4月3日のAFPニュースがまとめた、いまだにわからない5つの新型コロナ感染症の謎の1つは、「感染者の総数は何人か?」である。
この問いは「集団免疫」とも関係している。国民の何パーセントが感染しているか、ということは、「集団免疫」ができて、いつ感染の流行が終わるか、とも関係してくる。
イギリスのジョンソン首相が新型コロナに感染したことで、どうも、「集団免疫」ができるのは、遠い先のことで、とにかく、個々人が「社会的距離(social distance)」を保って、感染の広がるのを遅らせるしかない、とヨーロッパで言われ始めた。
きょう、スーパーに行ってみると、レジがまったく混んでいなく、待ちの人が間隔1.5メートルを守っている。また、レジの店員と客の間に透明フィルムが貼られていた。
また、マクドナルドでも、待ち行列は間隔1.5メートルを守っていた。
私の働いている放デイサービスでも、透明版を挟んで体面指導をしている。
メルケル首相は、治療薬が開発されなければ国民の60%が感染しないと新型コロナの流行が止まらない、言った。いま、できることは、「社会的距離」を保ち、感染の広がるのを遅らせ、医療システムの崩壊を防ぐことだと言った。
「集団免疫」は、なかなかやってこない。
怖がることが今必要なのだ。
怖がって、できることをして、感染の広がりを遅らすのが、正しいのだ。
4月13日のWHO報告にもとづき、国民の感染率、感染者中の致死率、1日当たりの感染者増加率(7日間平均)を、感染率の高い順に書き抜くと次のようになる。
ルクセンブルグ 0.53% 2.0% 2.1%
アイスランド 0.48% 0.5% 1.2%
スペイン 0.36% 10.2% 3.0%
スイス 0.29% 3.4% 2.3%
ベルギー 0.26% 12.1% 5.2%
イタリア 0.26% 12.7% 2.4%
アイルランド 0.19% 3.5% 8.8%
ポルトガル 0.16% 3.0% 5.0%
この後にやっとアメリカが出てくる。
合衆国 0.16% 3.9% 6.6%
これらと比較するために、日本とイギリスとをドイツをかかげる。
日本 0.006% 1.4% 9.3%
イギリス 0.13% 12.6% 7.2%
ドイツ 0.15% 2.3% 3.1%
WHOでは感染者数を “the number of the confirmed cases”と記している。これは、PCR検査をして感染が確定した数だからである。ほんとうは、検査されていない感染者がもっと多くいるはずである。欧米の場合は、感染者数は確定数の10倍ぐらいだろう。
日本の確定した感染者数は少なすぎる。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広が、厚労省の報告数の30倍から100倍だろうと言ったが、その通りだろうと思う。多分、100倍に近いと思う。
さいたま市の保健所の関係者が、自宅待機の感染者が増えると困るから、PCR検査数を抑えていた、と言って大騒ぎになった。
致死率の差は、1つは医療システム崩壊で死者がふえてる場合と、もう1つは検査数を急に増やしはじめたので死者が少なく見える場合がある。日本は後者にあたり、これから、死亡率が増え始めるだろう。
治療薬がなくても、医療システムが機能しているときの、致死率も、新型コロナの謎の1つである。
医療システム崩壊とは、単に、新型コロナの感染者に対する医療だけでなく、他の病気の診療も含む。新型コロナ感染を検査しないと、病院にかつぎこまれた病人が感染者であると、院内感染が発生する。4月に入って、各地で院内集団感染が発生している。
また、保健所も崩壊しつつある。保健所の仕事を軽減しないといけない。電話相談は外部のコールセンターに任せば良い。また、PCR検査をするか否かの判断は市中の医師に任せれば良い。医師から依頼を受けた検体採取側が検査の優先順位を決めれば良い。
イギリスでは、新型コロナ感染に対する医療従事者の個人防具(PPE)が不足しており、政府がその増産を要請した、とイギリスのテレビ、BBCが報道した。PPEとは、医療用マスク( N95または FFP2標準かそれに相当するもの)、エプロン、手袋、ゴーグル、フェイスシールド、ガウンなどである。
日本でも同じことが起きている、と思う。新型コロナの緊急事態宣言の目的は、必要な物資が行き届くことと、社会インフラを維持することで、特別措置法に、そのための罰則がある。
さらに、問題なのは、日本政府が新型コロナ緊急事態宣言を、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都道府県に限定したことだ。そのために、千葉から茨城にパチンコに出かけることが起きた。
感染率は、この7都道府県では、最高が東京の0.015%、最低が千葉の0.005%だが、7都道府県以外でも、北海道の0.005%、京都府の0.007%、石川の0.01%、岐阜の0.005%、福井の0.011%、高知の0.009%が0.005%以上である。これは、PCR検査での確定患者数にもとづいているから、30倍から100倍すれば、実際の感染率であろう。1000人いれば数人は感染者と思ってよい。都市部ではもっと高いだろう。体面で働かなければならない人にとって、これは大きなリスクだ。
緊急事態宣言は全国で良かったのではないか。
共産党参院議員の小池晃が、きのうのBS TBS『報道1930』で、クラスター班の西浦博教授の「80%接触を削減すれば、劇的に感染者の増加が抑えられる」という疫学のモデル式とパラメータとその根拠を明示すべきだと言っていたが、私もそう思う。
ヨーロッパのどの国も、ロックダウン(封鎖)をしても、感染者数は順調に増加している。また、日本はPCR検査が抑制されていて、感染者の実数がわからない。希望的観測の言葉だけが独り歩きして、5月6日の自粛明けに、感染流行がリバウンドする恐れを私はいだく。
疫学の数値モデルは入力データの信頼性が乏しく、予測は職人技のように思える。
怖がって、何をなすべきかは、「社会的距離」以外は、個人の力を越えており、社会的な課題である。事実にもとづき、適切な政治力が発揮されないといけない。役人はパニックにおちいっており、政治家や言論者の冷静な判断力と行動力が求められる。
[追記]
国会で給付が論じられているが、経済対策なら自治体に負担のかからない期限限定の消費税セロで行うべきで、それ以外は、休業要請にもとづく、休業の対価という形にすべきだ。また、あべのマスクより、医療崩壊を防ぐために、お金を使うべきだ。
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