加藤陽子の『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(新潮文庫)に、1930年の産業別就業人口のうち、農業が46.8%だという数字がでてくる。これは、陸軍がどうして国民の心をつかんだかを説明する4章に出てくる。
1930年の日本人口は6,445万人であるから、大ざっぱに言えば、農民が3千万人いたことになる。2010年の日本人口は12,806万人で、農業従事者が260万人である。すると、日本の人口は2倍になり、農業従事者は10分の1になったのである。これは、農業の生産性が飛躍的に伸びたことを示すのではないか。
私は農業の経験がまったくない。しかし、農業従事者がマイノリティになって、自民党にコケにされているのではないか、と思う。
自民党や農林水産省は、儲かる農業のために、農業の大規模化を唱えるが、その意味がわからない。もしそれで生産性があがるなら、農業人口はさらに縮小し、政治的にはマイノリティになる。ますます、政治から無視される。
きのう、元農林水産相の吉川貴盛が大手鶏卵業者から現金500万円の賄賂を受け取ったとして、起訴された。業者が賄賂を贈った理由は、ストレスを減らす環境で家畜を飼育する「アニマルウェルフェア(動物福祉)」に基づく国際基準案が国内業者に不利にならないように、また、政府系の日本政策金融公庫から養鶏業界への融資条件の緩和するように、であるという。
私は、この要望が鶏卵業からすればあたりまえのように思える。いまの自民党は、マイノリティの鶏卵業者は票にならないから動かない。賄賂をもらって自民党政権はやっと動く。そのうちに、自民党は賄賂をもらっても動かなくなるのではないか、と危惧する。
さて、加藤陽子は『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』で、なぜ、戦前の陸軍が国民の心をつかんだかを次のように説明する。
〈 1929年から始まった世界恐慌をきっかけとした恐慌は日本にも波及し、その最も過酷な影響は農村に出たのです。そうしたとき、政友会も民政党も、農民の負債、借金に冷淡なのです。〉
〈このようなときに、「農山漁村の疲弊の救済はもっとも重要な政策」と断言してくれる集団が軍部だったのです。〉
この軍部とは、永田鉄山、東條英機を中心とする陸軍統制派のことである。永田鉄山は皇道派の中佐によって執務中に切り殺されたという。東条英機は、陸軍の暴走を抑えることができると昭和天皇に望まれて、1941年に総理大臣になった人で、その年の12月8日に米国に日本は戦争をしかける。東条は真珠湾奇襲攻撃計画を開戦の1週間前に知ったと、ウィキペデイアにある。
私は、農業の経験が一度もない都市に生まれ都市に住み続けている者だが、政治家が、票にならないからといって、マイノリティの農業従事者を切り捨てていくことには同意できない。自民党政権の主張、農業の大規模化、外国人低賃金労働者の導入、いずれにも賛成できない。
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