2021年の衆院選で岸田文雄の率いる自民党は公約の2番目に「『新しい資本主義』で分厚い中間層を再構築する。『全世代の安心感』が日本の活力に」を掲げた。
2024年の衆院選では石破茂の率いる自民党は、「分厚い中間層を再構築」を引っ込めた。
代わりに、野田佳彦の率いる立憲民主党が「分厚い中間層の復活、家計・賃上げ支援」を掲げた。
岸田や野田のもっている危機感「中間層の没落」を、なぜか、石破茂は共有できないようである。
2021年の衆院選で、岸田文雄は「分厚い中間層を再構築」するために、つぎの政策を公約した。
- 『分配』政策で、『分厚い中間層』を再構築する。
- 企業が長期的な目線に立ち、『株主』のみならず、『従業員』『消費者』『取引先』『社会』にも配慮した経営ができるよう、環境整備を進めます。このため、コーポレート・ガバナンスや、企業開示制度のあり方を検討します。
- 『労働分配率の向上』に向けて、賃上げに積極的な企業への税制支援を行います。
- 『四半期開示』を見直し、長期的な研究開発や人材投資を促進します。
- 下請取引に対する監督体制を強化します。
- 高齢者、女性、障害者を含め、誰もが自らが望む形で働ける社会を目指します。
- 働き方に中立的な、充実したセーフティネットを整備していくため、働く方が誰でも加入できる『勤労社会保険』の実現に向けて取り組みます。
- 障害のある方の就労機会を増やすために、職業紹介の推進とともに、コロナ禍で赤字になっている『就労系障害福祉事業所』への支援を行います。
「新しい資本主義」とは何であるか、はっきりしないが、岸田は、現在の新自由主義(経済自由主義)の弊害をなんとかしないといけない、という意識をもっていた。残念ながら、現在の自民党議員は岸田の問題意識を共有していない。岸田の掲げる政策は実行されなかった。
企業が「『株主』のみならず、『従業員』『消費者』『取引先』『社会』にも配慮した経営」行うためには、弱者である従業員・消費者・サプライヤーが企業と対等にまみえるための法的整備が制度が必要である。コーポレート・ガバナンスや企業開示制度だけでは不十分である。経営者が被雇用者を解雇しやすくする政策は、まったく、「新資本主義」に反する。
「高齢者、女性、障害者を含め、誰もが自らが望む形で働ける社会を目指す」に賛成であるが、企業の経営に口出すのが、ファンドを中心とする株主だけでは、この目標は実現不可能である。
1930年代にアメリカで行われたニューディールでは、ローズヴェルト政権は「労働者には団結権や団体交渉権と言った権利を認め」たと、岡山裕の『アメリカの政党政治』(中公新書)にある。被雇用者の団結権・交渉権を強めなければならない。
また、岸田の公約では、農林漁業や小売業に言及していないが、戦後の日本経済復興期にこれらの自営業が社会の安定に寄与していた。これらの自営業が崩壊している。
そのかわりに、現在、非正規雇用者が事業主であるかのように扱われ、法的な保護を受けていない。けさの闇バイトで強盗死致を行った犯人はアルバイトなのに事業主として税金滞納に追い込まれていた。
いま、株式市場はファンドが躍動するギャンブルの場となっている。ニューディールでは、いかに金融界からフェアな企業活動を守るかの策が取られた。日本でも、小規模な共同経営、生活協同組合、集団農業をいかに守り育てるかが、これから必要となると考える。すなわち、雇用・被雇用の上下関係を如何に取っ払うかである。
現在の自民党は、如何に選挙の票を集めるかに、四苦八苦して、バラマキを行っている。政府の赤字を増やすだけである。資本主義が行きづまっていると岸田が言ったことを忘れている。「国家」資本主義でなく、多数の個人の協同からなる民主的経営で、経済問題が解決されることを私は願う。
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