この半年間でテレビキー局のテレビ朝日で不祥事が相次いでいる。ガバナンス(企業統治)の問題として、このブログで取り上げたのは去年8月11日付だった。コロナ禍の緊急事態宣言下で、東京オリンピック番組を担当したスポーツ局の社員や外部スタッフ10人が8日の閉会式後から翌日未明まで打ち上げ宴会を行い、そのうちの社員1人が酔って店外に転落し救急搬送された問題。同局番組『羽鳥慎一モーニングショー』(8月11日付)で、コメンテーターの玉川徹氏が「テレビ朝日の社員として謝罪を申し上げます」と頭を下げ、調査委員会をつくって不祥事の原因を徹底的に究明すべきだと訴えた。これにはむしろ違和感を覚えた。
同局ではコロナ禍で「宴席を禁じる」など社内ルールを設けており、それに反する行為だった。なので、この問題の責任の所在は番組にあるのではなく、会社のリスク管理というガバナンスの問題だ。むしろ、「テレビ朝日として」の謝罪の言葉を会社の最高責任者が真っ先に発すべきだった。ところが、この問題についてのトップの釈明会見はなかった。
その後も、テレビ朝日スポーツ局の社員が、自社で製作し、東京オリンピック関係者に配布する「五輪ドラえもんピンバッジ」(非売品)を社内から持ち出して、フリマアプリ「メルカリ」で1個2万円から3万円で販売し多額の利益を上げていた(「週刊文春」2021年9月30日号)。ことしに入って、中小企業のデジタル化を支援する経産省の「IT導入補助金」をめぐり900万円を不正受給したとして、同局のセールスプロモーション局ソリューション推進部長が大阪府警に詐欺容疑で逮捕された(2月9日付・共同通信ニュースWeb版)。
そしてきのう企業ガバナンスの本丸に激しい亀裂が入った。テレビ朝日は10日、亀山慶二・代表取締役社長が辞任を申し出て、取締役会において受理されたと発表した(2月10日付・テレビ朝日公式ホームページ「ニュースリリース」)。辞任に至る経緯が記されている。去年8月以降、スポーツ局の社員・スタッフによる不祥事が連続して発覚したことから、12 月に「役職員の業務監査・検証委員会」を設置した。スポーツ局のガバナンスを中心に検証した過程で、スポーツ局統括でもある亀山氏の業務執行上の不適切な行為が明らかになった。
2019年6月の社長就任から亀山氏は毎週のようにスポーツ局内の主要な役職者を招集して報告会を開催していたが、理由もなくスポーツ局長だけを外していた。局内での意思疎通や情報共有、円滑な指揮命令の伝達といったガバナンスがこの時点で崩れていた。さらに、スポーツイベントへの出席・営業活動のため、会社の費用負担で国内各地に出張していたが、業務との関連が認められない私的な会食やゴルフなどの費用を業務上を装って会社経費として精算していた。
上記の行為についてリリース文では、「亀山氏の行為は当社社長として許されるものではないと判断しております」と断言している。リリース文では今後の刑事告訴などについて触れてはいない。企業のガバナンスを根底から揺さぶっていたのは、まさに社長、その人だった。
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