸かっていた肌から、硫黄の匂いがほのかに立つ。




       荒 野人