革命には不平不満がつきものである。しかし、強権的にでなくても、プロレタリア独裁に踏み切らなくても、何とかなるものだと思う。急ぐ必要はない。
民主党が10年前、2009年7月21日に政権をとった。メディアで叩かれ、党内の争いが生じ、自滅した。期待された分、不平不満が出るが、党内民主主義が機能していれば、何とかなるはずだった。鳩山由紀夫が粘れば良かっただけだ。菅直人、野田佳彦の党内の意思疎通の取り方に問題があったのではないか。
ドナルド・トランプ大統領は、無茶苦茶なことをし、無茶苦茶に言われるが、びくともしない。私が感心するのは、軍人を政権内部に引き込み、その軍人のアドバイスが不適切だと思うと、すぐに首にすることだ。軍人にふりまわされない。しかし、米国に内乱は起きないし、いつの間にか共和党をまとめあげている。
レーニンが他の社会主義政党、メンシェヴィキと社会革命党を追放したため、経済混乱のソフトな収拾を難しくしたと思う。農民と小商工業者と妥協した上で、闇屋・投機・収賄などを取り締まればよかった。日本も戦後、闇屋・投機・収賄が横行したが、2,3年で収まった。
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エーリッヒ・フロムは『自由であるということ――旧約聖書を読む』(河出書房新社)で、イスラエルの民のエジプト脱出を失敗した革命と見ている。イスラエルの民が奴隷状態のエジプトから自らの意志で脱出したというより、モーセが神ヤハウェの力でイスラエルの民を奴隷状態から引き出したという設定である。
旧約聖書の『出エジプト記』『民数記』『申命記』には、イスラエルの民の不平不満が書かれている。そして、モーセと神ヤハウェは、しだいに寛容性を失い、強権的になるのだ。
『出エジプト記』の15章と17章ではイスラエルの民はのどの渇きを訴える。17章3節で「なぜ、我々をエジプトから導き上ったのか。わたしも子供たちも、家畜までも渇きで殺すためなのか。」と言う。神ヤハウェは水を湧き出させ、民の渇きをいやす。
16章12節ではイスラエルの民は「我々はエジプトの国で、主の手にかかって、死んだ方がましだった。あのときは肉のたくさん入った鍋の前に座り、パンを腹いっぱい食べられたのに。あなたたちは我々をこの荒れ野に連れ出し、この全会衆を飢え死にさせようとしている」 と言う。それでも、ヤハウェはイスラエルの民を見捨てず、夕暮れにはウズラを、朝にマナ(小麦粉のようなもの)を与えた。しかし、イスラエルの民はモーセの指示を守らず、16章28節で、ヤハウェは「あなたたちは、いつまでわたしの戒めと教えを拒み続けて、守らないのか」と言う。
しかし、いつまでも、モーセや神ヤハウェは寛容ではなかった。
『民数記』11章ではイスラエルの民の不平不満をヤハウェが聞き、民を焼き殺そうとするが、モーセはとりなし、火はおさまる。モーセの権力を民が否定しはじめる。14章4節で、「さあ、一人の頭を立てて、エジプトへ帰ろう」と民は互いに言い合う。神ヤハウェはそれを聞いて怒り、「お前たちは死体となってこの荒れ野に倒れるであろう」と言う。
『出エジプト記』32章のホレブの山でモーセがヤハウェから十戒を受けとったとき、山のふもとで、イスラエルの民は異教の神の前で踊る。モーセはレビ族に命じ、イスラエルの民およそ3千人を殺す。
『民数記』16章2節では、集会の召集者である共同体の指導者250名がイスラエルの民を引き入れ、モーセに反逆する。これに対し、神ヤハウェは、首謀者3人とその家族を生きたまま、大地の裂け目に落とし、閉じ込める。そして、指導者250名を焼き殺す。
それでも、17章6節で、イスラエルの民全体は、、「あなたたちは神ヤハウェの民を殺してしまったではないか」とモーセを批判する。これを聞いた神ヤハウェは、疫病で民を罰し、1万4千7百人をさらに殺す。
それでも、20章4節で、イスラエルの民は、「なぜ、こんな荒れ野に神ヤハウェの会衆を引き入れたのです。我々と家畜をここで死なせるためですか」と抗議する。
さらに21章でも、神ヤハウェは抗議するイスラエルの民に炎の蛇を送り、多数の人々を殺す。ここでは人数が書かれていない。
モーセと神ヤハウェは奴隷の解放を掲げながら、非寛容な独裁者のなったというのが、『出エジプト記』『民数記』の物語である。それゆえ、エーリッヒ・フロムはこれを失敗した革命と呼ぶのである。
『創世記』『出エジプト記』『レビ記』『民数記』『申命記』は、捕囚のバビロンから故郷に帰還するユダヤ人の団結を維持するために書かれた偽書とも、現在、考えられている。『出エジプト記』『民数記』の生々しいイスラエルの民の抗議の声は、祭司に率いられて、捕囚のバビロンからイスラエルに帰還するユダヤ人のじっさいの声であったのではないか、と私は思っている。
革命は少数の指導者が力で民を率いて行うものではない。
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