HNK大河ドラマ「篤姫」は、あいかわらず高視聴率を保っています。
「桜田門外の変」(8月10日放送)は五輪と重なったにもかかわらず最高の26・4%をマークしました。
安政の大獄で、多くの人物を処刑した大老井伊直弼と、天璋院となった篤姫が、
茶室で語り合う場面があります。
井伊の非道なやり方に、嫌悪感を抱く篤姫ですが、
井伊の立てた茶を「これほどまでにおいしいお茶は、今までにも味わったことがない。」
と褒め称えます。
井伊は、
「亡き家定公が、天璋院様を政治に関わらせよ,
と言われたことがわかったような気がいたします。」
と深くうなずくのでした。
膝を交えて語らうと、相手の知らなかった部分が見えてきます。
篤姫と井伊直弼は、「時々はこうして語り合う場をもとう。」
と約束するのでした。
しかし、二人のこうした機会は二度と訪れず、
安政7年3月3日、江戸城桜田門外にて水戸藩の浪士らによって、
大老・井伊直弼の行列を襲撃し暗殺した事件が
起こってしまいます。世に言う「桜田門外の変」です。
井伊直弼の首を上げたのは、篤姫の実家である薩摩の者でした。
3月3日、篤姫は、大奥の女性達といっしょに、ひな壇の前でお菓子など食べて
ひな祭りをしてにぎわっています。
庭の満開のももの花に、降りしきる雪。
淡いピンク色のももの花に、まっ白い雪。
同じ時、桜田門外の井伊直弼一行の行列に、突然襲いかかる水戸浪士ら。
まっ白い雪が、真っ赤な鮮血に染まります。
篤姫らでにぎわう、ひな祭りの雛檀の人形も、心なしかこわばった顔に。
人形の顔は、襲撃する水戸浪士たちのよう。その中に混じる薩摩藩士のよう。
あるいは、人形の顔は、自らの死を悟った井伊直弼のよう。
「桜田門外の変」という歴史的事件を、
篤姫の様子と、桜田門外襲撃事件を同時進行で見せるみごとな演出。
浄瑠璃の舞台を観るようであり、
新劇の同時進行の舞台を観るようでもあり、
ももの花のピンク色、雪の白、襲撃された井伊直弼の手のひらの血の赤。
配色の演出効果もうかがわせ、
華やかなひな人形の顔が、大写しになるとこわばった何者かのような表情を見せる。
それは、今まさに桜田門外で起こっている襲撃を暗示しているかのようです。
「桜田門外の変」の演出は、みごとで素晴らしかったです。
これまでに書いた、大河ドラマ「篤姫」に関する記事は次のとおりです。