自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆アップル・ショック

2019年01月04日 | ⇒メディア時評

    まさに新年早々に「ネガティブサプライズ」だ。きょう朝のニュースによると、アメリカのアップル社は日本時間で3日、2018年10月-12月期の売上高の予想を下方修正し、840億㌦に留まる見込みだと発表した。これを受け、ニューヨーク株式市場でアップル株が一時10%急落、ダウ下げ幅も一時600㌦を超えた。しかし、1社の業績がここまで「資本主義の総本山」ウオールストリートを揺るがすものなのだろうか。

    問題はここにあった。アップルのティム・クックCEOが売上高を下方修正した最大の原因は中国の景気減速だ、と述べたのだ。「"While we anticipated some challenges in key emerging markets, we did not foresee the magnitude of the economic deceleration, particularly in Greater China," he said. 」(イギリスBBCニュースより)。直訳すれば、「主要新興国市場ではある程度の課題が予想されたものの、特に大中華圏では景気減速の規模がこれほどまでとは予測することはできなかった、とクックCEOは述べた」。香港や台湾を含む大中華圏でのアップル社の売上は全体の20%近くを占めるとも述べているので、中国における景気減速の影響がアップル社だけでなく他産業にも広がると投資家の不安感を刺激したのだろう。このニュースが世界を駆け巡った。

   一方で、売上の下方修正の原因を中国の景気減速のせいにするアップル社のコメントに疑問を投げかけているメディアもある。アメリカのウオールストリートジャーナルWeb版(日本語)は「高級スマートフォンを中国に紹介したアップルは、同国での販売低迷に苦しんでいる。現地メーカーがはるかに低い価格で似たようなデザインと性能の製品を提供し、消費者の心をつかんでいるためだ。アップルのティム・クックCEOは業績見通しを下方修正した理由に、中国経済の減速を挙げた。だが、アップルはそれより根深い問題を抱えている。同社は現地のスマホメーカーの競争力を見くびっていた可能性がある・・・」と論評している。

   確かに、日本国内ではiPhoneの新機種などは価格が高く、消費者に支持されているのか疑問に思うこともある。ショップで見た価格だが、「iPhone XS」(64GB)は12万円、「iPhone XS Max」(同)は14万円だ。画像処理などを行う人工知能や機械学習などの技術を組み込んだハイスペックの製品なのだが、他のメーカーと比べ価格が一ケタ違う。スマホは日常生活に欠かせないものだけに、「価格はそこそこでよいのでは」というのが日本人の感覚かもしれない。

   中国でiPhoneが不調なのはむしろ、アメリカと中国の「貿易戦争」で、アメリカのブランドものに対して中国の消費者心理が冷え込んでいるのではないかと読むほうが自然だ。ましてや、ウオールストリートジャーナルが指摘しているように、現地メーカーが低い価格で似たようなデザインと性能の製品を提供し、消費者の心をつかんでいることは想像に難くない。

   ある意味で、トランプ大統領が仕掛けた「貿易戦争」が、アメリカを代表するIT企業の業績にブーメランのように直撃したのかもしれない。まさに「アップル・ショック」だ。(※写真はイギリスBBCのHPより)

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