けさの朝日新聞によると、2日前の1月1日に欧州委員会(EU Comission)が原子力と天然ガスを環境にやさしいとする草案を発表した。具体的には、原子力と天然ガスをEU "sustainable finance taxonomy"に加えるというものである。これは、単なる言葉としての分類ではなく、これによって、EUにおける原発や天然ガス発電への投資を、太陽光発電や風力発電と同じく優遇するという草案である。
草案は、この追加を脱炭素に向けた移行措置とするが、2045年まで原発の新設に投資を優遇するいう。事実上、移行措置でない。
とんでもないことだ。ドイツ、オーストリア、スペインの各政府が反対を表明している。グリーンピースなどの環境団体も反対を表明している。
私はこの数年の脱炭素の動きは気違いじみたところがあり、何かの陰謀ではないかと、気になっていた。自動車産業の既存の勢力図を塗りかえるだけでなく、フランスの原発産業(国有)の保護や、石油・天然ガスの高騰を防ぎロシアの影響力を抑え込むなどの政治的意図をもって、二酸化炭素排出の急激な削減と原発再評価の動きがでてきたのだと思う。
大気中の二酸化炭素は、現在、1700年代の濃度の2倍にまだ達していない。二酸化炭素は植物の生育上欠かせないものである。
いっぽう、原子力(核分裂連鎖反応)の利用で、大気中のトリチウム濃度は一時的に1940年の100倍に達した。現在は、核実験は地下で行い、原発のトリチウムは海に流しており、大気中の濃度は20倍程度である。原子力を利用する限り、核分裂連鎖反応で放射性物質が副産物として作られる。放射性物質はごく少量でも、生物の遺伝子に確率的にダメージを与える。
いわゆる原発の安全性は、核分裂の際、放射される中性子線が遮蔽されているということをいうのであり、副産物の放射性物質については打つ手がないまま、この50年、原発が運用されている。それに加え、スリーマイル島原発重大事故やチェルノブイリ原発重大事故は原発の点検時における人為的ミスで起きている。福島第1原発重大事故では、設計のミス、施工のミスが見いだされ、それに加えて、緊急事態の訓練が事前になかったことも指摘されている。
安全性を無視し、経済的政治的理由を優先して、今回の欧州委員会から草案がでてきた。日本で福島第1原発重大事故が風化しつつあるなか、これを他山の石とせず、日本の各政党が、どのような見解をだすかが、いま問われていると私は思う。
日本の政府組織では、原発を小型化すればよいとか、高速炉を作ればよいとか、核融合炉を開発すれば、良いとか言っているようだが、これは全部誤りである。
放射性核廃棄物は、発生する電力に比例して原発からでるのだから、1つ1つを小型化しても、電力源として頼る限り、放射性核廃棄物は大量に作られる続ける。
高速炉は各国で開発に失敗しているが、放射性核廃棄物を減らすための効果は全く無く、日本政府がプルトニウムをため込む理由として掲げているだけで、いずれ、アメリカをはじめとする欧米各国に批判されるだろう。
核融合炉はいまのところ全く実現の見込みがないから批判されないだけで、原発よりも制御しがたいものになるだろう。
二酸化炭素は有害で、放射性核廃棄物は有害でないという見解は、まったく誤っている。
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