エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

空蝉

2013年07月31日 | ポエム
空蝉・・・街の木々は、蝉の抜け殻に溢れている。



夏の景色である。
さりながら、それは蝉の寿命を示唆するのだ。






「うつせみの痛みは明日の命かな」


「殻出たるほんの二日の蝉時雨」







蝉は、鳴き終わり土に返らんとする。



あれほどかまびすしかったのに、死屍の周辺には静謐が訪れている。
悲しくも美しい。
悲哀でもなく、充足でもなく・・・。



蝉は、ここから生まれた。
生まれ、生を謳歌した。



木に攀じ登って、脱皮した蝉は幸せであるのかもしれない。



葉影で脱皮した蝉もまた、幸せであるだろう。
彼は、だいぶ前に殻を破った。
身体が乾燥してきている。

間もなく飛ぶだろう。
そして、蝉時雨を奏でる一因となって夏を謳歌するのだ。

生きる事の意味と、その幸せ。
俳句に詠み切れない、そのもどかしさよ!



           荒 野人