自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆高速鉄道とマンション 中国の「縦・横インフラ」巨額負債

2023年09月17日 | ⇒ニュース走査

   世界最高速と名高かった中国の上海リニアに乗ったのは2008年1月だった=写真・上=。最高時速430㌔の車窓からの風景がコマ送りの状態で見えたのが印象的だった。上海浦東国際空港から終着駅・龍陽路まで距離にして30㌔、時間にして7分20秒だった。その上海リニアが2020年2月から最高時速300㌔に減速。新型コロナウイルスの感染拡大で浦東国際空港の利用者数が減少が影響しているようだ(Wikipedia「上海トランスラピッド」)。

   リニアだけでなく、中国では全長4万2000㌔にもおよぶ高速鉄道網が整備されている。幹線ルートでは最高時速350㌔で走行し、そのほかの路線では時速300㌔で運転している。この「中国版新幹線」は日本の新幹線の13倍にもおよぶとされているが、人口が少なく需要が見込めない地方都市にも延伸を重ねていて、赤字路線が多いとされる。

   日経新聞Web版(5月2日付)によると、高速鉄道を運営する国有企業「中国国家鉄路集団」は2022年12月期の最終損益が695億元(約1兆3800億円)の赤字となり、21年12月期(498億元の赤字)から悪化した。売上高は0.4%減の1兆1272億元だった。新型コロナウイルスの抑え込みを狙った「ゼロコロナ」政策の影響で旅行・出張客が減った。さらに、同社が公表している財務資料によると、22年末の負債総額は6兆1068億元(約121兆円)で前年末比で3%増えている。中国のGDPの5%に相当する大きな額だ。

   無軌道な拡大で不採算路線が増え、足元の負債が膨らんでいるにもかかわらず、「景気底上げを目指す政府の意向をくみ、2035年に路線を現在より7割増やす方針」(22年7月5日付・同)ようだ。このニュースを読んで中国の経済リスクの感じ取った。横に伸びる高速鉄道、縦に伸びる高層マンション。国家的な金融リスクが誘発されるのではないだろうか。(※写真・下は、浙江省で撮影したマンション群=2012年8月)

⇒17日(日)午後・金沢の天気   はれ時々くもり

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★石川県民にとって複雑な気持ち、そして残念な事件

2023年09月16日 | ⇒ニュース走査

   この事件をコラムで書くべきか、書くべきでないか迷った。石川県民にとって複雑な思いがする。それほど残念なニュースだ。

   去年6月29日午後7時45分ごろ、大分県別府市の交差点で、信号待ちをしていた2台のバイクに軽乗用車が追突。バイクに乗っていた2人がはね飛ばされ、当時19歳の男子大学生が死亡し、別の男子学生が軽傷を負った。軽乗用車を運転していた当時26歳の男性会社員は応急処置や警察への届け出をせずに車を放置して現場から逃走した。警察庁はきのう15日、全国の警察を挙げて捜査をする「重要指名手配」に指定し、容疑者を追っている。ひき逃げの犯人が重要指名手配に指定されるのは全国で初めてのケースとなる(15日付・NHKニュースWeb版)

   重要指名手配に指定された理由として、これまでの警察の捜査で、容疑者は▽事件前、大学生を呼び止めて言いがかりをつける様子が目撃されている、▽時速100㌔近くのスピードでブレーキをかけずに、はねたとみられる(同)。故意に起こした悪質な事件として指名手配されている。手配されているのは、八田與一容疑者27歳。

   冒頭で「残念なニュース」と述べたのも、このブログで「八田與一」の名前が何度も登場する。台湾の日本統治時代、台南市に当時東洋一のダムと称された「烏山頭ダム」が建設された。不毛の大地とされた原野を穀倉地帯に変えたとして、台湾の人たちから日本の功績として現在も高く評価されている。ダム建設のリーダーが、金沢生まれの土木技師、八田與一(1886-1942)だった。石川県では誉れの高い人物であり、「金沢ふるさと偉人館」にその業績が紹介されている。

   八田容疑者に関する記事をチェックすると「石川県生まれ」とある。以下は憶測だ。おそらく「與一」と名付けた両親、あるいは祖父母は故郷の偉人にちなんで、立派に育ってほしいとの想いを込めたのだろう。石川県民の一人として、容疑者には警察に自首し、罪を償い、更生してほしいと願う。

⇒16日(土)午前・金沢の天気    はれ

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☆「変化を力にする内閣」も支持率は上がらず 

2023年09月15日 | ⇒ニュース走査

   第2次岸田再改造内閣の発足を受けて、新聞メディア各社が緊急世論調査を行い、その結果を報じている。結果を比較すると、内閣支持率が「横ばい」と「上昇」の2つの結果に分かれている。

   読売新聞が今月13日と14日に実施した調査では内閣支持率が35%で前回調査(8月25-27日)と同じだった。不支持も50%で前回と同じだった。日経新聞の調査(13、14日)も支持率が42%で前回(8月25-27日)と同じだった。不支持は51%で前回より1ポイント上昇した。一方、共同通信の調査(13、14日)では支持率が39.8%で前回(8月19、20日)より6.2ポイント上昇した。不支持率は39.7%で前回より10.3ポイントも減少した。

   G7広島サミットの議長国を無難にこなした5月の内閣支持率は上昇したものの、その後、総理長男の秘書官辞任やマイナンバーカードをめぐる一連のトラブルで内閣支持率が続落していた。本来ならば、内閣改造と自民党役員人事の入れ替えがあれば、支持率が上がるのが通例なのだが、今回はメディアによって数字のバラつきがあるのはなぜか。

   調査手法の違いかもしれない。調査方法は3社とも、コンピューターで無作為に数字を組み合わせて番号をつくり、固定電話と携帯電話の番号にかけて調査を行う、いわゆる「RDD(Random Digit Dialing)」方式で行っている。

          違うのは質問の仕方だ。読売、日経の両社は内閣支持率の質問で「支持」か「不支持か」を尋ねるが、「言えない・分からない」と答えた回答者に再度、「支持しますか、支持しませんか、お気持ちに近いのはどちらですか」と1回だけ重ね聞きするルールを採用している。なので、重ね聞きをしない場合と比べ、「支持」「不支持」の数字がそれぞれ上積みされる傾向にある。それが、前回の調査と比べて数字が動かなかったということは、今回の改造内閣発足では「支持」を増やすまでには至らなかった、ということになる。共同通信は重ね聞きを採用していないが、前回低くかった支持率がやや持ち直したのかもしれない。

   自民党支持層が多いとされる読売や日経の調査で支持率が上がらなかったことに、むしろ自民党関係者は焦りを募らせているかもしれない。

⇒15日(金)夜・金沢の天気    くもり時々はれ

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★「変化を力にする内閣」が問われる山積する課題

2023年09月14日 | ⇒メディア時評

   2021年10月に岸田内閣が発足したときは「新しい資本主義」がキャッチフレーズだった。次に2022年8月の第2次岸田改造内閣を「政策断行内閣」と名付けた。そして、きのう第2次再改造内閣が発足したときは「変化を力にする内閣」だ。

   最初に掲げた「新しい資本主義」は成長戦略の旗印で、「科学技術によるイノベーション」「デジタル田園都市国家構想による地方活性化」「カーボンニュートラルの実現」「経済安全保障の確立」の目標だった。中でも、「デジタル田園都市構想による地方活性化」は、「地方からデジタルの実装を進め、新たな変革の波を起こし、地方と都市の差を縮めていくことで、世界とつながる『デジタル田園都市国家構想』の実現」(内閣官房公式サイト)を目指した政策で、じつに斬新なイメージで期待感があった。

   ところが、国際情勢が急変する。新型コロナウイルスの感染再拡大や、2022年2月からのロシアによるウクライナ侵攻が始まり、これらに起因したインフレなど世界経済に動揺が走る。日本も円安の急速な進行などに迫られている。こうなると、第2次岸田改造内閣では喫緊の重要な課題への対応が迫られる。そこで、有事に対応する「政策断行内閣」を掲げた。

   そして、きょう本格始動した第2次再改造内閣で岸田総理は、「経済、社会、外交・安全保障の三つの柱で政策を進めていきたい」と官邸で記者団に強調。物価高対応や構造的な賃上げ実現、人口減少による少子化対策に向け、経済対策策定を月内に閣僚に指示する方針を示した(14日付・共同通信Web版)。

   きょうの朝刊各紙=写真=の一面のトップ記事は「旧統一教会 解散請求 来月にも 政府方針 首相『最終の努力』」(読売)、「女性抜擢 刷新感アピール 4閣僚、旧統一教会と接点」(朝日)、「首相『賃上げの流れ継続』 投資拡大へ税改正」(日経)など見出しにかなりのバラツキがある。読み方によっては、政界を巻き込んだ旧統一教会問題や物価高対応や賃上げなど課題が山積し、岸田内閣は臨機応変な対応が迫られている。それが、「変化を力にする内閣」なのか、と。   

   それにしても、「新しい資本主義」の目玉政策の一つだった「デジタル田園都市国家構想による地方活性化」はいつの間にか影が薄くなった。

⇒14日(木)午後・金沢の天気    くもり

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☆北の偵察衛星は開発支援 ロシアへの武器供与は沈黙

2023年09月13日 | ⇒ニュース走査

   この弾道ミサイル発射は祝砲なのか・・・。北朝鮮はきょう午前11時台に2発の弾道ミサイルを半島の西岸付近から日本海に向けて発射した。防衛省公式サイトによると、11時41分に発射した弾道ミサイルは最高高度がおよそ50㌔で、約350㌔飛翔したと推測される。2発目は11時51分の発射で、最高高度がおよそ50㌔、約650㌔飛翔したと推測される。落下した場所は日本のEEZの外側だった。

   防衛省が落下箇所を記したイメージ図を見てみると、ウラジオストクのほぼ真南に位置する。発射された時間帯は、北朝鮮の金総書記が列車に乗って、ウラジオストクから約1000㌔離れたアムール州の「ボストーチヌイ宇宙基地」に向かっていた途中だ。タイミングといい、距離感といい、金総書記にロシアのプーチン大統領との首脳会談が成功裏に運ぶようにと願った祝砲のようにも思える。あるいは、ロシアと北朝鮮の同盟関係を誇示した、日米韓同盟に対する威圧行為なのか。

   では、ボストーチヌイ宇宙基地での首脳会談でどのような内容が交わされたのか。BBCはWeb版で「Vladimir Putin signals help for Kim Jong Un but quiet on weapons」の見出しで、プーチン大統領は金総書記に支援の合図をするも、武器に関しては沈黙、と伝えている。そもそも、なぜ宇宙基地が会談場所として選ばれたのか。記事によると、ロシアが北朝鮮の偵察衛星の開発を支援するかどうか、記者に尋ねられたプーチン氏は、「これが我々がボストーチヌイ宇宙基地に来た理由だ」と述べた。つまり、偵察衛星の打ち上げに2度失敗している北朝鮮に対し、プーチン氏は衛星の開発を支援する意思を明確に示した。実際に、金氏はロケットの組み立てや発射施設などを視察した。

   では、プーチン氏は金氏に何を求めたのか。金氏はロシアのウクライナ侵攻の支持を表明した。「われわれは常にプーチン大統領とロシアの指導者の決定を支持する。われわれは共に帝国主義との闘いに加わる」とロシアへの支持を改めて伝えた。ただ、会談では北朝鮮のロシアに対する武器供与の話が明らかになっていない。

   BBCは、北朝鮮はロシアに対して「応急措置」として武器を提供する可能性もある、と伝えている。この場合、北朝鮮の武器がロシアによってウクライナで使用されたことが明らかになれば、国連の北朝鮮に対する追加の制裁を引き起こす動きが出てくる。そこで、プーチン氏はあえて「quiet on weapons」だったと解説している。

⇒13日(水)夜・金沢の天気    はれ

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★現場を行く~「武士道ガーディアン」と「殺人事件」

2023年09月12日 | ⇒ニュース走査

          かつて勤めた新聞社とテレビ局での取材経験で、現場でしか実感できない謎解きの面白さや喜び、怒り、悲しみというものを味わってきた。今でもニュースで知っただけのことなのだが、無性に現場に行ってみたいという欲求が湧いてくることがある。きょう現場を2ヵ所巡った。

   航空自衛隊小松基地で、日本とオーストラリアの共同訓練が行われている。共同訓練は「武士道ガーディアン23」と呼ばれている。その訓練の様子がきのう11日に報道陣に公開され、けさの紙面に載っていた。航空自衛隊のプレスリリース(7月25日付)によると、訓練には空自の戦闘機F15「イーグル」16機やオーストラリア空軍の最新鋭ステルス戦闘機F35A「ライトニングⅡ」6機などが参加している。訓練の目的は、「自由で開かれたインド太平洋」の実現のためとしているが、海洋進出を続ける中国への対抗を念頭に、日豪の防衛協力を強化する狙いがあるのだろう。(※写真は上がF15、下がF35A=小松基地で午後1時30分ごろ撮影)

   記事の中で興味を抱いたのは「F35A」。F15はこれまで何度か見に行ったことはあるが、F35Aは初めてだった。正午ごろに小松基地周辺の無料駐車場に到着。すると、望遠レンズのカメラを携えたマニアらしき人たちがすでに40人ほどいた。乗用車のナンバーから石川県内のほか富山、福井、岐阜、静岡、愛知など遠方から来たようだ。そして、午後1時過ぎから訓練が始まった。驚いたのはF35Aの爆音だ。大型エンジンを搭載しているため、F15に比べ騒音が激しい。共同訓練は今月15日までだが、騒音被害を訴える市民の声も高まるのではないか。そんなことを思った。

   殺人事件があった。11日未明に石川県白山市のホテルで金沢市に住む23歳の女性が刺され死亡した。県警は同日午前中に白山市に住む54歳の男が刃渡り19㌢の刃物を持っていたとして金沢市内で銃刀法違反で現行犯逮捕、午後には殺人容疑で再逮捕した。ホテルの防犯カメラに映っていた人物と酷似していた。女性と逮捕された男の関係性は記事にはなっていない。女性には首や胸など10ヵ所ほど刺されていた。恨みによる犯行なのか。殺人の動機は徐々に解明されていくだろう。

   殺人があったホテルを見渡してみると、場所は市の中心部から少し外れにある=写真・下=。周囲には会社の建物やコンビ、そして別のホテルもある。新興地という雰囲気だ。メディア各社の報道によると、男はこのホテルで女性を殺害し、10㌔ほど離れた金沢市の繁華街へ自転車で移動し、逮捕されている。

   それにしても警察の防犯カメラの解析はスピード感がある。事件の発覚は午前1時半ごろで、ホテルの防犯カメラで人物像を察知。そして金沢の繁華街で逮捕されたのは午前7時45分ごろ。未明に繁華街の防犯カメラで男がうろついている様子が写っていて、警察は男の動向を把握していた。今後、生成AIによる防犯カメラの画像分析が可能になると、さらにリアルタイムな捜査となるのかもしれない。

⇒12日(火)夜・金沢の天気    はれ

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☆生き残りへと動き出す日本のテレビ業界

2023年09月11日 | ⇒メディア時評

          デジタル時代で帰路に立つ日本のテレビ業界がいよいよ生き残りへと動き出した。2021年11月から議論を重ねてきた総務省「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」は今月6日に「デジタル時代における放送の将来像と制度の在り方に関する取りまとめ(第2次)」を公表した。それによると、「デジタル時代において、放送を取り巻く環境は、インターネット動画配信サービスの伸長等による若者を中心とした『テレビ離れ』など、大きく変化し、情報空間はインターネットを含めて放送以外にも広がっている」と危機感を募らせている。

   一方でデジタル時代のテレビメディアの存在価値を強調している。それは、「インターネット空間では、人々の関心や注目の獲得ばかりが経済的な価値を持つアテンションエコノミーが形成され、フィルターバブルやエコーチェンバー、フェイクニュースといった問題も顕在化している」と問題視。テレビ業界がこれまで積み上げてきた「取材や編集に裏打ちされた信頼性の高い情報発信、『知る自由』の保障、『社会の基本情報』の共有や多様な価値観に対する相互理解の促進といった放送の価値は、情報空間全体におけるインフォメーション・ヘルス(情報的健康)の確保の点で、むしろこのデジタル時代においてこそ、その役割に対する期待が増している」と存在価値を強調している。

   若者世代からはNHKを含めてテレビメディアへの離反があり、民放は広告売り上げが厳しい。とくにローカル民放局が厳しい経営状況に陥るという予測もある。電通がまとめた2022年(1-12月)の日本の総広告費は7兆1021億円で過去最高となった。しかし、テレビ(地上波、BS・CS)は1兆8019億円と前年比98.0%で下降。一方で、インターネット広告費は3兆912億円と好調で前年比114.3%だ。この時代にテレビメディアはどのように生き残るのか。

   今回の「デジタル時代における放送の将来像と制度の在り方に関する取りまとめ(第2次)」では、テレビメディアは電波にこだわらず、インターネットでの番組コンテンツの配信を行う、としている。NHKはインターネットで同時に放送を流す配信サービスをこれまで「補完業務として任意」と位置付けていたが、それを「放送としてネット配信を必須業務」と大転換した。スマホなどネットのみを通じて情報を得る人にもひとしく受け取れるよう努める義務をNHKが負うという考えだ。

   では、その場合にNHK受信料はどうなるのだろうか。提言では「スマホを持って、視聴の意志で負担する」という考えを示している。スマホとNHK視聴はイコールにせず、視聴意志に委ねるという考えだ。今後のその具体策や中身については議論となりそうだ。

⇒11日(月)夜・金沢の天気   くもり

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★生涯付き合うことになる「帯状疱疹」という厄介な病

2023年09月10日 | ⇒トピック往来

   左足に強烈な痛みが走るようになったのは8月10日だった。座っても立ってもいられない痛さで、テーブルにもたれかかって痛みが和らぐを待つしかない。時間にして数分だが、これまで経験したことがないピリピリとした痛みだけに、心臓もどきどきとしてくる。

   一度ひやりとしたことは、自家用車を運転中に痛みが襲って来たときだった。旧盆帰省のため家族とともに実家に向っている途中で痛みが走った。たまたま左車線を走行していて、空きスペースがあったので駐車して痛みをしのいだ。もし、渋滞に巻き込まれ、駐車もできずにゆっくり運転をせざるを得ない状況だったらどうなっていただろうか。以降は同乗の家族の者に運転を代わってもらった。この痛みは1日に1回か2回やってきて、3週間ほど続いた。

   この痛みの原因は「帯状疱疹」。7月31日に皮膚科医院で知らされた病名だった。左足の太もも(大腿)の裏あたりが一面に赤く腫れているのに気づいて医院に行った。医師の説明では、小さいときの「水ぼうそう」と同じウイルスが加齢とともに帯状疱疹となって現れる病気で、50歳代から80歳までに3人に1人は発症するということだった。発症する体の部位は右か左どのどちらかで、顔面や胸部、腹部、足の太ももなどさまざまという。そのとき、医師から尋ねられたのは「痛みが走りませんか」ということだった。このときは、痛みはまったくなく、どちらかと言えば痒(かゆ)みが少々あった。塗り薬など処方してもらった。

   8月7日に薬が切れたので医院に行った。赤く腫れた部分はかなり落ち着いた様子になっていた。痛みもなかった。ただ、医師はこう話した。「赤く腫れているときに患部に痛みが走るのですが、まれなケースとして『かさぶた』化するときに痛みが走る場合があります」と。そして、新たに痛み止めの処方があった=写真=。

   その痛みが現実に現れたのが冒頭の8月10日だった。痛み止めの薬を飲んだものの、1日に1回か2回痛みが走る。我慢が出来なくなり、18日に医院に駆けこんだ。すると医師は「まだ良いほうです。1時間に1回という人もいて、夜眠れないという人もいます」と。痛み止めの薬を継続することに。

   痛みらしい痛みが消えたのは9月に入ったころだった。ネットで専門医など所見を読むと、病をもたらすウイルスは生涯にわたって体内に潜伏する。普段は悪さをすることはないが、ストレスや疲れ、免疫機能の低下などきっかけでウイルスが再活性化する、とある。そういえば医院の医師はこう言っていた。「いま治っても10年後くらいにまた(症状が)出てきますよ」と。

   最近、帯状疱疹のワクチンの広告をよく見かけるようになった。全国的な流行なのか。連日の猛暑でストレスや疲れ、免疫機能の低下したのか。厄介なウイルスと生涯付き合うしかないようだ。

⇒10日(日)夜・金沢の天気    あめ

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☆性的虐待を黙認してきたメディアを問うBBCの論調

2023年09月08日 | ⇒メディア時評

   連日、ジャニーズ事務所のジャニー喜多川元社長(2019年死亡)の性加害問題が報道されている。この性加害をめぐっては、日本のメディアのあり様が問われている。そもそも、イギリスBBCのドキュメンター番組「Predator: The Secret Scandal of J-Pop 」がことし3月7日に放送されなければ、日本で白日の下にさらされることはなかった。番組の中で、元ジャニーズの4人が生々しく証言している。これが発端となり、日本のメディアにようやく着火した。   

   これまで日本のメディアで追及していたのは唯一、週刊誌「週刊文春」だった。1999年10月から14週にわたってジャニー喜多川社長の性加害問題を告発する連載キャンペーンを張った。この記事に対して、ジャニーズ事務所とジャニー社長は発行元の文藝春秋社を名誉毀損で提訴。二審の東京高裁は2003年5月、「その重要な部分について真実」「真実でない部分であっても相当性がある」と性加害を認定。ジャニーズ側はこれを不服として上告したが、最高裁は2004年に棄却している(ことし5月13日付・弁護士ドットコムニュース)。そして、この判決後もジャニー社長による性的搾取が続いていた、ということになる。

   では、ジャニーズ事務所が社長交代を発表したきのうの記者会見を、BBCはどう報じているのか。「Johnny Kitagawa: J-pop agency boss resigns over predator's abuse」の見出し=写真=で、日本最大のポップ芸能事務所の社長が、創業者による性的虐待を最終的に認めて辞任したと伝えている。さらに、「Most mainstream Japanese media also did not cover the allegations for decades, prompting accusations of an industry cover-up.」と日本の主要メディア(テレビ、新聞)が何十年もの間、この疑惑を取り上げてこなかったと批判。その背景として、ジャニー元社長が日本の芸能界で最も影響力を持った人物で、ジャニーズ事務所が日本のボーイズバンドを独占してきたという背景にあると報じている。

   BBCのこの論調は解釈の仕方によっては、ジャニー喜多川元社長の性的虐待を黙って見逃してきた主要メディアはむしろ「共犯」ではないのかと言っているようにも読める。

⇒8日(金)夜・金沢の天気     くもり

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★「震災復興の光に」アートを掲げ進む政治家の姿

2023年09月07日 | ⇒トピック往来

   ことし5月5日に震度6強の揺れに見舞われた能登半島の尖端・珠洲市で、「奥能登国際芸術祭2023」が今月23日から11月12日まで開催される。3年に1度開催され今回は3回目となる。テーマは「最涯(さいはて)の芸術祭、美術の最先端。」。芸術祭の総合ディレクターをつとめるのはアートディレクターの北川フラム氏。そして、実行委員長は市長の泉谷満寿裕氏。震災という難局に見舞われながら、芸術祭を実行する意義は何なのか。

   石川県内の21の大学・短大などで構成する「大学コンソーシアム石川」のシティカレッジ授業(7月29日)で、泉谷氏の講義=写真・上=を聴講した。テーマは「さいはての地域経営」。その中で泉谷氏は芸術祭の開催意義について述べていた。

   珠洲市は人口1万3千人。過疎化が進み、本州で最も人口の少ない市でもある。一方で世界農業遺産「能登の里山里海」に認定され、農耕儀礼「あえのこと」はユネスコ無形文化遺産に登録。そして、珠洲市は佐渡のトキやコハクチョウなど野鳥が舞い降りる自然豊かな土地柄でもある。芸術祭の効果について、2017年の第1回芸術祭以降の5年間で移住者が269人になったと数字で説明があった。

   泉谷氏は「半島の尖端に位置する珠洲の潜在的な魅力がアートを通じて広がった。芸術家を志す若者や、オーガニック農業、リモートワーク、カフェの経営などさまざまな人たちが集まってきている」と強調した。アート作品は市内のさまざまな地域に点在し、作品はその地域の空間や歴史の特性を生かしたものが創作されている。なので、作品鑑賞をひとめぐりすると、同時に珠洲という土地柄も理解できる。これが移住を促すチャンスにもなっている。

   5月の震災では1人が亡くなり30人余りが負傷、全壊28棟・半壊103棟、一部損壊564棟などの被害を被った。ことしの開催に当たっては、「震災復興に集中すべき」と反対意見が多かった。芸術祭の市の予算は3億円余りで、復興に回すべきという議論も相次いだ。泉谷氏は、「何か目標や希望がないと前を向いて歩けない。芸術祭を復興に向けての光にしたいと開催を決断した」とその想いを語った。(※写真・下は、塩田千春作『時を運ぶ船』をベースにした国際芸術祭2023パンフの表紙)

   また、震災後の人口動態は、5月から7月の3ゕ月では転入が50人、転出が47人で3人が転入超過だった。「これまで移住してくれた人たちがどこかに行くのではないかと心配したが、なんとか留まってくれている」と述べた。

   「震災復興の光」としての芸術祭ではインバウンド観光客の誘致にもチカラを入れたいと積極的だった。実際、講義が終わってから台湾へ芸術祭のツアーについて打ち合わせに行くとの話だった。その結果、今月から10月にかけて台湾から能登空港へのチャーター便が6便運航することが決まったようだ。

   「災い転じて福となす」ということわざがある。「震災復興の光に」とリーダーシップを発揮して、前に向いて進む政治家の姿こそ、アートなのかもしれない。

⇒7日(木)午前・金沢の天気    くもり一時あめ

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