唐松林の中に小屋を建て、晴れた日には畑を耕し雨の日にはセロを弾いて暮したい、そんな郷秋の気ままな独り言。
郷秋<Gauche>の独り言
明日で良いことは今日やらない
子どもの頃に「今日できることを明日に延ばすな」と教わった。親に教わったのか小学校の道徳の時間に教わったのは忘れたけれど、今日できることを明日ではなく今日する事ことが大切で、それが人として正しい行いなのだと。
こう云う考え方の底辺には、「いつ死んでも良いように」と云う武士道的精神があるのではないかと郷秋は思っているのだが、考えてもみれば、今どき戦で死んだり急に切腹させられる羽目になったりすることはまずない。
勿論、不慮の事故に合う可能性はある。乗ったヒコーキが墜落するかもしれないし、道路を歩いていてクルマにはねられるかもしれない。夜寝たら次の朝には冷たくなっているかも知れない。しかし、そんなことはめったに起こらないし、もうそんな風に死んだとしても「あいつは昨日締め切りの仕事をしないまま死んでしまった」と云われることは多分無いだろうし、「昨日までと約束した仕事を果たさないまま死んでしまった」と後悔することも無いだろう。
だから、近頃の郷秋は「明日で良いことは今日しない」をモットーに生きている。明日でも良いことなのに、何もあくせくと今日中、今晩中に片付けなくても良いだろうと。夜になったら「明日に回してしまった仕事もあるけれど、今日もまずまずの一日だったか」と、冷たいビールを飲んでゆっくりしたいものである。ひょっとしたら「あっ、この間お願いした件、無いことになったから」と云われるかも知れないし。
と思って日々のらりくらりと生活している郷秋だが、余り立派とは云えない生活信条のような気がして、人には云いづらい思いでいたのだが、ちょっと似たようなことを書いている人がいたので安心した。このところこのblogでも度々登場しているエッセイストにして画家かつ農園主・ワイナリー経営者でもある玉村豊男さんがこんなことを書いていたのである。
「今日できることを明日に延ばすな」
という言葉を聞いた人は多いと思いますが、私は反対です。
せっかく明日に残せるものがあるのに、もし今日じゅうにやってしまったら、明日やることがなくなって・・・・・・死ぬかも知れない。
本当は「今日できることは明日に残せ」というのが正しいのです。
(「今日よりよい明日はない」集英社新書 2009年6月22日 第一刷発行)
先に「ちょっと似たようなことを書いている人がいたので安心した」と書いたが、郷秋がただぐうたらと一日伸ばしにする「明日で良いことは今日しない」と、。「今日やるべきことをしっかりやり、その日一日のわずかな達成に満足し、小さな癒しに心を慰めて、明日に残った仕事を考える。」ための「今日できることは明日に残せ」は全然違う。まったくトホホな郷秋である。
例によって記事本文とはなんの関係もない今日の一枚は、すっかり色づいてきた田んぼ。