猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

新型コロナ感染PCR検査キットを法人に楽天が売ることの問題点

2020-04-22 23:21:38 | 新型コロナウイルス

朝日新聞によると、「新型コロナウイルスの検査キットの販売を楽天が法人向けに始めた」ことを、4月22日、日本医師会が批判し、記者会見で「(検査は)あくまで医師が必要性を認めた場合であるべきだ」と言ったという。

この検査キットは、「ウイルスを増幅して新型コロナに特徴的な遺伝子配列」を検出するから、PCR検査そのものである。

これに類した、医師を経ない、PCR検査はアメリカで行われている。アメリカと日本との違いは、個人の意思によるか、法人の意思によるかの違いである。

日本医師会の「あくまで医師が必要性を認めた場合」というのは、論点がずれている。診断、治療を医師という専門家に委ねようという職業集団の利害を主張しているだけである。

PCR検査をするかしないかは個人の自由である。医師にかかるかどうかも、個人の自由である。自殺も、個人の自由である。個人の自由の制限は、他人の自由をどれだけ侵害するかによって議論されるべきことだ。

日本医師会は、非専門家が検体を適切にとることができるか、どうかの視点で、批判することができる。私も素人には難しいかもと思うが、検体をとること自体は、医師がする必要性はない。医師や看護士のなかに、点滴の針をうまくさせない人が、けっこういる。手先が器用で経験があればだれでも良い。

検体をとった後の「ウイルスを増幅して新型コロナに特徴的な遺伝子配列を検出する」ことは、基本的に機械がすることで、検査会社なら簡単にできることだ。そして、その陽性かの判定の信頼性は高い。陰性を陽性と判定することは、検査前の検体管理がいいかげんでなければ、原理的に起こりえない。

本当の問題は何か。

楽天は、いつまで待っても、出資した検査会社に、医療機関から検体の検査依頼が来ないから、法人にアプローチしたのだと思う。政府の新型コロナ対策のひずみが、いまだにPCR検査数が増加しないという最悪の状況を生んでいる。

楽天のビジネスモデルの問題は、「法人がPCR検査を個人に強要する」ということを前提にしていることだ。出勤するか、自宅待機するかの自由が従業員にないことだ。会社が出勤者を指名するための道具として、検査キットを使ってもらおうとしていることだ。

法人が個人に検査を強要することは人権侵害である。

しかも、PCR検査しても、その時点で新型コロナウイルスをもっているかいないかを判定しているだけで、陰性なら出勤できるというのでは、毎日検査しなければ、ならないことになる。通勤中や近所の買い物や、家でも家族から、いつなんどき、感染するか わからないからだ。

「症状はないが感染している人が、そうと気づかず、周囲に広げてしまうこともある。安心して働く手がかりになれば」という楽天のビジネス・モデルは破綻している。

PCR検査は、新型コロナの感染者が、発熱外来以外の医療機関に訪れないためだ。たとえば歯医者に新型コロナの感染者がそれと知らずに訪れば、歯医者も看護士も受け付けも感染してしまう。そして、別の患者にもうつしてしまう。

ヨーロッパやアメリカには感染して回復した者に、人との接触の多い職場に復帰して働いてもらおうという考えが提唱されている。このためには、新型コロナの免疫をもっているかどうかを判定する抗体検査の信頼性が問題となる。信頼できるとすれば、個人の意思が尊重されるなら、抗体検査が個人に働く自由を与えることになり、個人の権利の侵害にならない。