9月27日に安倍晋三の国葬が閣議で決まっているが、メディア各社のどの調査でも、「国葬」反対が賛成をうわまっている。
安倍は「国家主義」の論客あったが、日本国への貢献は何であったか、疑わしい。現在の円安物価高を招いたのは、アベノミクスのせいであるし、アメリカやロシアに土下座外交をおこなったが何か見返りがあったわけではない。
数日前、ひと昔前の論客の大前研一は、安倍が非業の死を遂げたからしか、「国葬」にする理由がない、と言っている。
安倍の確実な業績は、選挙に強くて、民主党から自民党に政権を取り戻したこと、8年近くの長期政権を築いたことに過ぎない。これらすべては、自民党にとっての良いことであって、他の政党からみれば悪いことである。それなら、「自民党葬」で良いはずである。
しかも、今は、安倍が、自民党の「統一教会」との癒着を深めた首謀者だったということが、明らかになりつつある。安倍は、自民党議員に統一教会の選挙支援を受けるよう勧めたり、参院選では、統一教会からの票の割り振りを決めたりしていた。
図書館の本棚で姉崎明二の『検証 安倍イズム』(岩波新書、2015年)という本を見つけた。副題は「胎動する新国家主義」である。姉崎の論旨は、安倍晋三は保守主義者ではなく、国家が社会のすべての領域に力をふるう「新国家主義」者だという。
保守主義者でないという証拠の1つに、政策「女性の活躍」を掲げている。安倍は、「女性の就労を抑制する配偶者控除」の見直しを強く主張したという。これに対し、自民党内の保守派が、「女性の役割は母や主婦」という日本の伝統的家族観を壊すものだ、と強く反対し、見直しが実現しなかったという。
姉崎は、安倍が祖父の岸信介の理念を引き継いでいるという。岸信介は革新右翼の北一輝に傾倒していた。北一輝は、憲法を停止して、天皇の権威のもとに、国家の力で貧富の差をなくそうと考えた。北一輝は、クーデター2.26事件の理論的指導者として、1937年に死刑となっている。岸は、北の思想を引き継ぎ、「満州国」を経営し、ついで、第2次世界大戦中の日本国内の統制経済を商工大臣として指揮している。
安倍は、安全保障・外交政策などでは、戦前の「富国強兵」「尊王攘夷」を引き継ぎ、国家の権力を強化している。戦前から岸が天皇を軽んじていたことを引き継ぎ、「尊王」のかわりに、首相の権力を強化しようとしていた。選挙で勝つのは政党であるが、政党が政策を決めるのではなく、政党の総裁でもある首相が自分の顧問団の助けですべて政策を決めるという形を追い求めていたという。
まさに、ヒトラーが安倍の理想だったのである。自民党党内の抵抗でそこまで行き着かず、統一教会の癒着が原因で、安倍は非業の死を遂げた。しかし、自分の派閥、清和会を自民党内最大派閥に仕上げている。
日本には非業の死を遂げたものを神に祭り上げ、祟りを避ける風習が昔からあった。岸田文雄が安倍を「国葬」にしたのは、清和会による安倍の祟りを恐れてと思われる。しかし、「国葬」という手で清和会と妥協をはかるのではなく、正面をきって清和会や菅義偉と争うべきである。
そうでないと、国家権力の拡大という安倍晋三が残した「安倍イズム」が進行し、日本の未来に祟りをおよぼすであろう。「国葬」を取りやめることが、革新右翼への論戦の始まりとなる。
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