猫じじいのブログ

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デブリ取り出しはポーズなのか、NHKスペシャル『廃炉への道』

2021-04-08 22:50:09 | 原発を考える


きょうのお昼に、午後1:00から1:50に、BS1でNHKスペシャル『廃炉への道 全記録 file.1』を放映していた。事故を起こした福島第1原発の廃炉がいかに困難なことかのシリーズ1回目である。この中で、政府が本気でデブリを取り出そうとしているか、を疑っている場面があった。

デブリとは原発事故で熔け落ちた核燃料が固まったものである。核燃料ウランは重金属であるから、熔け落ちて固まったものは固い金属状のものである。デブリはウランだけでなく、核分裂連鎖反応の結果できたプルトニウム、放射性物質が含まれている。

今回のNHKスペシャルでは、米国のスリーマイル島原発事故でデブリを取り出したプロジェクト担当者にインタビューをしている。彼は、デブリ取り出しも困難であったが、そのデブリをどこに保管するかが、もっと困難であったと言う。デブリは取り出しは単に技術的な問題であるが、デブリをどこに保管するかは、政治的な問題である。結局、アメリカの西の端のアイダホ州の国立研究所に保管することになったが、アイダホ州の同意だけでなく、スリーマイル島のペンシルベニア州からそこに運ぶために、通過するすべての州の同意を取らざるをえなかった。プロジェクト担当者は、どこに保管するかが決まっていない段階で、デブリを取り出しが先行することは、あり得ないとコメントした。

日本政府にとっては、デブリを取り出して新たな政治的問題が発生するより、とてつもない困難な廃炉作業を一所懸命やっているというポーズを続けているほうが、良いのだ。東芝や東電にとっても、悪い話ではない。

だから、このNHKスペシャルを見て驚いたのである。NHKにこのような鋭い批判を放映する勇気があるのだ。

ところで、核分裂反応でできた放射性物質は中性子線をださない。中性子線は核分裂の際に放出される。現在、デブリを水で冷却すると、水の水素原子が中性子線を吸いとって、三重水素に変換される。これを、トリチウム水と呼んでいる。デブリがなぜいまだに中性子線をだすのか。この説明がいまだになされていない。

トリチウム水が湧き出るのは、事故前の原子炉からのトリチウム水があたりの地中にしみ込んでいたからという説を政府関係者が流すが、地中にしみ込んだトリチウム水が10年間もデブリのまわりにしみ出すなんてありえない。それも希釈しなければいけないような高濃度のトリチウム水である。

そのなかで、きのう、菅義偉は全国漁業協同組合連合会長に、福島第1原発のトリチウム水を海に放出すると通告した。菅は、魚業組合の意見を聞いたのではなく、彼らに通告したのである。漁業組合は、もちろん、放出に反対である。

いま、福島第1原発のまわりには人が住んでいない。用地買収をして、タンクを増設することもできる。なぜ、いま、菅政権は、トリチウム水の海洋放出を強行する必要があるのか。

原発研究者の小出裕章は、六ヶ所村の再処理工場では年間800トンの使用済み燃料を処理する計画で、「もし福島第1原発のトリチウムを含む処理水をタンクに貯蔵し続けることを容認したら、六ヶ所村での海洋放出もできなくなるばかりか、福島の比にならない数のタンクを用意しなければならず、再処理工場の稼働自体がままならなくなる」からだと言う。

私は、海洋放出ではなく、地中深く、例えば、1000メートルの深さにトリチウム水を放出すれば良いと思う。海洋までにしみ出すに時間がかかるだろうし、海洋の深部にしみ出すことになる。

また、小出裕章は、 福島第1原発のデブリ取り出しは結局できずに、コンクリートで原子炉建屋をおおう石棺にならざるをえないだろうと予測する。私もそう思う。巨大な石棺が福島第1原発をおおい、21世紀の原発事故の遺構(負の記念碑)となり、全人類に対する安易な原発利用を戒める警告となるのは当然だと思う。


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