自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆「雪すかし」の時季に思うこと スコップによるマイクロプラスチック汚染

2025年01月31日 | ⇒ドキュメント回廊

  けさも金沢の自宅周辺では5㌢ほど雪が積もっていた。ご近所さんたちが、朝から「雪すかし」を始めたので、「暗黙のご近所ルール」で自身もスコップを手に取って始めた。何㌢以上の積雪があると町内が一斉に除雪するというルールや当番がいるわけではない。児童たちが登校する前の7時半前ごろ、ご近所の誰かが、スコップでジャラ、ジャラと始めるとそれが合図となり、周囲の人たちもスコップを持って家から出てる。「よう降りましたね」「冷え込みますね」とご近所が朝のあいさつを交わす。いつの間にかご近所が一斉に雪かきをしている。

  さらに雪をすかす範囲についても暗黙のご近所ルールがある。すかす範囲はその家の道路に面した間口部分となる。角にある家の場合は横小路があるが、そこは手をつけなくてもよい。家の正面の間口部分の道路を除雪する。しかも、車道の部分はしなくてよい。つまり、登校の児童たちが歩く「歩道」部分でよい。

  すかした雪を家の前の側溝に落とし込み、積み上げていく=写真・上=。冬場の側溝は雪捨て場だ。気温が5、6度に上がると雪解け水が側溝を流れると、積み上げられ固まった雪を融かして近くの用水や川に流れていく。翌朝、また側溝に雪を捨てるということを繰り返す。

  ただ、スコップで雪すかしをするこの時季になるといつも思うことがある。マイクロプラスチックのことだ。スコップのさじ部はかつて鉄製やアルミ製だったが、最近はプラスチックなど樹脂製が多い。雪をすかす路面はコンクリートやアスファルトなので、そこをスコップですかすとなるとプラスチック樹脂が摩耗する=写真・下=。その破片は側溝を通じて川に流れ、そして海に出て漂っているのではないか。日常の雪すかしが、無意識のうちに「マイクロプラスチック汚染」を増長しているのではないだろうか、と。

  マイクロプラスチック汚染は、粉々に砕けたプラスチックが海に漂い、海中の有害物質を濃縮させる。とくに、油に溶けやすいPCB(ポリ塩化ビフェニール)などの有害物質を表面に吸着させる働きを持っているとされる。そのマイクロプラスチックを小魚が体内に取り込み、さらに小魚を食べる魚に有害物質が蓄積される。食物連鎖で最後に人が魚を獲って食べる。

  ご近所で仲良く雪すかしをするが、それが知らず知らずのうちにマイクロプラスチックを陸上で大量生産することになっているとすれば、それこそ不都合な真実ではある。そう考えると、樹脂製のスコップには製造段階でさじ部分の先端に金属を被せることを義務づけるなどの対策が必要なのではないだろうか。

⇒31日(金)午前・金沢の天気     くもり

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★能登で地震、金沢でカミナリは止まず 「弁当忘れてもPCの雷対策忘れるな」

2025年01月30日 | ⇒ドキュメント回廊

  能登で地震が続いている。きのう(29日)午前9時前に震度3の揺れがあった。震源地は半島の北で深さ10㌔、マグニチュード3.6と推定されている。2ヵ月前の11月26日は半島の西方沖を震源とする震度5弱の地震があり、このときは深さ7㌔、マグニチュード6.6だった。このほかにも震度1や2の揺れが日に数度起きることもある。不気味に感じるのは、きのう、そして11月26日の地震、去年(2024年)元日の震度7、マグニチュード7.6の地震は震源地が異なることだ。一部の地震学者は「能登半島地震の余震活動が、震源近くの断層を刺激して地震を発生させている可能性もある」と指摘している。

  素人の当て推量なのだが、元日の震源は半島北端の珠洲市だったが、このところの震源は半島を南下している。断層が断層を刺激して南下しているのか。このまま南下すると限りなく金沢に近づいてくる。金沢には「森本・富樫断層」がある=図=。国の地震調査研究推進本部の「主要活断層」によると、切迫度が最も高い「Sランク」の一つだ。断層は全長26㌔におよび、今後30年以内の地震発生確率が2%から8%とされる。金沢市の公式サイトに掲載されている「平成24年度(2012)被害想定調査結果」によると、この森本・富樫断層で金沢市内中心部に直下地震が起きた場合、マグニチュード 7.2、最大震度7と想定されている。あくまでも憶測だが、南下する揺れに連動するのか。金沢に住む一人としては不気味だ。

  話は地震から雷に移る。このところ雷が鳴り止まない。きのうも未明にかけて落雷が相次いだ。能登半島の中ほどにある志賀町役場の富来支所では落雷のため館内の受電施設や電源ケーブルが破損したため、職員のパソコンや銀行のATMが使用できなくなるという状況が発生。支所では窓口業務などが出来なくなり業務停止とした(30日付・地元メディア各社の報道)。このニュースで「雷サージ」のことが頭をよぎった。雷が直接落ちなくても、近くで落ちた場合に瞬間的に電線を伝って高電圧の津波現象が起きることを指す。電源ケーブルを伝ってパソコンの機器内に侵入した場合、部品やデータを破壊することになる。役場のPCのデータは大丈夫だったのか。(※写真・下は、北陸電力公式サイト「雷情報」より)

  週間予報をチェックすると、石川県には2月4日から6日まで雷マークが出ている。何しろ金沢は「カミナリ銀座」だ。きょうも金沢で雷注意報が出ている。全国の都市で年間の雷日数が30年(1991-2020)平均でもっとも多く、45.1日ある(気象庁公式サイト「雷日数」)。雷マークがあるなしに関わらず、自身は外出するときにはPCの電源をコンセントから抜いて出かける。晴れていても急に雨雲になるのが金沢の天気だ。なので、昔から「弁当忘れても傘忘れるな」という金沢独特の言い伝えがある。現代風に言うと「弁当忘れてもPCの雷対策忘れるな」。

⇒30日(木)午後・金沢の天気    くもり時々ゆき

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☆「煮え切らない」フジのやり直し会見 なぜ10時間もかかったのか

2025年01月28日 | ⇒メディア時評

  経営の根幹が揺らぐフジテレビの首脳陣の記者会見をテレビで視聴した=写真=。午後4時に始まった会見は日付をまたいで午前2時23分に終了。10時間におよぶ異例の会見だった。休憩は開始から6時間が経過しようとした午後10時前に1回取っただけだったので、「トイレは大丈夫なのか」と視聴する側が案じたほどだった。

  やり直し会見だった。今月17日にフジテレビ社長が出席して会見を開いたものの、会見に出席するメディアを定例会見のメンバーに限定し、また、テレビメディアでありながら動画撮影を禁じた。このことがむしろ火に油を注ぐことになり、スポンサー企業などからCM出稿の差し止めなどが相次いだ。こうした批判を受け、フジはきのう27日午後4時から、あらためて会見を開催した。週刊誌やネットメディアの記者も参加し、会場には191社437人が詰めかけた報じられている。動画撮影も可能だった。

  会見でむしろ気になったのはフジ側というよりメディア側だった。質疑応答では、司会者が「プライバシーの観点からぜひご配慮お願いします」と繰り返し述べていた。会見のテレビ中継とネット配信はプライバシー侵害や保護の観点から、メディア各社が必要な編集を行ったうえで最低10分遅れでの放送・配信のルールで行われたようだ。ただ、質疑応答には記者のヤジや怒声が聞こえ、けんか腰の雰囲気が感じられた。

  会見ではフジの会長と社長の2人が同日付で引責辞任すると発表した。社長は「人権侵害が行われた可能性のある事案に対し、社内での必要な報告や連携が適切に行われなかった。自身が人権への認識が不足していた」と謝罪した。

  会見の印象をひと言で言えば、「煮え切らない」という印象だった。タレントの中居正広氏の女性とのトラブルが週刊文春で報道され、その後フジの編成部長が絡んでいたことや、女性アナも被害者として証言していると報じられていた。社長と会長はこの週刊誌報道を否定していたが、なぜ当事者とされた編成部長が会見に出てその報道を否定しなかったのか。編成部長はテレビ局の番組編成を統括する会社幹部でもあり、顔出して堂々と否定すれば会見に10時間もかからなかったのではないか。

⇒28日(火)夜・金沢の天気    あめ

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★各紙の世論調査 政治に「不満」82% トランプ2.0で日米関係「変わらない」50%

2025年01月27日 | ⇒メディア時評

  けさ読売新聞に目を通すと、早稲田大学先端社会科学研究所と読売新聞社による全国世論調査の結果が報じられていた。去年10月の衆院選挙後の有権者の政治意識を調査するもので、郵送方式で調査期間は11月25日から12月31日、全国の有権者3000人に発送し1958人から回答を得ている(回答率65%)。読売の調査結果の一面トップの見出し。「政治に『不満』最多82% 自公政権継続 望まず61%」

  さらに記事を読み込んでみる。質問は「今の国の政治に、満足していますか」。その回答は「満足」1%、「ある程度満足」17%、「やや不満」44%、「不満」38%となり、「やや不満」と「不満」の合計は82%となった。前回2021年10月の衆院選後の調査では「やや不満」と「不満」は合計74%で、2014年以降の調査で最高だったが、今回はさらにそれを上回ったことになる。自民党支持層でも59%が不満としている。その不満の根底にあるのが経済問題だ。先に衆院選で重視した選挙の争点について、順位別では「景気・雇用」「物価」「社会保障制度」「労働・働き方」「消費税」となっていって、長引く物価高への不満が募っている。

  内閣支持率は「支持する」が39%、「支持しない」が48%となっている。石破総理の評価についても調査されていて、「誠実さ」では評価が高いものの、「国際感覚」や「指導力」、「説明力」、「危機管理能力」、「国家像」といった項目では評価が低い。

  きょう付で日経新聞もテレビ東京と共同で行った世論調査(今月24-26日に電話調査、回答946件、回答率39%)の結果を掲載している。石破内閣の支持率は「支持する」が43%、「支持しない」が50%だった。日銀が金融政策決定会合で追加利上げを決めたことに対する評価については「評価する」が54%、「評価しない」が34%だった。また、アメリカのトランプ大統領をめぐり今後の日米関係についての質問では、「変わらない」が50%、「悪くなると思う」が36%、「良くなると思う」が8%だった。同じ日経新聞には共同通信の世論調査(今月25、26日)も掲載されていて、内閣支持率は支持が35.7%、不支持が49.2%だった。

  世論調査は国政選挙がある年には盛んに行われる。ことし7月にも予定される参院選挙。少数与党の行方、政権交代はあるのか、さまざまな論点でにぎやかに報道される。

⇒27日(月)午後・金沢の天気    はれ

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☆ 輪島塗の地球儀を万博で展示へ そもそも誰の発想だったのか 

2025年01月26日 | ⇒トピック往来

  前回ブログをチェックしてくれた知人から「日本列島の様子がよく見えない。その部分をアップした画像があったら見せてほしい」とのメールがあった。そこで再度、地球儀の画像を=写真=。パンフレットとビデオの説明によると、漆黒の地球儀に塗られた蒔絵と沈金によると金の明かりの部分は、人工衛星による撮影をベースにして制作されたもの。たとえば能登半島の北部、いわゆる奥能登では明かりの部分は明かりが少ない。また、朝鮮半島の北側の部分も暗くなっている。ここからも、忠実な描写であることが実感できる。

  この地球儀が大阪・関西万博で展示されることになった経緯を地元メディア各社が報じている。今月19日、万博の会場を訪れた石破総理が視察後の会見でこう述べた。「能登の輪島塗、地球儀もきょうはみることはなかったけどもここに来ないと見られないなというものがある。世界中の方々にそういう実感を味わっていただく」と地球儀を万博会場に展示する方針を明らかにした。伝統工芸である輪島塗を世界に発信することで、復興に向けて被災地を勇気づけていくという思いもあるようだ。また、万博協会も、この作品には対立や分断を超えて他者に思いを巡らすという思いが込められてるとして、万博の理念と合致すると判断した。去年12月に万博からの撤退を明らかにしたイランが出展を予定していたパビリオン内に展示する方向で調整しているようだ。

  それにしてもなぜ石破総理は輪島塗の地球儀を知っていたのか。石破氏は総理就任後の初の地方視察として去年10月5日に地震と豪雨の二重被災の輪島市を訪れている。このときに被害を受けた輪島漆芸美術館に立ち寄って地球儀を見学したのだろうか。そこで、きょう午前に同館に電話で確認した。「石破総理が漆芸美術館を訪れて地球儀を見られたことがありますか」と。するとスフッタは「石破さんはまだ来られたことがないです。岸田さんは首相だった去年9月19日に訪れて地球儀も見学されました」と返事だった。

  以下あくまで憶測だ。地球儀を万博で展示するという発想はもともと岸田氏のアイデアだったのではないだろうか。それを何らかのカタチで受け継いだのが石破氏だったのか。それにしても、万博展示を表明した石破氏のコメントは意味不明だった。「地球儀もきょうはみることはなかったけども」の部分だ。これを「自身もこれまで見たことはないけれども」に差し替えると意味が通る。ぜひ、万博展示の提案者として実物をぜひ見に来てほしいものだ。見ずして語るなかれ、だ。

⇒26日(日)夜・金沢の天気    はれ

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★漆黒の地球に浮かぶ金の明かり 輪島塗「夜の地球」を大阪万博で展示へ

2025年01月25日 | ⇒トピック往来

  「漆黒」という言葉がある。真っ暗な状態を「漆黒の闇」と表現したりする。もともと漆で塗られた盆や椀などのつやのある黒さを表現する。その漆黒をベースに地球に見立てて制作された輪島塗作品がある。作品名は「夜の地球 Earth at Night」。この作品が大阪・関西万博(4月13日-10月13日)で展示されるとニュースで知り、おととい(23日)輪島市へ見学に行ってきた。

  作品は石川県輪島漆芸美術館で常設展示されている。同美術館は世界で唯一の漆芸専門の美術館で、輪島塗の伝統的な名品をはじめ、人間国宝や芸術院会員などの作品、アジアの漆芸作品なども所蔵している。「夜の地球」は正面入り口左側エントランスホールの特別展示室で公開されていた。高さ1.5㍍、重さ200㌔にも及ぶ地球儀。球体そのものは直径1㍍で、漆黒の地球に光るのは蒔絵や沈金で加飾され金粉や金箔で彩られた夜の明かりだ。地球儀そのももは直径1㍍で、周囲には東京、北京、ロンドン、ニューヨークの4都市の夜景パネルもある。輪島塗の漆黒と金の輝きの技で表現された宇宙に浮かぶ夜の地球、この幻想的な姿にロマンを感じたのは自身だけだろうか。(※写真は高さ1.5㍍の輪島塗地球儀。後ろの作品は画面右がニューヨーク、左はロンドンの夜景パネル=同館のポストカードより)

  「夜の地球」のパンフレットとビデオには製造工程が詳しく解説されている。制作は木地を作るところから加飾まで輪島塗技術保存会の職人37人が集まり、5年がかりで仕上げた。保存会会長の小森邦衛氏(髹漆の人間国宝)が陣頭指揮を執った。そもそも地球儀をつくるきっかけは、輪島市役所から「ふるさと納税」の寄付金で、輪島塗のブランド力を高める象徴的な作品を制作してほしいとの依頼だった。保存会で議論し、かつて創られたことがない、制作に困難なもの、国内外に通じる普遍性などをテーマに議論して地球儀をつくることになった。保存会では佐賀県武雄市を訪ね、同市に伝わる18世紀のオランダ製の地球儀を基に設計した。

  ビデオには球体の制作から始まる製造工程が紹介されている。材料は能登産のアテ(能登ヒバ)。薄板を曲げて接着し乾かす作業を繰り返し、大小295本の輪を6つのブロックに組む。それをろくろびきの技術者が丸く削り、中心軸に通して真球をつくる。球体に下地や中塗りを施した後、2回にわたり熱を加える。加熱すれば内側と外側の温度差や収縮が生じ、特殊な構造が壊れるリスクもあった。担当者は木材の乾燥施設で、状態を確かめながら数日かけて施設内の温度を最大70度まで上げ、球体を硬めた。仕上げは蒔絵と沈金。その表現には作り手の個性が出るものの、今回は試作を繰り返し、互いが歩み寄ることで統一感のある作品にたどり着いた。

  2022年春から輪島漆芸美術館に展示。去年元日の能登半島地震で美術館の展示用ガラスケースが割れるなどしたが、地球儀は数㌢動いたものの作品そのものに被害はなかった。ビデオで小森氏は「この地球儀は平和な世界になってほしいという思いを込めて制作した」とメッセージを発している。

⇒25日(土)夜・金沢の天気    あめ

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☆能登震災をデジタルアーカイブに 復興へつなぐ「防災教育に」「未来へ」

2025年01月24日 | ⇒トピック往来

  去年元日の能登半島地震と9月の記録的な大雨による避難者は合わせて145人(地震14人、豪雨131人)となっている(1月21日時点・石川県危機対策課調べ)。去年2月末の避難者は1万1400人余りだったが、その後に仮設住宅への入居も始まり、数はずいぶんと減った。そして公費解体なども進み、徐々にではあるが被災地の風景が変わりつつある。一方で思うのは災害の記憶の風化という現実だ。

  たとえば、新聞・テレビメディアによる被災地に関する報道の扱い。ことし元日には「あれから1年」の特集や特番があったが、それ以降は能登地震に関連する記事の扱いが小さく、そして掲載頻度も少なくなっているようにも思えるのだ。もちろん、地元メディアは連日のようにそれなりの扱いで報じているが。全国ニュースはいわゆる「トランプ2.0」に注がれていて、能登地震に対する日本人の記憶はこのまま薄れていくのではないか。

  そんな中で能登地震を映像や画像で残して将来につなげようという動きも出ている。地元メディア各社の報道(1月22日付)によると、被害やその後の復興の様子について、画像などで記録する「デジタルアーカイブ」のホームページが公開されているという内容だ。さっそくサイトをチェックした。「のと・きろくとまなびと」と名付けられたデジタルアーカイブだ。金沢大学の研究者などでつくる一般社団法人「能登里海教育研究所」(石川県能登町)がホームページで公開している=写真・上=。研究員や地域の人などが撮影した写真があわせて35点あり、撮影した日付のほか場所が地図で示されている。

  見る側のサイドに立った工夫もされていて、たとえば発災当時とその後の様子が比較できるようになっているものもある。能登町小木地区の九十九湾沿いの写真は、地震の翌日に撮影されたものと11ヵ月後に撮影されたものが掲載されていて、比較できるようになっている。直後の画像には陥没した海岸線に車が何台も落ちている様子がリアルに映っていて=写真・下=、自身も見るのが初めてだった。このほか、ドローンで被災地の様子を撮影した写真などもある。今後も随時、写真や動画などを増やしていくようだ。

  このデジタルアーカイブをつくった狙いはタイトルにある「まなび」から分かるように、掲載された画像を学校での防災教育などで活用してもらうことを想定していて、申請などの手続きもなく、ダウンロードして利用できる。教育研究所らしい発想でつくられたものだ。

  こうした動きに触発されたのか、石川県もデジタルアーカイブに動いている。馳知事はきのう(23日)県庁での記者会見で、地震と豪雨の被災状況や復旧の記録を残す写真や映像、文書などの資料を2万点を収集していると説明。デジタルアーカイブとして今月29日にまず500点、年度内(3月末まで)に追加で500点を公開する。馳知事は「震災の経験と記憶を記録し、未来へつなげたい」と語っていた。

  能登地震の被災状況を未来につなげたい、学校教育に活かしてほしい、さまざまな想いを込めたデジタルアーカイブが動き出している。多様な視点でこの災害を人々の記憶にとどめるツールとしてさらに広まってほしい。

⇒24日(金)午後・金沢の天気    はれ

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★スポンサー企業のテレビCM離れ フジテレビだけの問題なのか

2025年01月22日 | ⇒メディア時評

   月曜日(今月20日)夜の番組を視聴していて、じつに面白かった。有名な神社仏閣をテーマに、出演者に「法隆寺の五重塔は何階建か」や「奈良の大仏の右手の意味は」などと問題が出される。中でも、初めて知ったのが石清水八幡宮には発明家エジソンの記念碑があり、遺徳をしのんで誕生日(2月11日)と命日(10月18日)には慰霊祭が営まれているという。エジソンが白熱電球を開発する際に使ったのが、竹の名産地で知られた京都・八幡の「八幡竹」だったことが縁という。番組を楽しませてもらったが、気になったのはゴールデンタイムにも関わらず、CM枠に公共広告「ACジャパン」が目立っていたことだ=写真=。番組はフジテレビの『呼び出し先生タナカ 2時間SP』だった。スポンサー企業によるCM取り下げの動きが加速しているようだ。

  メディア各社の報道によると、同社へのCM差し止めはこれまで70社に上るという。この事態に陥った背景はいくつかあるようだが、転機となったのは今月17日のフジテレビ社長の記者会見だった。タレントの中居正広氏の女性とのトラブルが週刊文春で報道され、その後フジの編成部長が絡んでいたこと(12月26日号)、最新号(1月23日号)ではフジの女性アナも被害者として証言していると報じられ、社長の会見はこの流れを受けてのものだった。

  ところが、記者会見の設定や内容そのものがさらに問題視されることになった。会見はフジが定例で行っている定例記者会見の前倒しとして設定されたものだが、出席の枠を定例会見と同じくNHKと民放テレビ局、全国紙、スポーツ紙に絞った。週刊誌やインターネットメディアなどの参加を認めなかったのだ。さらに、テレビ局でありながらカメラによる動画撮影を許可しなかった。

  会見で社長は「多大なご心配、ご迷惑をおかけし、説明ができていなかったことをおわびします」と謝罪し、外部の弁護士を中心とした調査委員会を立ち上げると述べた。ところが、中居氏と女性のトラブルをフジ側が2023年6月に把握していながら、番組を続けていたことなどに質問が集中すると、「回答を控える」を繰り返した。会見で視聴者や国民におわびと言っておきながら、誠実さが見えない、さらに企業統治、ガバナンスの問題はいったいどうなっているのかとむしろ不満が噴出した。

  きょう付の新聞メディア各社の報道によると、1975年から続くフジの長寿番組『くいしん坊!万才』は今月26日分の放送をもって休止することが分かった。1社提供のキッコーマンが放送を当面見合わせるよう要請したようだ。スポンサー企業は番組の現場レベルでの問題ではなく、フジテレビ全体の問題だと捉えるようになったのだろう。

  これは一時的な問題なのだろうか、さらに、スポンサーのテレビCM離れはフジテレビだけにとどまるのだろうか。広告最大手の電通のまとめによると、2023年の総広告費は通年で7兆3167億円(前年比103.0%)となり、1947年の調査開始以降、前年に続き過去最高を更新した。中でもインターネット広告費は3兆3330億円(前年比107.8%)と過去最高を更新した。一方、テレビメディア広告費(地上波テレビと衛星メディア関連)は1兆7347億円(前年比96.3%)と落ち込んだ。前年2022年の北京冬季オリンピック・パラリンピックやFIFAワールドカップ2などの反動減と言えなくもないが、ネットに広告シェアを奪われているのは事実。スポンサー企業のテレビ離れがこのまま加速するのかもしれない。テレビ業界全体の問題としてスポンサーのCM離れとどう向き合うのか。

⇒22日(水)午後・金沢の天気    くもり時々あめ

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☆気候変動対策「パリ協定」さっそく離脱 「トランプ様が戻ってきた」

2025年01月21日 | ⇒トピック往来

  トランプ氏がアメリカ大統領に就任し、ホワイトハウスに入ったとのニュースが流れていたので、ホワイトハウス公式サイトをチェックする。すると、トップページは「AMERICA  IS  BACK」のタイトルで左手で指さすトランプ氏の得意のポーズが映っていた=写真=。この公式サイトを含めホワイトハウスの模様替えが大変だったようだ。メディア各社の報道によると、前任のバイデン氏の退去からトランプ氏の入居までのタイムラグは6時間で、その間にすべての部屋を掃除し、新たな主(あるじ)が好む執務室にしつらえ、好みのカーテンや家具をそろえ、お気に入りのシャンプーや歯ブラシまで用意したようだ。まさに、「AMERICA  IS  BACK」は「トランプ様が戻ってきた」と読める。

  そのホワイトハウスでのトランプ大統領の初仕事の一つが、気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」から再び離脱すると発表し、大統領令に即日署名したことだった。パリ協定は2015年の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で採択され、「産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑える」という目標を掲げている。トランプ大統領は就任演説で「中国が平気で汚染を続けているのに、アメリカが自国の産業を妨害することはしない」と説明し、「不公平で一方的なパリ協定から即時離脱する」と宣言したのだった。第1次トランプ政権の2020年にパリ協定から離脱したが、2021年に就任したバイデン前大統領が初日に復帰。トランプ氏は大統領選でエネルギー開発の推進のため再離脱すると公約に掲げ勝利した経緯がある。

  EUの気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」は、2024年の世界の平均気温は初めてパリ協定の基準を超えて1.6度高くなったと発表した。徐々に進む気候変動はアメリカにも大きな被害をもたらしているとの指摘もある。今月中旬に発生したカリフォルニア州ロサンゼルス周辺の大規模な山火事について、NOAA(アメリカ海洋大気局)は「気温の上昇、干ばつの長期化、乾燥した大気などの気候変動が、アメリカ西部の山火事の危険性と範囲を増す重要な要因となっている」と述べている(1月14日付・BBCニュースWeb版日本語)。  

  この山火事について、トランプ氏はこれまでSNSなどでカリフォルニア州の知事(民主党)の不手際で被害が拡大していると、「知事の責任」を印象付けるかのように強調していた(同・読売新聞Web版)。本来なら大統領として山火事について気候変動の側面からも取り組むべきで、パリ協定と真摯に向き合うべきだと思うのだが。次に火の粉をかぶるのは自身ではないだろうか。

⇒21日(火)午前・金沢の天気     はれ

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★トランプ政権に傾くSNS経営者 ファクトチェックは死語となるのか

2025年01月20日 | ⇒メディア時評

  1月20日はアメリカのトランプ氏が大統領に復帰する日だ。メディア各社の報道によると、トランプ氏は就任後、ただちに100本に及ぶ大統領令に署名し、不法移民の強制送還や関税の引き上げなど選挙公約の実現に向けて動き出すようだ。その一方でトランプ氏の大統領復帰に合わせるかのような動きも報じられている。IT大手メタ社のザッカーバーグCEOは今月8日、アメリカ国内のフェイスブックやインスタグラムなどで行ってきた投稿内容のファクトチェック(事実確認)を廃止すると発表した。

  メタ社はこれまで119ヵ国のファクトチェック団体と提携し、60を超す言語でファクトチェックを実施してきたことで知られる。廃止対象となるアメリカでは、これまでAFPやUSAトゥデイなどの通信社を含む10のファクトチェック団体と提携してきた。それを解消するという。この背景で浮かぶのがトランプ氏との関係の修復を図ろうとするザッカーバーグ氏の思惑のようだ。(※写真は、ファクトチェックをめぐるザッカーバーグ氏の大きな変化は、自己防衛なのか、それとも影響力を期してのことなのか、と報じるCNNニュースWeb版)

  そもそもプラットフォーマーがフェクトチェックに動いたはトランプ氏の投稿がきっかけだった。2020年5月、ツイッター社は当時のトランプ大統領がカリフォルニア州知事が進める大統領選挙(同年11月)の郵便投票が不正につながると主張した投稿について、誤った情報や事実の裏付けのない主張とファクトチェックで判断し、「Get the facts about mail-in ballots」とタグ付けして警告を発した。さらに、同じ5月にミネソタ州ミネアポリスで、アフリカ系アメリカ人の男性が警察官に首を押さえつけられて死亡する事件が起き、抗議活動が広がった。このとき、トランプ大統領がツイートした内容のうち、「略奪が始まれば(軍による)射撃も始まる」との部分が個人または集団に向けた暴力をほのめかす脅迫に当たると同社は判断し、大統領のツイッターを非表示とした。

  アメリカでは、SNS各社は通信品位法(CDA:the Communications Decency Act )230条に基づき、ユーザーの違法な投稿をそのまま掲載したとしても責任は問われない。だからといって、ヘイトスピーチなどを野放しにしておくわけにはいかないというのがSNS各社のスタンスだった。そして、トランプ氏とSNS各社の緊張関係がピークに達したのが、2021年1月だった。大統領選に敗れたトランプ氏の支持者らによるアメリカ連邦議事堂への襲撃事件。トランプ氏は暴徒を「愛国者だ」などとメッセージを投稿したことから、ツイッターやフェイスブック、グーグルなど各社は公共の安全が懸念されるとしてトランプ氏のアカウントを相次ぎ停止した。

  風向きが変わったのは、実業家イローン・マスク氏が2022年10月にツイッター社を買収してからだ。マスク氏は「言論の自由を重視する」として同年11月にトランプ氏のアカウントを復活させている。さらに、当時8000人とも言われたツイッター社のスタッフの8割をリストラした。この中には偽情報や誤情報対策を担っていたチームも含まれ、ファクトチェック部門は解体に追い込まれた。2023年にはツイッターは「X」に改名された。Xは誤情報への対策として「コミュニティノート」を導入している。登録した一部の利用者は、誤っている投稿に対して情報を追加できる仕組みだ。

  こうした流れの中で、メタ社のザッカーバーグ氏もフェイスブックやインスタグラムなどで行ってきた投稿内容のファクトチェックを廃止すると発表。まずはアメリカで止め、偽情報に対してはXと同様のコミュニティノートで対応する考えを示した。

  ファクトチェックは言論を弾圧しているわけでもなく、むしろ情報の透明性を重視するプラットフォーマーの行動規範ではなかっただろうか。今後、マスク氏が政権の中枢に入り、SNSがさらに変容していくのか。そして、ファクトチェックは死語となってしまうのか。

⇒20日(月)午後・金沢の天気   くもり

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