自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「核汚染水」と呼び禁輸する中国に「TPP」ブーメラン

2023年09月03日 | ⇒ニュース走査

    日本など参加するTPP(環太平洋パートナーシップ協定)に先月、イギリスが協定に加入することが決まった。加盟国は12ヵ国となり、TPP経済圏は世界全体のGDP合計額の15%を占めることになる(7月8日付・Bloomberg-Web版日本語)。

   TPPは当初アメリカが主導した加盟12ヵ国だったが、2017年に当時のトランプ大統領が離脱を決め、日本など11ヵ国でTPPを再出発した。日本はアメリカに復帰を求めているが、アメリカは対中包囲網の構築に向けて、ローバルサウスの代表格であるインドとインドネシアを加えた新経済圏構想「IPEF(インド太平洋経済枠組み)」を2022年5月に発足させている。加盟国は日本を含めた14ヵ国で、半導体のサプライチェーンの強化などを進めている。

   こうしたアメリカ主導の対中包囲網に対し、中国はTPP加盟申請を2021年9月に行っている。貿易制限による自国経済への影響を憂慮してのことだろう。現在、TPPに加盟申請しているのはウクライナ、中国、台湾、ウルグアイ、エクアドル、コスタリカの6つの国・地域だ。

   ここにきて、中国のTPP加盟について、日本では強烈な批判が起きている。福島第一原発の処理水の放出を理由に、中国が日本からの水産物を一方的に禁輸とした件だ。自民党の世耕参院幹事長は先月29日の記者会見で、「科学的な根拠なく、政治的・恣意的に、特定の国の特定の水産物を全面禁輸するような国には、TPPに加入する資格は全くない」と中国を批判。日本国内で相次ぐ中国発信の迷惑電話については「全く関係のない日本の店舗に電話をかけ、威力業務妨害に相当するようなことを行っている」と問題視し、日本政府に毅然とした対応を求めた(8月29日付・共同通信Web版)。

   憶測だが、中国がTPP加盟を望んでいる背景には、アメリカが離脱している間に加盟をすることで、アメリカ排除の主導権を握ろうとしているのかもしれない。ところが、処理水の放出に対する中国の動きに、日本は態度を硬化させた。中国がTPPに加盟するには、全加盟国の支持が必要だ。中国にとっては「ブーメラン」として戻って来る。

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