けさ、TBSの『羽鳥慎一モーニングショー』で、5日前の菅義偉とジョー・バイデン氏の電話会談で、バイデンが「尖閣諸島は日米安保5条の適用範囲である」と言ったことが話題になっていた。番組全体としては、バイデンが日本びいきだから、そう言ったのだろうという雰囲気だったが、玉川徹だけが違っていた。尖閣列島に中国が上陸し米軍が動けば、米軍基地のある日本は、米中戦争に日本が巻き込まれると玉川は言った。
加藤陽子の『戦争まで』(朝日出版社)は、リットン報告書、三国軍事同盟交渉、日米交渉を史料からたどり、どのように、1941年12月8日、日米戦争に至ったかを明らかにしている。
当時、日本側は、とくに陸軍は、日中戦争ですでに疲弊しており、積極的に米国と戦争したくなかった。海軍も、予算をもらっている以上、戦争をしないとは正面をきって言えなかったが、アメリカとの国力の差から勝てるとは思わず、戦争を避けたかった。
米国も、ドイツと闘うイギリスを物資で支援しつづけるために、太平洋側で戦争を起こしたくなかった。
三国軍事同盟を急いだドイツは、イギリスを支援するアメリカの背後でアメリカを日本が脅かすことを期待していた。しかし、本当にことを起こすとは考えていなかった。
積極的に戦争する必要がないはずの状況で、日本側から開戦を宣告し、その直後にハワイの米軍基地、真珠湾を攻撃した。日本側からみれば油断していた米軍を襲ったわけである。日本のサムライ間の戦争は昔から奇襲攻撃が伝統である。
私は、昔、武士の末裔から、寝ている人の枕を蹴ってから殺せば、闇討ちでないと聞いている。サムライはクソなのだ。
加藤陽子の本は、「政府や軍部が誘導した世論」に押され、「勝てると思ってない戦争」に政府と軍部は踏み込んだ、と主張しているように私には思える。
トランプ大統領は、これまで、中国の悪口をアメリカの国民に言いまくってきた。アメリカの労働者が職を失うのは、中国人が安い賃金で働くからだ。中国の先端科学技術は米国から盗んだものだ。新型コロナ感染の大流行でさえ、情報を正しく伝えなかった中国のせいだ。
今回の大統領選で、トランプは負けたといえども、前回より得票数を伸ばしているのだ。したがって、現在、中国憎しというアメリカ人が大量にいると考えるべきだろう。
そこで、ジョー・バイデンが中国をどう考えているかであるが、今回の菅との電話会談で明らかになったのは、中国を敵視していることだ。
米国を統治する人々は、お金儲けはよいことだ、と考える。だから、反共産主義、反社会主義である。加藤陽子の本が述べるように、戦前は、米国と日本とは、ソ連と中国共産とが共同の敵だった。それがゆえに、日米交渉や日独交渉が成立した。戦後も、岸信介、安倍晋三が米国議会でスピーチして拍手を受けるのは、反共を訴えるときである。
米軍は中国の南進を警戒している。それが故に、沖縄の米軍基地が重要であり、尖閣列島が日本領であることが重要なのである。
トランプは中国に経済戦争をしかけた。40年前の日米経済戦争との違いは、アメリカの同盟国にもその経済戦争の参加を呼び掛けていることだ。この経済戦争は、軍事的戦争の一歩手前である。
したがって、バイデンが「尖閣諸島は日米安保5条の適用範囲である」と言ったことを、日本びいきな発言と喜んではいけない。米中戦争を起こしてもいけないし、米中戦争に巻き込まれてもいけない。メディアが、政府の中国脅威説に加担してもいけない。
戦争は国民が起こすのではなく、政府が誘導した世論に押されて政府が戦争を起こすのである。
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