いま、トンガの1月15日海底火山噴火による津波の警告を、日本の気象庁が出せなかったことの反省が、なぜか、うやむやになっている。
気象庁は、当初、気象庁は「被害の心配なし」と発表したのに、午前0時ちょっと前、日本に1メートルの津波がきた。津波が到達してから、気象庁は、明け方まで、津波警報や津波注意報を出しつづけ、アイパッドには明け方まで、警報、注意報がなりひびいた。(もっとも、これは私の妻はアイパッドの切り方を知らないだけであるが)。
とにかく、トンガの10メートル以上の津波の被害の大きさもさることながら、日本にも、1メートル前後の津波が漁業関係者を中心に大きな被害をもたらした。
いっぽう、ハワイにある太平洋津波警報センター(PTWC)は、火山噴火から一貫して「津波」の警戒情報を出し続け、太平洋の島々や沿岸に注意喚起を行った。
気象庁地震津波監視課の調査官は、つぎのように、事情を説明した。
《事前に注意報を出せなかったのは、注意報を出す根拠が何もなかったからです。津波注意報を出せば自治体が動くし、漁業関係者もいろいろな対応をします。でも、そのとき、『津波注意報を出した根拠は何ですか?』と問われたら、答えようがありません。》
もっともなようで、もっともでない、おかしい説明である。「津波注意報」がはずれたら、責任が問われるから出さなかったというのである。ということは、津波がきても、事前に注意報を出さなかった責任が問われないということである。
これは、何を言っているのか、というと、マニュアルに従ったり、コンピューターのソフトに従ったりしている限り、津波が来る前に警告を出さなくても、良いと言っているのである。
気象庁の観測衛星「ひまわり」には、トンガの海底火山の噴火が映っていた。観測衛星の高度は約36,000km、地球の半径は約6,400km、非常に高いところが直径300km以上の噴煙を観測していたのである。夕方の映像であるから、噴火の影が映っている。影から、噴火の高さが推定できる。噴火の噴煙は2段重ねになっている。中央の円がが垂直な噴火、そして、水平方向に広がるのは爆風。また、観測衛星は16バンドの観測スペクトルがあるから、岩石を噴き上げていることぐらいは、わかっているはずだ。時間変化からも爆風の速さがわかる。
とてつもない規模の噴火にもかかわらず、気象庁は、当初、「津波被害の心配なし」と発表したのである。私は常識がないとしか言えない。
たしかに、地震のマグニチュードのように、火山の噴火の規模を示す指標がない。したがって、噴火が起こした津波のデータベースが整理されていないのであろう。しかし、これまでも、噴火が起こした津波の先例はある。
気象庁は、「今回、特異な潮位変動をとっさに伝える手法がなく、今後より良い伝え方を検討する」とか「きちんとした数値モデルに基づいた計算結果なしには、注意報や警報を出すことはできない。その数値モデルをつくろうにも、データを集められるような事例がない」と言い訳ばかりしないで、マニュアル依存、ソフト依存に陥らず、注意報、警報は人間が出しているのだ、という自覚を持ってほしい。
誰かさんが作った津波数値モデルやコンピューターに頼りすぎるのは、科学ではない。
[補遺]
ウィキペディアによれば、火山噴火の規模を示す指数(Volcanic Explosivity Index)があるという。噴出物の量を指数とするという。歴史上の大噴火は、地上に残された火山灰でしか測れないから、しかたがないのだろう。トンガの海底火山噴火のVEIはまだ報道されていないが、宇宙からの映像からは、最高位の指数になるだろう。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます