自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★痛車のお遍路さん

2013年10月13日 | ⇒トレンド探査
  「痛車(いたしゃ)」が勢ぞろい。車体に漫画やアニメ、ゲームのキャラクターなどのステッカーを貼り付けたり、塗装した乗用車のことだ。あるいはそのような改造を車のことを指すそうだ。「萌車(もえしゃ)」とも呼ばれるようだ(「ウイキペディア」より)。面白いのは、同様の原付やバイクを「痛単車(いたんしゃ)」、自転車の場合は「痛チャリ(いたチャリ)」、アニメの装飾を施したラッピング電車を「痛電車(いたでんしゃ)」とこの世界では呼ぶようだ。金沢市郊外の湯涌温泉はその痛車のメッカになっているかのようだ。

  湯涌温泉をモデルとし、2011年4月から9月に放送されたテレビアニメ「花咲くいろは」(全26話)が放送された。東京育ちの女子高生「松前緒花」が石川県の「湯乃鷺(ゆのさぎ)温泉」の旅館「喜翆荘」を経営する祖母のもとに身を寄せ、旅館の住み込みアルバイトとして働きながら学校に通う。個性的な従業員との確執や、人間模様の中で成長しいく。湯乃鷺温泉の舞台となったのが湯涌温泉だった。これ以来、「聖地」なのだ。

  そこで、同温泉の観光協会ではアニメの祭りを再現した「湯涌ぼんぼり祭り」を2011年から毎年行っている。ことしは12日に祭りが行われた。その人出は主催者発表で初年度5千人、2年目7千人、ことしは1万人と年々熱くなっている。ちなみに、13日付の新聞報道によれば同温泉の9つの旅館はどこも満室だったようだ。おそるべし「花いろ」経済効果ではある。

  祭りは単純だ。夕方、会場には500個のぼんぼりが取り付けられ、神社の沿道を照らす。午後8時すぎに「神迎の儀」が始まり、ファンたちが願いを書かれた木製「のぞみ札」を入れたかごを、白装束の地元住民2人が背負って運ぶ、「ぼんぼり巡行」が行われた。午後9時すぎ、のぞみ札は湖のほとりで焚き上げられた。祭りはこの「神事」がメインだが、盛り上げる仕掛けがいくつもある。  

  サークルKサンクスの北陸3県357店では、10月8日~10月21日の期間限定で、アニメ「花咲くいろは」とのタイアップしたオリジナル商品(2種類)を販売している。商品はテレビシリーズのストーリーにちなんだ食材を使用した「喜翆荘のぼんぼり御膳」(500円)と、「湯涌で採れたはちみつのホットケーキ(はちみつ&マーガリン)」(137円)など。コンビニの各店舗では、「ぼんぼり祭り」のポスター=写真=があちこちに貼られ、宣伝効果は抜群なのだ。

  これだけではない。日本郵便北陸支社は、ぼんぼり祭りの「フレーム切手セット」を発売している。ぼんぼり祭りを楽しむ主要キャラクターのイラスト切手(50円)10枚に、キャラク ターが描かれた型抜きはがき3枚が付く。1セット1500円。3千セットを販売するのだという。

  金沢に長く住んでいると、涌温泉でイメージするのは、あの独特の美人画で知られる竹久夢二だ。愛人・彦乃と逗留した温泉場。大正モダン風に描かれる、彦乃のイメージ画が印象に強い。「昔夢二、今花いろ」。湯涌温泉には独特の癒しの雰囲気があるのだろう。痛車のナンバーブレートはほとんどが他県ナンバー。おそらく連休を利用して、あすは次なる「聖地」へ赴くのだろう。現代の「聖地巡礼」である。そして、痛車の若者たちはお遍路なのか。

⇒13日(日)午後・金沢の天気    はれ
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