きょう5月21日の朝日新聞3面の記事、「福島の復興 見栄え優先」「首相、防護服着ず廃炉視察」「統計から外される避難者」は、政府が事実を偽り、原発事故の問題が解決したかのような印象を与えようとしていることを告発したものである。
安倍晋三首相が、4月14日に、防護服とマスクを着けず、スーツ姿で車から福島第一原発に降り立った姿を、テレビが流した。この視察用高台の放射線量は、毎時100マイクロシーベルト超であるという。
この高台に1年間いれば、8,760ミリシーベルの放射線を浴びてしまう。原発事故のときの住民避難の目安は、年間20ミリシーベルトであった。また、緊急時特例として、作業員に課した限度は、年間100ミリシーベルである。この特例の87.6倍の放射線を浴びてしまうわけだ。
だから、安倍首相は6分ほどしか、この高台にいなかった。この高台には、誰も住むことができないし、作業は短時間で済ますしかないのに、安倍首相は防護服もマスクもいらない、と主張した。印象操作にすぎない。
原発1号機から3号機の周辺では、この高台がもっとも放射線量が少なく、他はもっと多い。いまなお、原子炉はメルトダウンしたままの状態である。
2013年に東京オリンピックの招致のために、安倍首相は「汚染水は管理下にある」と言ったが、汚染水タンクは増え続けている。そして、汚染水を海に放出するしかない、と東電の担当者は言いつづけている。汚染水が増えない根本策をいまだに取られていない。
さらに、避難者の数を減らすため、安全基準を緩め、避難解除をおこなっている。そして、避難民が、避難先で自宅を買うと、避難民からはずしている。
事実を偽って、福島が安全になったと印象操作をするのは、何のためか。疑うに、原発の全国的再稼働、福島の食品の販売、補償の打ち切り、などが考えられる。印象操作で事実を偽って、これらの政治的決定をなすのは、道義に反するのではないか。事実を明らかにして、国民の判断を仰ぐべきではないか。
福島第一原発事故を風化させることは、原発事故の被害者の見殺しであり、また、原発事故の教訓を生かさないことになる。
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