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デジタルカメラと銀塩カメラ、どちらがお得?

 いっとき程熱心に読まなくはなったけれど、相変わらずCar MAGAZINE(NEKO PUBLISHING)を定期購読している。そのCar MAGAZINE、9月号の巻頭に「デジタル・カメラと銀塩カメラ」と云うコラムが掲載されていた。

 このコラムによれば、デジタル一眼レフ(以下、DSLR)は1990年10月に登場したキヤノンのEOS D30以降一般的になり2003~2004年辺りが、性能と価格のバランスが均衡し、なおかつインフラ整備が整ったところで一気に普及した、デジタル・カメラ普及のターニング・ポイントに思えるとのこと。「インフラ整備が整った」は重語だろうという突っ込みは置くとして(インフラ整備が整ったと云う意味が理解できないが)、まっ、その意見には郷秋<Gauche>も同意する。

 その上での話だが、ガソリンエンジンを使う自動車からハイブリッドカー人気を経て電気自動車へと進化を遂げようとしているクルマの世界は、デジタルカメラにおける20世紀末に位置しているように思うと、筆者(上野和秀氏、NEKO PUBLISHING所属のライター・編集者らしい)は語っている。

 つまり、上野氏によれば、間もなく、デジタルカメラで云えばEOS D30に相当する、より電気自動車に近いハイブリッドカーだか、より普通に使える電気自動車だかが登場し、その数年後にはEOS 30DやNikon D70に相当する電気自動車が登場し、「カメラと云えばデジタル」と同じく「クルマと云えば電気自動車」の時代がやって来ると云いたいらしい。

 問題は「カメラと云えばデジタル」、つまりフィルムを使うカメラが事実上駆逐されてしまったように、ガソリンエンジン(もしくはディーゼルエンジン、つまり石化燃料)で走る車が本当に駆逐されてしまうのだろうかと云うことである。この問いに対する郷秋<Gauche>の答えは「否」である。そんなにすぐに石化燃料で走るクルマはなくならない。第一、日本全国くまなく充電設備ができるのがいったいいつなのか。大都市圏だけを考えると見誤るほどに日本は、実は広いのである。

 さて、このコラムの中で筆者は、DSLRは性能が3倍になりながら価格は1/3以下になったのだから売れて当然である、更にはフィルム代と現像代がなくなったのも売れた大きな要因であると書いているが、果たしてそうだろうか。先に結論を云ってしまえば、郷秋<Gauche>は全くそうは思わない。だいたいがだ、性能が三倍と云うのも、筆者は画素数が三倍になったことだけを単純に取り上げて云っているようだが、そういう考え方に郷秋<Gauche>は与しない。

 1980年に登場したNikon(ニコン)F3は、ニコンのフラッグシップであるだけではなく、世界中を見渡しても一眼レフの最高峰と云えるカメラであるが、その後いくつかのバリエーションを登場させながら2000年までの20年間、生産・販売が続けられた。最終時点の価格は約20万円であったが、この20年間に致命的な事故(例えば落下や水没)にでも会わない限り一台のフラッグシップたるF3を20年間使い続けることができたことを意味している。

 翻って現代のニコンのフラッグシップ、F3Sは約50万円。1999年に登場したD1からD1X、D2X、D3、D3Sと約2年毎に買い替えたとすると、10年間に5台、総額250万円の買い物となる。買い替えの時に前機種を下取りに出したとしても下取り総額は多く見積もっても70万円だろうから10年間で実質180万円、更に向こう10年間に更に180万円とすると20年間に360万円をカメラに投資することが必要になる。

 フィルム時代のフラッグシップたるF3は20万円の投資で20年間それ一台で用を足すが、DSLRのフラッグシップは20年の間2年毎に次々に買い替え計10台、300万円をカメラに投資しなければならないのである。20万円対360万円、差額340万円である。

 20年に340万円分のフィルムと現像代と云うことは年に17万円分。富士のプロビア36枚撮りが1本1000円、現像代が700円とすると年に100本、つまりコンスタントに月2本撮って17万円、20年で340万円となる。プロでもなければコンスタントに月2本、年間にフィルム100本分の写真を撮るのはかなり大変なことに思えるが、どうだろうか。

 ざっと計算してみると、20年間に10台買い替えなければならないDSLRとずっと1台のカメラを使い続けることができるフィルムを使うカメラの初期投資とランニングコストを計算してみたが、特段DSLRが決して安くないことをご理解いただけたことと思う。ただし、これまでの計算には、DSLRでは必備であり、3~4年毎に買い替えが必要になるPCや関連ソフトの費用は含まれれていないことを考えると、トータルの費用としてはやはりフィルムを使うカメラの方が安いように思われてならない郷秋<Gauche>なのである。

 ただし、二年に一度は買い替えが出来る(しなければならない)ワクワク感とか、常に最新のカメラを使っていられる優越感、あるいは手に馴染んだ愛機をずっと使い続けることのできる喜びとか満足感と云ったメンタルな部分を考えなければと云うお話ではある。


 例によって記事本文とはなんの関係もない今日の一枚は、猛暑のせいなのか、例年より二週間程遅れて咲き始めた曼珠沙華(まんじゅしゃげ、彼岸花)と、その蜜を吸うアゲハチョウ。
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