私の所に話にくる青年が、大学を受験すると言ったので、彼のために、英単語から動詞を抜き出し、基本単語集を作成した。そのとき、日本語の「許す」にあたる英単語が多いことに気づいた。
“allow”
“permit”
“excuse”
“pardon”
“forgive”
“tolerate”
私は、違う単語は違う意味だと思う立場なので、その違いを考えてみた。
“allow”と“permit”とは、禁止されていることがあって、それを破ることの許可を得ることだ。この2つの違いは、“allow”は個人的な許可を得る場合を含むが、“permit”は公的な許可に限られる。
“excuse”と“pardon”とは、相手に許可を求めているが、大目にみてねという気持ちで、そんな禁止するほどのことではない、と行為の主体は思っている。“pardon”はより丁寧な言い方になる。
“forgive”は、犯した行為を罰しないことをいう。犯した行為をしても良いと認めたわけではないので、再びしてはならない。
“tolerate”は、英英辞典では、allow or endure without protest とある。行為を好ましいと思わないが、我慢をして、とがめないという意味になる。
岩波の国語辞書を開くと、「ゆるす」に①から④までの意味が書かれ、①が次の4つにさらに分かれている。
(ア)願いなどを聞き入れる。“excuse”と“pardon”とに近い。
(イ)罪・とが・負担を免ずる。“forgive”に近い。
(ウ)禁を解く。“allow”と“permit”とに近い。
(エ)体を相手に任す。これは性的な行為に同意することで、上記の英単語には該当しない。
“tolerate”の用法は岩波の辞書に見当たらない。
森本あんりは『不寛容論』を書いたが、この「寛容」は“tolerate”の名詞形だと思う。「寛容」は我慢をしているのであって、我慢の限界に達すれば、衝突が始まる。
宇野重規は『トクヴィル 平等と不平等の理論家』で、「リベラル」の原義を「寛容」としていたが、「我慢している」というニュアンスはそこにあったのだろうか。フランス語の辞書を出して調べると、「我慢している」というニュアンスはない。気前が良い、鷹揚なというニュアンスである。
日本語の「許す」という概念は非常にいい加減なものだと思う。日韓基本条約を結んだから過去の行為は「許される」というのは甘い。条約は国と国の取引であるから、国民の一人ひとりが許したわけではない。国民が国に縛られるわけではない。また、我慢しているのかもしれない。
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