一ヵ月ほど前かね、気になる出来事が上がってきたのは。
マイク・ポートノイが13年の時を経てDREAM THEATERに復帰。
それに伴い、マイク・マンジーニは脱退する事になった。
コレに関しちゃ、いずれは実現する事になるだろうとは思っていた。
幸か不幸か、コロナ禍に於ける状況が、この復帰を具現化させたんじゃないかと考えている。
ポートノイが脱退したのは、一度バンドを休止させようという提案を却下された事による。
バンド結成より、ジョン・ペトルーシと一緒にDREAM THEATERを動かしてきていたが、実際のところバンドの実権を握っているのはポートノイであったと、誰の目にもそう映っていた筈。
恐らく、本人もその意識はあったんじゃないかと思うし、でなければその意見を大々的に述べて、却下された後に脱退なんていう行動に簡単に出なかったと思うんだよね。
「俺が脱退する事によって、バンドを強制的に止めよう」という魂胆、自尊心があったと。
しかし、バンドは止まらなかったし、マンジーニという世界最高峰のドラマーの一人を獲得に至ってしまった。
その途中でポートノイから復帰を求める連絡があったらしいが、「これ以上バンドを振り回そうとするな」と、ペトルーシが絶縁にも等しいと言える申し出の却下をした事によって、ポートノイとDREAM THEATERは完全に袂を分かった状態になってしまったワケだ。
ポートノイ離脱後の『A DRAMATIC TURN OF EVENTS』は、アルバムのタイトルの如く、DREAM THEATERが最大の危機を乗り越えた奇跡を耳にしているかの様なアルバムとなり、ペトルーシの舵取りはポートノイと一緒であった時から、常にぶれていなかったという事実をその後も思い知らされた。
一方のポートノイは、自他共に認めるワーカホリックである事を示すかの如く、様々なバンド/プロジェクトに携わってきた。
取り分け、個人的に彼が関わったバンドとしては、THE WINERY DOGSとSONS OF APOLLOが好印象だった。
どちらもスーパーグループと言って支障ないHR/HMであるが、前者はトリオ編成である故の❝自由な纏まり方❞のある開放的空気感が主体であり、後者はもう少し建設的な構成感覚をまとわせた機能美が光る。
オレの中では、ポートノイはこの2つのバンドを主軸にして、これからも多岐にわたる活動をしていくのかなと思ってはいたのだが、2020年に差し掛かる頃合いで、ペトルーシとの邂逅が見える事になる。
ペトルーシのソロアルバムでポートノイが参加、遂には伝説と化していたLIQUID TENSION EXPERIMENTSが復活、『3』をリリースするなど、旧交を温めるには充分過ぎるほどの接近をしていた。
そして今年になって、とうとうポートノイが復帰するというアナウンスが流れた。
マンジーニが自身初となるソロアルバムをリリース目前という時期に何とも皮肉な、と思われる所もあっただろうが、恐らく全員がこのタイミングを狙っていたんだろうと思う。
「大丈夫、俺は一人でもやっていけるよ」という、マンジーニなりの宣言がソロアルバムとしての表明かと思える。
そもそも、この男は過去にバンド加入していた経歴を持ち合わせていながら、理論的な編曲能力もしっかりと持ち合わせているため、やろうと思えば全然セッション界隈でも引く手数多に違いなかったろうが、DREAM THEATERというバンドに加入した事によって、その地位を確固たるものにしたのは間違いないだろうね。
特に、「THE ALIEN」でのドラミングは、バンド在籍時に於けるハイライトとなったし、「こいつじゃないと無理だろコレ」と思わせ、これからもマンジーニが居る事に関しては最早誰も不満など唱えないだろうとも思わせた曲だった。
そう、
最近ポートノイがインタヴューで応えていた中で、オレも気になっていた点は、「マンジーニ在籍時の曲は演奏するのか」という事。
この辺りは本人も流石に慎重な対応を示していたね。
何せ、DREAM THEATERは以前にポートノイが居た時と環境が変わっている為、ポートノイもそこに関しては「皆の足元に注意を払いながら歩く必要がある」と、今のバンドの体制に理解を示している。
そこを踏まえた上で、「マンジーニ在籍時の曲をやるのか?」となれば、断るワケにもいかないだろうというのは何となく目に見えているが。
なので、
ポートノイは「暫く、これまで携わってきたバンドに関しては休止、或いは離脱する方向になるだろう」と述べていた。
DREAM THEATERがポートノイにとって重要なバンドであるのは、ファンであるならば誰もが知っている事だろう。
であるならば、13年の空白を埋める為に、片手間となる活動を一旦排除して集中するべきなのも当然と言えよう(その中で、「THE WINERY DOGSは続けていくつもりだ」と言っていたのは、個人的には嬉しかったね)。
ポートノイとマンジーニは、ドラミングスタイルが結局は違うからな。
両方ともテクニック面で言えば超絶技巧という言葉で共通させる事は可能だが、ポートノイは実際のところ「俺が俺が」と我の強さを覗かせるドラミング。
対するマンジーニは「求められている事をやっただけ」という、妙な謙虚さを醸すドラミング。
その違いは、お互いがバンドで叩いている曲を聴いてみたら、意外と解る筈。
その違いが、今後バンドにどう影響が出てくるかというのが気になる点だ。
ま、その前に、ポートノイはマンジーニ在籍時の曲をステージ上で演奏披露する事が使命とされそうだがな。
次の章でポートノイがまたDREAM THEATERでオラオラ感のあるドラミングを提供するのは、そこを通過してからだ。
元の鞘に収まったのは勿論歓迎するよ。