弁護士太田宏美の公式ブログ

正しい裁判を得るために

判事ディード 法の聖域 第20話 父娘対決

2011年08月01日 | 判事ディード 法の聖域

判事ディード法の聖域第20話は父娘対決(My Daughter,Right or Wrong)です。

事件としては、動物の権利保護活動家による殺人(MURDER)事件ひとつです。
そう難しくはない?と思いましたが、良く考えると、いろいろと込み入った事情がありそうです。

個人的に面白い、興味深いなどと感じたことはつぎのようなことです。

1 屏風のような大きなスクリーンでしたね。  
  今回は、証人を秘匿するために使われていました。
  随分大きいですね。
  私は、このようなスクリーンは、証人が被告人を恐れて、面前では証言をできない
  ような場合に使うのかと思っていましたが、こういう使い方もあるのですね。
  PII(Public Interest Immunity)というのは、証言や証拠書類の提出が公益を
  理由に免除されるという使い方が普通と思うのですが、こういう使い方もあるのですね。

2 法務長官が検察側の代理人とを務めることがあるなど、日本的発想では信じられない
  ことです。
  役所のラインでは法務長官の方が上です。これまで、何度も見てきました。
  ところが、法廷では、ラインの下であるはずのディードの指揮にしたがうことになる
  のです。
  しかも、法務長官は忙しく、議会に呼ばれると出向かなくてはなりません。 
  そのために、ピーターがサブとしてついています。
  実際、法務長官は最初の段階で少し法廷に出た程度で、後はピーターにまかせっきり
  のようです。

3 陪審員に対するディードの指示(DIRECT)です。
  ディードの方から殺人の証拠が十分でないので、無罪の評決をするように
  (return the verdict not giulty)と指示していました。
  書記官の質問に対し、陪審長は無罪だということ、全員一致だということを
  述べていました。
  これまで、何度も、判事室で、検察側、弁護人らと協議し、無罪だとか証拠不十分
  などと決まるところまでは見ましたが、陪審員との関係がどうなるのか疑問でしたが、
  形式的ですが、こういう作業があったのですね。

4 バリスター(法廷弁護士)が直接証人らと外部で接触することについて
  イギリスでは弁護士はバリスターとソリシター(事務弁護士)の2種類があります。
  バリスターが直接依頼者から依頼を受けてはいけない(ソリシターを通す)ということは
  聞いていましたが、証拠収集するための作業も本来はしてはいけないということの
  ようですね。
  こういう事前の料理はソリシターの仕事というわけです。
  ただ、最近、ソリシター、バリスターの関係についての法律が変わったということ
  ですので、これはあるいは法律の先取りかもと思いますが・・

5 ジュニア弁護士の着席位置について
  チャーリーは、単独の代理人になった後も2列目の席でした。
  1列目の席はシニア弁護士専用なのですね。
  ジョーがパートタイム判事(レコーダー)をした事件で、弁護人のカウントウエルが
  自分のジュニアに何かを言わせにいきました。すると検事側の代理人がそそくさと
  後ろの席(2列目)に移動しました。
  多分、そうではと推測していましたが、正しかったようです。

6 結局、この事件の真相は何だったのか。
  MI5は、動物保護運動を完全に潰したかったのです。
  それで、動物の5つ星ホテルといわれていた研究施設を爆破し、その責任を
  活動家のヘンリー・フリーに転嫁しようと企てたということだったのです。
  重要証人というMI5の工作員は、運動の状況を知るため潜入したのではなく、
  爆破工作を扇動するためだったのです。
  彼が近づいたのは、運動家というよりは、このような爆破工作に協力する人間
  だったのです。
  被害者の妻の証言でMI5の人間一人だけが夫の防衛にあたっていたことがわか
  ります。被害者は妻の証言するように癌で本来なら死んでいてもおかしくないほど
  重篤な状態でした。ノーベル賞を逃したという恨みもあったのです。
  チャーリーが鋭く迫って「報復のために」自殺することがあることを認めさせました。
  辞任したサイモンが、鋭く迫っていたように、被告人のヘンリーは犯人像に到底
  一致していたとはいえません。
  アリバイがなかった(本当はあるのですが、言えない)ということだけだったのです。
  重要証人が、ヘンリーとの関係について、当たり障りのない証言しかできなかったの
  も、実際、爆破というような違法な計画などなかったからです。

  冒頭の法務長官の説明で、2時45分警察に3時爆発の予告があったこと、ところが
  約10分早い2時47分に爆発が起こってしまった。
  この時間の食い違いが何だったかは(多分法務長官は知らない)、事件の真相が
  わかったところで、謎が解けたのです。
  被害者の教授は、みんなが避難したことを確認して、戻りました。
  研究に関する重要な書類を取りに戻ったとの推測でしたが、実際は、
  爆弾の引き金を引くためだったのです。 

  なお、チャーリーがaggrevated criminal damages に変更しないかというのは
  器物損壊でしょうか、何か意図があった可能性がありますが、ちょっとわかりません。

  いずれにしろ、検察はMURDER一本でいくことになりました。

7 こうして結果がわかってくると、法務長官が検察の代理人をすることにしたのは
  MI5の証人について、ディードに秘匿特権を認めさせるためだったのではないか
  と思うのですが、読み過ぎでしょうか。
  
  もし、この証人の名前や顔を見れば、被害者の教授と親しかったことや、大した
  話がなかったことはすぐばれるはずです。
  したがって、どうしてもスクリーンの後ろでの証言でなければならないのです。
  ディードがこういうことが嫌いなことは百も承知のことです。
  イアンも事前に根回ししています。

  しかし、さすがのディードも法務長官では断りにくいというわけです。

  法務長官というトップが検察の代理人になるということは、サイモンもジョーも言って
  いたように「負ける訴訟に出るわけない」「勝つからだ」という先入観をもちます。

  こういうお膳立てのためだったのではないかと思うのですが。

8 さて、ディードとジョーの関係はもう終わったのでしょうか。
  そうとは思いたくないですね。
  新しい恋人のマークですが、ジョーとはうまくいくのでしょうか。
  マークは細かいですね。ジョーがいい加減に置いた新聞やタオルをたたみなおしたり
  しています。これってどういう意味がるのでしょうね。

  それに気になることがありますね。ニールがジョージに、マークはイアンの手先(IAN's
  man)と言っていましたね。
  追加の補助金が決まったと喜んでしましたが、何かありそうですね。

  ディードとモラグも怪しいかも?
  モンティも気づきましたね。 
  2人の仲はどうなるのでしょう。

  またイアンも最近おかしいですね。何か企んでいるのかもしれません。

9 ディードによると、息子や娘が同じ法廷に立つことは、一応問題はないと
  以前、カウンセラーに話していましたので、法律的には問題がないのかもしれません。
  しかし、ディードの訴訟指揮は、私には、甘いように思いました。
  チャーリーでなければ、おそらく、もっと早い段階で、発言禁止、法廷侮辱で退廷だった
  でしょう。また、チャーリーも甘えていましたね。プロであれば、あるいは
  他人であれば、チャーリーのようにやりたい放題というわけにはいかなかったと
  思います。
  弁護士会に報告と言っていましたが、結局うやむやになるのではと思います。 
  ニールがイアンに、チャーリーはジョージの娘でもあるからと言っていましたね。

10 そういう意味では、法曹界、及びそれに近い政府機関、政治家たちの仲良しクラブ
  的なところもあるようです。

11 ニールやジョージがジョーの服装のセンスについて、軽蔑的発言をしています。
   今回も「オックスハム」以下のようなことを言っていました。
   オックスハムというのは「オックスフォード飢饉救済委員会」の略称です。
   そういうところで買ってきたのではないかということです。
   後半部分でのジョーのシャツとスラックス姿には、そういわれてもしかたないかな
   と思わせる野暮ったさ、安っぽさがありました。
   ついでに、モラグの髪型も気になっています。

回を重ねるにつれ、理解は深まっていきます。


判事ディード 法の聖域 第19話 閉ざされた扉

2011年07月29日 | 判事ディード 法の聖域

第19話は閉ざされた扉(Hard Gating)です。

刑務所問題がテーマです。
交通事故の控訴事件もそれと絡んでいます。
今回は、ディードは高裁事件を担当しています。
ロンドンにあるクラウンコートの法廷は本当に狭いんです。
あのテレビのとおりです。
日本の場合、特に高裁は合議で裁判官3人ですから、もっとゆったりしています。

刑務所内で起こった殺人事件、しかも人肉を食べたという衝撃的なものです。
検察も弁護側も、Manslaughterで争いがないので、通常であれば何も
問題がないケースです。
しかし、ディードは裏に何かがあると考えています。
それで、ニュートン・ヒアリング(Newton hearing)という判例を利用して、裁判を継続
しようとするのです。
Newton hearingというのは有罪だということには双方争いがないが、その理由や
事実関係について、検察側と弁護側で大きく離れていて量刑に影響があるという場合
に通常の手続きのような証人尋問など裁判が行われるものです。
しかしいわゆるMURDERには適用されないようですが、やってみようというわけです。
検察も弁護側も人肉を食べるなどという異常な事件なので、争う意欲をなくしています。
早く終わりにしてほしいというのが本当の気持ちでしょう。

ディードは例の嗅覚でこのような異常な事件が起こったことについて、刑務所内部の管理に
何か問題があると考えたというわけです。
それで、弁護人の主張と被告人ブラッドウェルの主張(provoke とか self diffenceなど)
に食い違いがあるなどと口実をつけて
Newton hearingの陪審なしですることにしたのです。
しかし、ジョーは弁護士としてなんとかしてやりたいという気持ちが、検察役のアラン・メイソン
は何か裏があると感じていたので、特に反対しなかったのです。

もともとの放映は2006年ですが、そのころ、少年院でムスリムの少年が
人種差別主義の同房の少年に殺されるという事件が現実に発生していました。
その中で、刑務所の過密問題や刑務所職員によるいじめや虐待問題などが
明るみにでました。
刑務所職員は悪意に満ちたゲームをして楽しんでいたこと(グラディエーターという
復讐劇の歴史映画の名前をつけるなど)や問題が生じる可能性のある者同士をわざと
同室させ、挑発したりからかったりということがあることがわかりました。
調査をした司法当局からの改善を求める報告書も政府に提出されたようです。

これに対して内務省は予算の関係で、真相を明らにすることに抵抗していたようです。

今回のテーマは明らかにこのような動きを背景にしたものです。
このドラマでは人種差別主義者の白人ブラッドウェルの房に出所間近い黒人セトルを入れたのです。
ノートにはその記載があったということですから、挑発させようとしたのでしょう。
なぜ、この黒人が選ばれたのかはわかりませんが、
看守責任者が所内の秩序維持のために配布していたドラッグをためて売っていたということですし、
母親は私人訴追を2回もしていたなどで看守者に嫌われていたのです。
そのことは、ディードがジョージの仲介でニールから手に入れた名簿で明らかになった
事件当時、隣の独房にいたバリ・ペイジという囚人の証言で明らかになりました。
なお模範囚との訳がありましたが、ちょっとおかしいかなと思います。
ペイジはあだ名で呼んでいたようです。私にはアクワイア・ボーイ(acquire boyではないか
と思いましたが)と聞こえました。ドラッグに絡んだものと思います。
模範囚がprincipal officer(看守責任者)のスピアソンに嫌われるというのはおかしいです。
最終段階のペイジの証言で事情がわかりますが、それでも模範囚と訳したのではフォローが
難しいです。

なお、ついでにいうとManslaughterを過失致死罪と訳すのは間違いです。前から気になって
いましたが、
日本の殺人罪とは違いますが、日本の過失致死とも違うからです。
謀殺罪と故殺罪という言い方もありますが、アメリカで一級殺人と二級殺人というように
殺人罪に2種類があるということです。
なお、両方を含む時はHOMICIDEというのですね。
ジョーがブラッドウェルに説明するときに「HOMICIDE ACT」と法律名を挙げていました。

看守者はドラッグを使っておとなしくさせていたということですが、ちょっと信じられ
ません。しかし、ほおっておくとアナーキーな状態だったことは事実なのでしょう。
しかし問題は、だからと言ってこういう違法が許されるというわけではありません。

被告人は明らかに精神的におかしい状態でしたね。
年中問題を起こし、ドラッグをうるなどうまく立ち回る黒人は目ざわりだったのでしょう。
精神を病んで治る見込みのないような被告人は気の毒で同情するところもありますが、
極端な人種差別主義者の被告人は黒人の囚人が増える一方の刑務所(ニールが
言っていました)の管理者にとっては余計なお荷物だったでしょう。
スピアソンはお荷物の二人を一気に処理してしまおうと考えた可能性があります。

被告人は「死体を食べるように」スピアソンから命令されたということでがわかりました。
(バリ・ベイジの証言、被告人の最後の叫び)
それにしてもバイジの犯行時の状況の証言は衝撃的でした。
スピアソンが死体を食べるように命じたのは精神異常者の殺人として刑務所の責任が
問われなくなると思ったのかもしれません。
看守の一人がセトルの殺害を知ってスピアソンに報告した後、スピアソンは
死体を食べるようにし向けてたのですから。

看守者のこのような権力の乱用は許されることではありませんが、
刑務所など閉ざされた施設の運営は本当に難しいことなのだと思います。

交通事故を起こした被告人の控訴判決で、ディードが実刑でなく
non cautodial の判決にしたのは、刑務所に収容しても解決しないし、
そもそも無秩序な刑務所の実態があったからと思います。
そして犯罪の被害者である遺族の父母にまず話し合いを始めることからスタート
するよう説得したのも、真の救済とはなにかを考えてのことだと思います。
イギリスでは早くから犯罪被害者のための活動組織があり、多分このころから
政府の補助金等の支援が本格化しました。
もともと心のケアから始まった取り組みfだったので、金の問題だけでない、
双方にとっての救いを、難しいけれでも彼らならやれると、期待したのかもしれません。
期待できそうな雰囲気でしたね。

また、イギリスでは私人訴追(private prosecution)ができるのですね。
日本では検察官しか起訴はできません。捜査のきっかけである告訴や告発はできますが
起訴については検察官の独占です。
ただ、そうはいっても、イギリスでも私人訴追は推奨されておらず、したがって
結局は証拠不十分になり、不起訴になるのが実情で、有名無実化しているのです。
ということを、ディードは説明してセトルの母に諦めさせています。現実的に考えろというわけです。
と同時に、ニールとの取引条件(名簿とCTTVの映像と引き換え)でもあったのです。
そのかわり、ディードからprima facie case(いちおう証拠があるケース
(日本にはない考えです)として法務長官に報告するということでした。
このように、ディードは被害者のために本当に救いになる現実的な方法を検討して
います。

そういう意味でディードは正義の味方、弱い者の味方です。
ディード本人に言わせると、most dangerous judge ということになるのです。
こうしてみてくると、ディードは表に出た事件を解決するだけでは満足しないのです。
裏に潜む本当の原因までさかのぼって一気に解決したいのです。

ですが、ニールが騒いでいましたが、事件の真相(刑務所のケイオス状況)
を国民の目から逸らしたいというのが政治家であり、政府なのです。
それを暴こうとするディードは危険で手に負えないというわけです。

なお、ディードと内務大臣のニールとの関係は個人の関係であると同時に
内務省 対 裁判官という組織の問題と化しつつあるようです。

ドラマにもあるように量刑についてはそれまでは裁判官の裁量次第というところだった
のが、政府の量刑のガイドラインができたことがわかります。
また、ニールが全部の刑の処罰を法律で決めるなどといっていますし、
ディードを辞めさせるさせないの議論になったとき、いつもイアンから注意されていますが、
やめさせることができると考えているのです。
議会が、つまりは政治家が司法をコントロールできるとの考えが
イギリスでは強くなっています。もちろん法律を通じてですが。
ただ、われわれ日本人からみると、罪刑法定主義といわれるように法律で決めるのは
当たり前なのですが。このあたりは歴史ですね。
そういう流れをうけて、裁判官の中でも、ディードに共感する人がいるのだと
思います。モンティもジョン・チャニングもそうです。
徐々にディードに洗脳?されているように感じます?
イアンはわかりませんが、最近では諦め気味か?あるいはニールの強引さに
ややうんざりしているように思います。

さて、ジョーとの恋愛の方はどうなるのでしょうか。
本当の愛というのは成就が難しいのでしょうか。
小さいマイケル、能面のような表情が今回は愛くるしくなってきたように見えました。

ディードの扱う事件はより深刻になってきたように思います。
それだけ社会が複雑化深刻化しているということなのでしょう。

これからも人間の「心」を失わない、革新的な裁判官であってほしいです。

最後に、判決の主文は何だったのでしょうか。
検察も弁護側も、Manslaughter based on diminished responsibilityでした。
ディードの口からは本来ならばMurderであるがという言葉はでましたが、
Manslaughterという言葉は一切ありませんでした。
しかし、証拠調べの結果、satisfiedしたということ(つまり双方の主張に満足したという意味)
such ・・・mind as diminished responsibility と言っていましたから
やはりManslaughter based on diminished responsibilityなのだと思います。
ジョーは直ちにmitigation(軽減)を主張していました。
ディードは刑務所収容ではなく専門病院への・・・収容(detention)にしたようです。
釈放には別に命令が必要なようでした。
なお、・・・・の2か所は、どうしても英語が聞き取れませんでした。

この被告人は29歳ですがそのうち24年間は何らかの施設ぐらしだったということでした。

いろいろと考えさせられました。


判事ディード 法の聖域 第19話 迎合の落とし穴

2011年07月23日 | 判事ディード 法の聖域

判事ディード「法の聖域」の19話は、原題は「Popular Appeal」です。

ディードは事件を通して正義の実現に努めてきました。
既成の概念や常識にとらわれず、弱い者の味方をしてきたのです。
もちろん19話においてもその姿勢は変わりませんが、前回のバロンの事件を
きっかけに、さらに範囲を広げ、個人として巨悪の犯罪との闘いにも
挑んでいきます。
政治と産業界の癒着・腐敗を暴くことです。リストフィールドとニール・ハウマンのことです。

今回ディードは注目度の極めて高い事件を担当することになりました。
「地下牢」というテレビのリアリティショーの放映最中に起こった殺人事件ですから、目撃者は
1620万世帯の視聴者です。
これまでなら、こういう事件については、イアンはディードに担当させません。
今回は、どういう風の吹きまわしかイアンのご指名です。
嗅覚の鋭いディードは何か裏があると感じます。でも最初はわかりません。
(ジョーは、きっとあなたはそういうテレビを見ないからよと、からかっていましたね)

本当の殺人事件そのものは、既にManslaughterで3年の実刑ということで
有罪が決まり終わっています。
すなわち、実際の殺人犯(ショウコウ)はProvocationの抗弁が認められ、
Murder ではなく、Manslaughterになったのですね。何千万という目撃者がいるので
こちらの方は簡単に決着しています。
今回、ディードの担当するのは、視聴率を上げるために、番組を面白くしようとして、
番組のプロデューサーとディレクターに行き過ぎたがあったのではないか、
ショウコウの殺人に責任があるのではないかということでManslaughterが争われて
いるのです。
最初の冒頭説明のところで検察側のジョーが明らかにしています。

ここで殺人についておさらいをしておきましょう。イギリスでは殺人を2つに分けます。
Murder と
Manslaughter 故殺(計画的でない殺人)です。
Murderは終身刑しかないので、全然弁解の余地のない殺人です。
日本人にわかりにくいのは、殺人をMurderとManslaughterにわけるという発想です。
日本では人を殺せば殺人です。どういう殺し方だったかは関係ありません。
ところが、イギリスでは挑発して殺した場合とか、責任能力に問題がある場合とか
自殺ほう助のような場合など、被告人に同情すべき事情がある場合には、
終身刑しかないMurderではなく、Manslaughterになるのです。

イギリスは判例法の国なので、最初は人を殺せば終身刑のMurderでよかった。
しかし、実際には人殺しにもいろいろ事情がある。終身刑では重すぎるという場合に
ついてMurderとは別枠のManslaughterという概念が生まれたのだと思います。
実際、日本でも殺人罪で無期懲役になるのは凶悪な場合で、多くの殺人罪はもっと軽い罪に
なっているのです。

Manslaughterですが、さらに2種類に分類できると解釈されています。ちょっと説明がかたく
なりますが、最初に説明しておいた方が理解がしやすいと思いますので。
Voluntary Manslaughter(殺すという意図がある)と
Involuntary Manslaughter(殺すという意図がない) です。
Voluntary Manslaughterが普通です。
この回で問題となっているのは、Involuntary(意識しないで) Manslaughterの方です。
番組のプロデューサーやディレクターには殺すつもりなどなかったのですから。

それではどういう場合にInvoluntary Manslaughterが成立するかというと、
Gross Negligence(重過失)があった場合です。
日本でいえば過失致死罪に相当するのでしょうが、ディードの放送も回を重ねてきますと
我々もイギリス的考えになれてきましたよね。ですから、ちょっと気取って
「Manslaughter by Gross Neglegence」と原語をそのまま使いましょうね。
その方がずっとしっくりしますよね!!

では、どういう場合に、Gross Negligenceになるかというと、まず、
命の危険があるような状況での管理義務(Duty of Care)があることと
(すなわち、殺人の発生を防止する義務があったかどうかということです)、もう一つは
この管理義務違反が刑事罰を科さなければならないほどのものであることの二つの条件
が必要ということでなんです。もちろん、この二つは密接に絡んでいます。

これまでの回でも、「Gross Neglegence」という言葉は何度か出てきましたが、
今回は「Gross Neglegence」によるManslaughterが成立するかどうかがが
ストレートに争われているのです。

なお、イギリスでは、バリスターが検事になり弁護人になり、その中から一部の
ものがジャッジになるのですが、ジャッジは別にして、
同じバリスターが弁護人になったり検察官役になります。
メイソンもノーウォークも検察官役でもみています。
ですから、ちょっと混乱します。顔を見て判断するのではなく、
どちらに座っているかで、検察か弁護人かを見極めなければなりません。
法壇に向かって右側が検察、左側が弁護人です。
ただ、どちら側に座っても、やり方はあまり変わらないようです。

気のせいか、ジョーはいつもより態度が大きめ、ゆったりとしています。
検察側として経験を積んできたからかもしれませんね。

今回の見どころのひとつは、陪審員の選任です。
視聴率がきわめて高い番組(ジョーによると国民の半分以上)ですから、陪審員
候補に番組をみたひとがいる可能性が高いです。
テレビを通しであっても、犯罪現場を目撃している人が陪審員になるのは、予断を
持ち、適当とはいえません。
まず8人が排除されました。もう一人は、被告人が知っているということで
排除されていました。
また、バリスターがいたのですね。ディードが見たことがありますねと聞いていましたね。
バリスターにも陪審員の役が回ってくることになったのですと、説明していました。
日本の裁判員制度では弁護士は免除になっています。
イギリスの制度改革はいいのかどうかわかりません。
こういう専門家がいると、専門家が評議をリードする可能性があるからです。
素人の意見を反映するという陪審員制度の趣旨に反する可能性があると
思いますがいかがでしょうか。

アメリカでは陪審員の選任手続きは、当事者である弁護士、検事が主導して
行われますが、イギリスの場合は裁判官が主導していました。
裁判の進め方はアメリカにくらべ、職権的なようです。

弁護側は危険を承知で出演を引き受けたのだから責任がないとか、
気が付いたら手遅れになっていたので責任がないなどとと言い始めますが、
ディードは判例を引用したりして、即座にどうでもいい主張は切り捨て
争点をしぼっていきます。あらためてディードの訴訟指揮の素晴らしさを感じました。

争点は、プロデューサーやディレクターに、ショウコウ(犯人)の殺人を防止する義務が
あったかどうかどうかです。
通常は、テレビの生放送中に出演者が他の出演者を殺すなど予想できませんので
管理義務など問題にならないのですが、これはダンジョン「地下牢」などという閉じ込められた
空間でのサバイバルショーですから、ある程度の危険は予想されます。危険があればあるほど
見る方はドキドキでおもしろいわけですから視聴率があがります。
テレビの世界は視聴率がすべてといっていいほどですから、視聴率をあげるために
プロデューサーやディレクターが無理をすることは当然予想できますが、そういう抽象的な
ことでは責任、特に殺人という刑事責任を問うには不十分です。
具体的に起こった殺人事件について、予見できたか、あるいは予見可能であったかが
問題なのです。

製作会社の社長、出演者、犯人のショウコウ、心理学者が証言するにつれ、視聴率を上げる
ためならなんでもあり的な実態がわかってきますね。
まずは、製作会社社長です。検察側申請。
囚人(inmate)役の出演者の選択基準については、「過激で大胆で挑戦を受けられる人」
(英語では、exciting,lively,sexy,challengeという言葉が使われていたと思います)だという
だとか、また、殺人の発生する直前では、ショウコウが爆発寸前なのでとめなきゃという声もあったのに、
そこで視聴率は一気に270万ポイントもアップしたことなどの証言も引き出していきます。
また、一時期16%の視聴率が一気に37%になったことや、前回のシリーズの好評を受けての
注文だったので、弁護士の表現では「more dangerous,more freak」となり
社長の表現では「more challenging」にしたなどがわかります。
また、制作会社はこの番組で4700万ポンドもの巨額のもうけがあったなども明らかになります
(日本にも売られたなど)。
ここの証言の引き出し方ですが「500ポンド?」反応なし「5000ポンド?」反応なし「5000万
ポンド?」ここではじめて「そんなには」との答えが返ってきます。そこで「4700万でしょう」と
本当の数字を出しましたね。それでも回答を避けようとしていましたが、ディードの指示で
いやいや認めました。こういう聞き方って大切なんですよ。これを最初からストレートに
4700万でしょうなんて聞くと「覚えていません」で終わりになってしまうのです。
こういう尋問の仕方はとても勉強になります。どうってことないように思われるかもしれませんが、
実際は大事なのです。
視聴率と儲けのために、相当無理があったことが徐々に明らかになっていきます。

ただ、これって弁護側が反対審問で聞いているのです。弁護側にとって有利なことのようには
思いませんね。疑問をもちますよね。
弁護側のストーリーは、制作会社(それを雇ったテレビ局)が悪いんだ、プロデューサーたちは、
製作会社に利用されただけなんだということなのです。
弁護側は拒否できない「veto」のではないかと質問しています。これに対して「say」はできる
(意見はいえる)との回答でしたから、最終的には会社の方針に従うしかないということで、
一応弁護側の主張は立証できたのではないでしょうか。

やはり、撮影の現場がどうだったかが重要になるわけで、出演者のひとり、と殺人の実行者
であるショウコウが登場することになります。
演技が悪いと(ディードが演技?だってリアリティーでしょう?と聞きなおしていますが、要は
出演者同士互いに争わせて、視聴率があがるように盛り上がらせる、やらせということです)
罰がある(飲み物、食事をさせないなど)などが明らかになります。
そういえば、制作会社社長は出演者のことをmaterial(素材)ともの扱いでしたね。
また、ショウコウはもともとキレやすい性格だとか、弱み(女性やゲイに対する極めて強い
偏見や嫌悪感)がはっきりしており、したがってショウコウを爆発させるのは簡単だったこと
なども明らかになります。
実際に、ショウコウは証言中に切れてしまいましたから、陪審員たちには何が起こったのか
すぐにわかったようでした。特に、ショウコウがボス役の女性に、歯ブラシでトイレ掃除を
するように命令された屈辱、そのためコントロールできなくなった、追い込まれたとの証言は、
陪審員たちを動揺させ、相当効果があったようです。
ショウコウのこういう性格がプロジューサー、ディレクターにうまく利用されたのではないかとの
疑いは濃くなったように思います。

そこで、本当にそうだったのかを立証するために、検察側の証人として、専門家の証人
(シール)が出てきました。
すると、出演者を選ぶときに、精神鑑定医を含めて、挑発に乗りやすい人、つまり
精神的に不安定ですぐキレる人を探していたことがわかりました。
この証人に対しては、コカインの常習者であることを示して
その証言の信用性を減殺してしまいます。弁護側にポイントです。
(なお、プロジューサーもコカイン常習者です。番組放映中にプロジューサーが
一方の鼻を押さえるしぐさをしていました。あれで、視聴者は彼がコカイン常習者だということが
わかってしまうという仕掛けです。)

もう少し、当時の状況が知りたいですね。というのはプロジューサーは徹底否認ですし、
ディードが最初の場面で、あなた(弁護士のメイソンに)より法律知識があるかもなどと皮肉っ
ていたように、そうとうしたたかです(メイソンて人がいいですね。possibleなんて答えて
いましたね。もっとも、ウンザリしていた可能性もありますが)から、有罪を確かにするには
少々不安かも。

ここで逆転劇です。
ディレクターのロイが良心の呵責に耐えられず、有罪を認めることになります。
ロイはプロジューサーのキースが雇ったということもあり、キースのいいなりだったのです。
勇気が要ったことと思います。
もっとも、ディレクターのロイについては、ジョーも最初から、キースの弱みはロイよね
と言っていましたので、この動きは計算ずみだった可能性もあります。
そういう意味では、検察側の予測したとおりに裁判は進行しています。
例によって、ここで、ロイを被告人ではなく証人として尋問するために手続きがあります
(もう、私たちも慣れましたね。陪審員をいったん退廷させるんでしたよね)。

キースにとっては、このロイの裏切り?は大打撃です。
仲間ですから、内情を一番よく知っていいるので、反対側にまわると一番怖い証人です。
これまでの証人の証言でショウコウがキレて爆発する可能性があることは明らかに
なったと思いますが、
「Gross Neeglegence」として刑事責任を問うには、
キースが、追い込まれるとショウコウがキレて、他の出演者を殺すあるいは重大な結果を
もたらすことになることを予見していたかその可能性があることを予見していたか
(foresawかforeseeable)でなければならないからです。
これはキースの当時のmindすなわち精神状態ですから、本人が否定するとなかなか
立証は難しいです。
ところが、ロイはキースの部下として終始行動を共にし、その指揮監督のもとで働いて
いたのですから、キースが何を考えていたかなど当然に知っているからです。

ロイの口から、テレビ局の局長、社長、シール、キース、ロイが、
ジョウコウの精神状態について議論していたことがわかりました。
専門家のシール先生はジョウコウのパーソナリティ(精神的に不安定、知性は
あまりないがプライドは高いなど)を考えると何が起こっても不思議ではないとの
意見をもっていたことや、出演の誰かを殺しかねないというような話も
出たというのです。ディードは「死」という言葉に即座に反応して真剣に議論したのか
と口を出します。「キースが局の弁護士に相談していた」ということでした。
これって重大証言です。冗談なら弁護士に相談しませんよね。
相談の結果は、報告書を見ていないのでわからないということでしたが、
その後、キースは「だれかが直接にしなければ刑事責任はないから大丈夫だよと」言っていた
ということでしたね。Gross Negligenceという言葉も出ています。
最初の争いの後、視聴率が上がっていたので、ショウコウをますます追い込むことにしたのです。
誰かの死が視聴率に影響すると考えたかについては「少しは」と言っていましたよね。

これで決まりかなという感じでしたが、「Manslaughter by Gross Neglegence」
についてどういうふうに考えるかべきかディードは具体的に説明していました。
被告人側の主張について、テレビだし危険は覚悟していたとか、ロイは刑を軽くして
もらいたいからで証言は信用できないとか危険は予測していなかったと纏めをしたうえで、
不注意があった場合にはManslaughterが成立すること、ただ不注意(lacking in care)
というのは刑事責任を生ずるほどに重大な(so serious)ものであること、
criminaly care の基準は陪審員が決めて判断しなければならないということでした。
視聴率をあげるためとか、4800万もの利益をあげているとか、精神的に不安定な青年が
意図的に煽られ追い込まれても、マラウイの家族のため生活費を稼ぐために、役を降りられ
ないなどの事情は、criminaly careの判断に大きく影響するように思いました。

本当の責任者は視聴率万能主義のテレビ局や制作会社にあるのではという
感じもしましたね。視聴率1800万を達成すればボーナスをもらえるという話に
なっていたようです。だからロイもキースも無理をしたのですが、それを仕掛けたのは
テレビ局であり、製作会社です。
だから、陪審長が意見として「corporate Manslaughter」を問うべきではないか
いうのは、最もだと思いました。
もちろん、キースは有罪です。
量刑は陪審員ではなくディードの仕事ですが、どうやら実刑を考えているようでしたね。

この事件はマスコミの注目を集め、記者たちの傍聴も多く、また禁止の写真撮影が
あったりしてディードは超多忙です。
しかし、こういう忙しい中にあっても、ディードはリストフィールドとハウトンとの癒着
を追及する手を緩めようとはしません。

つぎつぎと証拠がなくなっていくので、裁判ではなく議会(下院)の特別委員会で
取り上げてもらうことにします。
バロンが死んだことは大打撃です。
即、証拠につながるわけではありませんが、死の真相をつかもうとします。
そこで、顔をきかせて、ディードの法廷に出てくる検視官に再検視を頼みます。
権限はないのですが、ハイコートジャッジの肩書を乱用?します。
権限があるのは内務省ですが、ここの大臣はニールです。
騒ぎたてると隠ぺいしていると疑われるので、黙認するしかありません。
これはディードの読み通りになります。

何でディードがダンジョン事件を担当することになったのか、明らかになりますね。
ニールがイワンに「ディードはダンジョン事件でoccupy されているはずじゃなかった
のか」と文句をつけていましたね。
ディードはダンジョン事件があっても腐敗の追及程度はできるのです。でも、
事件に影響していることは事実です。裁判を延期して委員会や委員長の
キッドマンと打合せをしていますから。

さて、再検視でバロンの死が自殺でないことははっきりしましたね。
最初の検視は見逃したのかというディードの質問に対し、グレスマン検視官は
目的が違うからだと説明しています。
つまり、最初の検視は不審はないとの前提です。特に、情報もなかったので
アルコールが検出されても苦しみを和らげるためと考えるのです。
ところは、二回目のときはチャーリーの「アルコールは飲めない」との情報があるので
そこからスタートするわけです。
そうするとアルコールの前と後で水の種類が違うことが分かってきます。
まず、水道水を飲んで、溺死寸前だったのです。
だとするとテームズ川で溺死するなどおかしいわけで、誰かが運んで行ったことが
推測され、アルコールのことを考えると、自殺説はなくなるというわけです。
真実発見のためには、こういう細かなことがいかに重要かがわかると思います。

バロンの死亡を暴き始めたディードにニールは慌てます。
汚職だけでなく殺人の共犯にされたのではキャリアはすべて終リです。ニールは
リストフィールドとの関係を解消することを決意します。

ディードは時間調整をして委員会に出席し証言します。
あくまでも執念ですね。でもひとり変な委員がいます。ちょっと気になりましたね。
ニールは委員会で証言することになり、心配になりますが、
リストフィールドは手を回してあるので、大丈夫と言っていました。
どういうことでしょう。

いよいよニールの証言です。リストフィールドとの親しい関係を追及する委員長に
ニールは知らぬ存ぜぬです。
ディードはメンターでのつながりを委員長に教えるべくメモを差し入れます。
委員長が追及を始めたところで、例の男性委員が質問を引き取ります。
そして、メンターに大きな収益をもたらす活動をしたのですねなど
ニールを持ちあげる質問をします。
そのうえで、わいろをもらったかどうかをストレートに聞きます。
ニールはそんなことなど馬鹿なことという調子で否定します。
これで、実際は委員会は潰れたも同然です。

この男性委員(下院議員)がリストフィールドに買収されたのですね。

いつ、いかに質問をするかは、本当に決定的なのです。
流れが完全に変わってしまうからです。
ストレートな質問をすれば、このような結果になるのはわかっているのです。
それを知ったうえでの質問だったのです。
つまり、ニールにきっぱり否定する機会を与えてあげたのです。

ディードもキッドマン委員長も「してやられた」ということで、特にキッドマンはお冠
でしたね。
ですが、次はリストフィールドが呼ばれる番です。

リストフィールドの用心棒は堂々とディードの前に姿を出します。
ディードがミミを散歩させている時に近づいてきたのは、脅しのためなのです。

ディードの車になにやら細工をしているようです。
ディードを嘘の電話で呼び出します。ディードは急いでいたので公用車を使います。
用心棒の姿をみたジョーはディードに知らせるためディードの車で出かけます。
道路に点々とオイルのあとが・・・
ブレーキオイルに操作したのです。
裁判官の命をねらうなど、通常は考えられませんが、金がすべての実業家にとっては
ビジネスと一つなんでしょうか。こわいですね。

ジョーは大事故を起こします。ディードの身代わりになったのです。

またまたディードが狙われました。
お尻のポケットにいれた財布がディードの命を救いました。
用心棒はディードの一撃で死んでしまいました。

リストフィールドについては、用心棒の携帯電話に残った通話記録から
本人の否認にもかかわらず、犯罪の証明ができることになりました。

内務大臣のニールについては、また・・ということになりました。

ジョーも意識を取り戻したようです。

ディードが法廷侮辱罪を犯したマスコミ関係者にダンジョンのようなつまらないこと
や中身のないセレブを追っかけるのではなく、政府や官庁などもっ大事なことを真面目に
取れあげれば社会が良くなると説示していましたが、くたくたになったディードの本音でしょう。

ニールのいうことも当たらないわけではなかったと思いませんか?
今回は、ディードも珍しく、女性問題はなかったです。
さすがのディードも二つの事件で精いっぱいでした。

モンティも最近はディードの味方です。いろいろ気づかいをしています。
そんなモンティに大丈夫?と声をかけると、「もうLaw Lordはあきらめたから」
と元気がなさそうでした。
イアンたち役人や政治家たちとの闘いにうんざりしたのでしょうか?

ディードには諦めないで頑張ってほしいですね。

なお、日本語の訳はいつも内容も反映したもののようですが、今回の
「迎合の落とし穴」、なんかすっきりとわかっていい感じです。


判事ディード法の聖域 トレビア(女性弁護士のパンツは駄目か?)

2011年07月16日 | 判事ディード 法の聖域

判事ディード法の聖域の18話の放送がありました。
ジョーとジョージのパンツ(スラックス)姿が、ほんの一瞬ですが
あったことに気づきましたか。

ジョーはもともと、やや上着丈の長めのテーラードスーツですから
スカートをパンツに換えてもそれほど違和感はありませんでした。
ジョージの方はおシャレでドレスとか身体にぴったりのやや上着丈の短い
フェミニンなスーツです。上着をそのままに下だけ身体にぴったりの
パンツに代えただけの姿は、見られたものではありません。

もともと洋服をきる習慣がなかった日本では、今もドレスコードには
あまり関心がありません。

ところが、西欧では厳しいのです。

判事ディード、18話まできましたが、これまで、パンツ姿、
パンツスーツのジョーやジョージは一度もみたことはありませんでした。

つい最近、バリスターを辞めて小説家になった女性の対談記事を読んだことが
ありました(40歳前後の女性です)。
バリスターになったときに先輩女性バリスターから真っ先にうけた助言は
パンツは駄目、タイトスカートで女性らしく、靴はハイヒールでなくてはいけないと
注意されたということです。なお、ドレスにハイヒールはもちろんOKです。
特に文章化された決まりがあるわけではないければ、それが伝統であり、
判事や先輩バリスター(もちろん男性です)の受けがいいというわけです。
ところが、女性バリスターがパンツをはいてもいいという通達があったということ
でしたが、多分それが2004年ころだと思います(記憶がさだかではない)。
18話はイギリスでは2004年放映でしたから、多分、それを反映して
ちょっとだけパンツ姿を見せたのではと、私は考えています。

日本では、天海祐希さんの離婚弁護士や弁護士もののドラマでは
女優さんは高いハイヒールを履き、スーツをカッコ良く着こなしていますが、
それはドラマの中だけのこと、実際の女性弁護士は、ぺったんこの靴のことが
多いのです。当然、ぺったんこの靴にふさわしい洋服です。

判事ディードでは、ジョーもジョージも新人のチャーリーもハイヒールをカッコ良く
(ということは洋服もです)はきこなしていいますが、
それはドラマだからではなく、現実の世界のプロの女性バリスターとしての
基本的心構えの第一だということなのです。

タイトスカートにハイヒール、それで活発に動き回る、それができなきゃ、
パリスターとはいえないというのが、どうやらイギリスのようです。
それはそうと、チャーリーですが、黒のスーツでしたが、歩いた時にちらっと
ひざ上が見えるようなスリットのあるスカートでしたね。

なお、私ごと、洋服は若干いい加減になりつつありますが、靴はできるだけ
ヒールのあるもの、日本人にしてはまずまずの高さのものを履くように
意識しています。
(イギリスでは何とかいける、かな???)


判事ディード 法の聖域 第17話 焼却炉の煙

2011年07月11日 | 判事ディード 法の聖域

17話は焼却炉の煙(Separation of Powers)です。

前回の話を受けて、始まります。
被告人だったルーファス・バロンは、内務大臣のニール・ハウマンが雇用主のティム・
リストフィールドから、防衛契約を巡って賄賂を受け取ったと証言しました。
バロンは身を守るために、ニールとリストフィールドとの贈収賄をめぐる証拠を隠し持っています。

ディードは、16話でレコーダーとして裁判を担当したジョーが、命、あるいはマイケルの身の安全
を脅されたことに憤りを感じています。
司法に対する政治(実業家と結託して)の干渉は許されないという強い信念です。
ディードがニール・ハウマンを目の敵のようにするのは、
内務大臣というのは、イギリスでは司法制度の統括責任者だからです。
先妻のジョージの恋人だからというような個人的なことではありません。
内務大臣のニールがディードの辞任を望んでいるのは、正義感の強いディードに自らの
腐敗を暴かれるのを恐れているからです。
食うか食われるかの戦いです。

また、これも引き続きですが、廃棄物焼却場から排出されるダイオキシン被害を巡る事件ですが、
ニール・ハウマンはディードを担当からはずそうと画策しています。
こうなると、ディードは絶対に譲らない性格です。
そこで、ディードの女性問題のルーズさが利用されます。
直接の事件の当事者と関係を持ったことは、やはり、まずいです(15話)。
ハイコートジャジを本人の意思に反して辞めさせるには、両院の承認が必要ですが、
ハウトンはこの弾劾手続きを進めようとしています。

弾劾手続きは最後の手段ですから、モンティやニヴァン、元義父のサージョセフ・チャニング
などを通して圧力をかけていますが、何の役にも立ちません。
そこで、例によって、ディードを事件から外そうとします。
ディードが強引にかさっらてきたダイオキシン事件(カーディナル社)をまずニヴァンが引き取ろうと
しますが、ニヴァンのいうことすら聞きません。

さて、この事件ですが、原告の代理人はジョー、補佐のジュニアは娘のチャーリーです。
被告代理人はジョージです。父、娘、先妻、現恋人と身内ばかりですが、
これはドラマだからでしょう。
ジョーはニールと結婚かもという付き合いですから、当然ニールサイドの動きです。
罷免手続き中のジャジは裁判を担当する資格がないとか、準備に時間がかかるなど
引き延ばしをしようとしますが、上手くいきません。
モンティやサージョセフ・チャニングも政治サイドの強引なやり方に不快感を抱いて
いますから、女王が認めるまでは、ハイコードジャジだ、裁判を担当しても良いではないか
と主張するディードに特に反対しません。

この事件は、ごみ焼却場からでるダイオキシンで奇形の子供ヘンリーが生まれた(第1子は
流産、第2子は目が一つ、鼻がない、二分脊椎症という奇形)と主張して損害賠償請求
を求める事件です。
ダイオキシンは有毒物質であることはベトナム戦争などでわかっています。

しかし、こういう事件は因果関係の証明が難しいですし、また予見可能性があったかも
必要です。
こういう事件では専門家証言も必ず相反するものがあるので、決定的ではありません。
結局は、処理場側で「危険を知っていた」ことが証明されないと、なかなか因果関係は
認められません。
この裁判は難航します。

ニールはこのダイオキシン裁判の前にディードを引きずり降ろそうと急いでいます。
ディードは事件の悲惨さから、何とかしてあげたいという気持ちがあるのですが、
なかなか証拠が弱いです。
ディードとしては、最後までこの事件を見届けるためには、ニールにプレッシャーを
かける必要があります。
あまり仲の良くなかったジョセフですら、ニールの弱みを見つけるしかないと言います。
ジョーは、「政争の具」(political football)にしないでといいますが、なっていきます。

ニール・ハウマンの贈賄の証拠は、ルーファス・バロンの証言と彼の持つ書類ですが、
刑事事件が終わるやバロンは賄賂を贈ったという証言を拒否します。
ディードとしては、贈賄事件にするよとニールを脅すしかないわけです。
ダイオキシン事件の関係で、ディードはチャーリーに証拠の集め方についてサゼスチョンを
あたえていました。その過程の中で、カーディナル社のトンネル会社であるメンター(PR会社)の
存在がわかりました。そして、一時期、ニールとリストフィールドがメンターの
役員をしていたということがわかりました。ようやく、二人の接点を見つけたのです。
(これは取締役名簿で容易に証明できます)。
駆け出し弁護士のチャーリーにはこの事実の重要性はわかりませんが、大ベテランの
ジョーにはわかります。
ディードの窮地を救う可能性が出てきました。

横道にそれますが、ベテラン弁護士か新人弁護士かによって、同じ情報が生かされも
殺されることもあることがわかります。
それは、優秀な弁護士とそうでない弁護士とでも同じです。
こういうことはイギリスも日本も同じなんですね。

となると、ディードは生き残るためには、どうしてもバロンから事実を聞きだす必要が
ありますが、自らは動けません。チャーリーに頼みますが、チャーリーはそんなことしても
ママはニールと結婚するわよと、いうだけで、ことの重要性がかわりません。
しかし、法廷で母親のジョーがディードに冷たい言葉を吐いたことに憤りを感じたのでしょう、
バロンに会いに行きます。
絵のことで意気投合し、ヘンリーの写真をみて義憤を感じたのでしょう。
バロンはメンターのことやリストフィールドのことなどを話してくれることになりました。

バロンは本当は優しい、良い青年だったのですね。
ディードの部屋で供述します。速記官に速記させていましたので、正式なものですね。
バロンはこの供述では、リストフィールドの個人秘書をしていた。彼はTHEFTということで
告訴したが、実際は、くれたものだと言っています。その同じ口座に70万ドルが振り込まれ、
それは現金化したと述べていました。くれた理由については大富豪だというだけでした。
現金化したものについては賄賂として使ったと供述していました。
「370万ドルはくれた」という供述でしたが、これはそのまま信じていいいのかどうか
疑問と思います。
実際にドラマをみればわかりますが、一度、法務長官の指示で、警察が、ニールの件で
バロンに審問しています。そのときには、前の裁判では嘘を言って勝ったという証言だった
と法務長官はディードに報告しています。そのとき、偽証罪は重大な犯罪だが、そのことを
本人に警告したかとディードがきいていました。
ディードが作成した文書はニールを糾弾するために使われるのですし、要は70万ドルに
ついてわかれば良いわけですから、見えないところで、その程度の了解がなされていても
おかしくありません。(私の深読みの可能性もあります)

証拠のコピーなどについても貸金庫まで行きますが、分量が多いので、日記のみ持ち帰り、
契約書のコピーなどは後日にしますが、結局、リストフィールドに侵入され奪われてしまいます。

この供述書も法務長官に渡し、Judicial inquiryを要求します。法務長官はそのつもり
のようですが、イアンは、ニール・ハウトンは証拠がないといっているといって取り合おうと
しません。
イアンはわざわざディードの部屋により、議会の閉会前に罷免の手続きがされるよとか、
その前にカーディナル事件は終るかななどと挑発して帰ります。

ディードはバロンと善後策を話し合いますが、証拠はそこに全部置いてあったということで
お手上げです。折角、追い詰めたのですが。
するとバロンはメンター社へ入るアクセスコードがあるので、そこに侵入して証拠を探してみる
と言い出しましたが、当然ハイコートジャッジの立場では認めるわけにはいきません。

チャーリーとバロンの間には何か心が通うものがあったようです。
ふたりでメンター社まで出かけますが、バロンはチャーリーを残してひとり入っていきます。

ダイオキシン事件は引き続き進行していますが、決定的なものは出てきません。
ディードは、ヘンリーとも会います。そして何とかしてあげたいという思いを強くするのですが、
どうすることもできません。

ジョーにチェインバーに来てもらい、2要件とも証明できていない。法律ではどうすることも
できないと、心証を伝えます。
そして、ハウトンに対する証拠は全部なくなった(なお、字幕では反証となっていますが、
告発する側の証拠ですから本証です。evidence againstとなっているので、反と訳したのかも
しれませんが間違いです)、明日、議会でディードの罷免の動議が
審理される予定だ。もう方法はない、ともう涙が出そうな感じです。
ディードが弱気になると、ジョーが強気になります。ハウトンに対抗できるような裁判官は
あなた以外いない、法務長官と話をするとか兎に角何でもしなきゃとプッシュします。
ジョーの剣幕に押される形で、受話器を取り上げます。

ディードは何を武器に交渉するのか?
「弾劾手続きをストップしないと日記をマスコミに公表する」と、
「もともと、ハウトンに対する主張は根拠がないんだし」
などとやりとりがありますが、ディードも引き下がるわけにはいきません。
法務長官から「カーディナル?」と聞かれて
無言で首をかしげます。
法務長官は、自分一人では決められない、仲間と相談する、となりました。
「call me」と言い残してディードは弱々しく立ち去ります。

ハウトン、イアン、法務長官が協議しますが、それぞれに意見が違うようです。
結局、様子をみることになったようです。

さて、その間に、ダイオキシン事件の方で、大きな展開がありました。
メンターに侵入したバロンが証拠を見つけたようです。

動きがあわただしくなります。
ディードは法務長官に取引中止の電話をします。

法廷が開かれます。
決定的な証拠です。
ただ、問題は証拠として採用していいかどうかです。
ジョージは「too late」だから提出(submit)は許されないと議論しています。
ディードもイアンも「late evidence」と言っています。字幕では新証拠となっていますが、
間違いです。もちろん新しくわかった証拠であることは間違いありません。
しかし、ここで問題となっているのは、その証拠が「時機に遅れた」ものだからなのです。
「late evidence」というのは「too late evidence」のことです。
裁判というのはだらだら継続するわけにはいきません。証拠がでてくるつど提出を認めて
いたのでは、いつまでたっても終りません。
長引かせるつもりの当事者は、出し渋りをすることだってあるわけです。
証拠が出れば相手にも防御の時間を与える必要があるので、遅れるばかりです。
ですから、ある段階になれば、もはや証拠として提出を認めないというのが、これは
日本も同じですが、裁判の考え方です。
これを「時機の遅れた証拠」といい、提出が認められないのです。
厳格に考える国(裁判官)もあれば、そうでない国(裁判官)もあります。
日本はややルーズですが、やはり制度としてあります。
このダイオキシン事件では、ディードがジョーに事実上心証を漏らしているので、証拠調べの
手続きは終わっているものと思います。
判決まちの状態なのです。

ディードは、勝ち負けだけでなく、命や将来の種の問題にもかかわることなので、
真実発見のためには証拠として提出を認めると判断したのです。
でもイアンは「late evidennce」だから許されないと言っていましたね。

さて、新しく手に入れた証拠というのは、カーディナル社の依頼でメンターが行った調査の
報告です。
これによると、煙突に設計ミスがあるということです。
ただ、修理費は損害賠償費より高額になるというものです。
ですから危険だということがわかりながら、設計ミスをそのままにしたということなのです。
代表者の証言で、開業後1年の段階でもうすでにわかっていたというのです。
(これは危険の予見可能性にかかわる質問と思います)。
こういう重要な証拠ですし、それを被告は隠していたわけですから証拠として採用するのは
当然のように思います。
(イギリスはわかりませんが、日本では弁論の再開という制度があります。
おそらく、この報告書であれば、弁論が終結していても再開される可能性が
あるほど重要と思います。)
それに、この証拠はもともと相手である被告の文書です。
したがって、防御の必要もないわけです。

ニールはやはりディードを辞任に追い込みたいのですが、モンティなどのジャッジサイドは
急に態度を硬化し、ディードの辞任、弾劾手続きに反対するようになりました。
ニールの魂胆がわかったからでしょう。
ジャッジとしては、政治の都合で司法を掻きまわされるのは真っ平ということでしょう。
つまり、Separation of Power ということです。

ニールは心配でたまらないようですが、リストフィールドは、もう証拠はなくなったから
全然心配いらないと余裕です。
バロンを殺してしまったのです。証拠のコピーも倉庫に侵入して奪ってきました。
でもニール・ハウトンはそこまでは知らないので心配していいるのです。
会社の利益追求のためなら人殺しもありというのは本当に怖い世界です。

さて、結果です。
ダイオキシンが原因であることはわかったが、そのダイオキシンが処理場の排出に
よるものかについては、この報告書で、煙突の設計ミスが指摘されていることで
一目瞭然だと判断しました。
そして損害金ですが、
ヘンリーの介護費用として毎年10万ポンドを終身、
loss of home に対して50万ポンド
さらに懲罰的損害賠償として、奇形のある子供を出産したという悲惨な状況に対して
350万ポンドというものでした。
バロンの命と引き換えに所得した証拠が彼ら親子3人にに生きる希望をもたらして
くれることになったのです。

懲罰的損害賠償(exemplary damages)というのは、アメリカではしばしばあります。
ディードも施設の閉鎖や煙突の修理などに要する費用に比べれば、損害賠償など
大したことはないと、経済的理由を優先したと被告の悪性を厳しく非難しています。
そして、イギリスの法廷でも高額の懲罰的損害賠償はあり得るということを見せしめとして
課したものと思われます。
イギリスでも例外的ですが、懲罰的損害賠償(exemplary damages)は認められている
ようです。
大変参考になりました。

とりあえずは、ジャッジたちの団結で政治の介入、干渉を防ぐことができたようです。

なお、チャーリーですが、彼女はディードやジョーのタイプで、気持ちを大事にする
弁護士に育ちそうな予感です。
バロンにほんのりとした思いを抱いていたようです。
法律の世界の厳しい現実を嫌というほど知ったものと思います。
そういう辛い思いを何度も乗り越えて、良い弁護士になっていくものです。
いずれは、ディードやジョーの力強い味方として働くようになりそうです。
楽しみです。