自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆「ネットどぶ板選挙」を読む

2006年06月05日 | ⇒トピック往来
 小沢一郎という人物が民主党の代表になって、どちらが民主でどちらが自民か分からなくなったという声をよく聞く。何しろ4月の代表就任早々でその小沢氏は政策を語るのではなく、開口一番「選挙に勝って、政権を取る。そのためにどぶ板選挙を徹底してやる」(4月10日・NHK番組「クローズアップ現代」)、それだけだった。

 確かに実に分かりやすい。小沢氏の戦略には、民主党の独自色といった概念より、自民党の候補者よりどぶ板選挙を徹底して選挙に勝つこと、それが政権構想そのものだと訴えたに等しい。しかし、その選挙手法はかつての自民党そのものだ。去年9月の郵政民営化を問う総選挙のように、政策の違いがはっきり理解できなければ有権者は戸惑い、しらける。

 逆に「民主党的」なのが自民党だ。きのう6月4日、自民党青年局を中心にした全国一斉街頭行動を行った。「次世代へ繋ぐ安心と安全」をテーマに各都道府県レベルで街頭に立ち、北朝鮮による拉致問題の早期解決や街の安全、食の安心などを政策推進を求めるという内容だ。注目を集めたのが、武部勤幹事長がラジオCMで統一行動への市民参加を呼びかけ、「詳しくは自民党ホームページを見て下さい」とコメントしていたことだ。その自民のホームページを見ると各都道府県でキャンペーンが行われる場所や内容が詳しく掲載されていた。ラジオからインターネットへのメディアを連動なのである。放送媒体やインターネットを使って呼びかけ、全国一斉くまなく街頭に立つという意味ではこれもある意味でのどぶ板と言えるかもしれない。

 そもそも統一行動の呼びかけにラジオを使ういう発想は従来の自民党にはなかったのではないか。おそらく、党広報本部副本部長の世耕弘成氏(参院議員)ら若手が仕掛けたに違いないと思った。というのも、世耕氏らは来年夏の参院選挙で解禁される予定の選挙のインターネット利用を念頭に置いて、すでに党内でワーキンググループを結成し、選挙対策をすでに始めている。つまり、来年の参院選挙は「ネット選挙」が注目され、いかにインターネットをメディアとして駆使するか、放送メディアとインターネットを連動させるか、という選挙戦略に練っているのである。今回の統一行動のラジオCMもそのシュミレーションの一つと見てよい。

 従来の「労組まわり」や「地盤」を歩くどぶ板戦略を踏襲する小沢・民主と、放送メディアとインターネットで「どぶ板」戦略を打ち出す自民が鋭く対立するのが来年の選挙である。どちらのどぶ板が勝つのか。こんな視点で見ると、随分と選挙も面白く見えてくるのではないだろうか。

⇒5日(月)午前・金沢の天気   はれ
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