自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆『いだてん』ネタばらし

2019年01月06日 | ⇒メディア時評

   きょう6日付の朝日新聞「天声人語」を読んで、「これはNHK大河ドラマのネタばらしではないか」と笑った。今夜から始まるNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』をテーマにした記事だ。ドラマの主人公の一人は、日本が初めてオリンピックに参加した1912年(明治45年)の第5回ストックホルム大会でマラソンに参加した金栗四三(かなくり・しそう)だ。金栗の業績や個人ヒストリーについては、出身地の熊本県和水町(なごみまち)のホームページに詳しく掲載されている。
   
  当時ストックホルムまでの旅程は船とシベリア鉄道を経由し、17日間にも及んだ。マラソン当日、長距離移動や異国での慣れない環境に加え、酷暑のために26-27㌔付近で意識不明となり落伍した。出場選手68人中、完走は半分の34人という過酷なレースだったようだ。1967年、ストックホルム大会の開催55周年を記念する式典が開催され、スウェーデンのオリンピック委員会が当時の記録を調べたところ、金栗は「(棄権の意思が運営側に届いていなかったため)競技中に失踪し行方不明」となっていることに気が付いた。つまり、「消えた日本人選手」との扱いになっていた。そこで、スウェーデンのオリンピック委員会は金栗を探し出し、記念式典に招待した。

   ここから感動の物語が始まる。記念式典の当日、76歳の金栗は観衆が見守る中、競技場を走り、ゴールでテープを切った。「日本の金栗、ただいまゴールイン。タイム54年と8か月6日5時間32分20秒3、これをもって第5回ストックホルムオリンピック大会の全日程を終了します」とアナウンスが会場に響いた。これに金栗は「長い道のりでした。この間に結婚し、6人の子どもと10人の孫に恵まれました」と答え、会場は大きな拍手と歓声で包まれたそうだ。このストーリーを仕立てたスウェーデンのオリンピック委員会の企画力とセンスには脱帽する。

   天声人語は「ドラマではきっとそんな一代の名場面も描かれることだろう。」と記している。冒頭で「笑った」と述べたが、大河ドラマのプロデューサーもこの感動のシーンで番組のラストを飾りたいと思っているに違いない。ネタばらしとはこの意味である。

   ところで、正月早々の3日に熊本地方を震源とする地震があり、和水町では震度6弱の揺れがあった。町役場のホームページによると、大河ドラマが始まるきょう6日に、金栗の生家に近い公民館で地域の人たちが集まってテレビを視聴するパブリックビューイングが計画されていたが、地震の影響に配慮して中止されるようだ。「日本マラソンの父」と称され、箱根駅伝の創設者としても知られる金栗を郷土の誇りに震災から復興することを願っている。(※写真は熊本県和水町のホームページより)

⇒6日(日)夕・金沢の天気     くもり時々あめ

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