■表記も語法も現代語そのものの「そぼ降る雨」、実は千年前の言葉。言霊(ことだま)と
いうゆかしい日本語に思い至る。春雨=落涙=落花が掛詞・縁語(えんご、ゆかりことば)。
不遇を託(かこ)つ涙か恋する涙か。思いを巡らして二十一世紀の空をあおぐ。
【略注】○そぼ降る=しとしと降る。「そをふる」(小学版底本)「そほふる」(岩波版)「そぼふ
る」(新潮版、岩文版)
○をやみ=小止み。ひと休み。
○源重之=現存する最古の「百首歌」の作者。
【補説】百首歌(ひゃくしゅのうた)。季節・恋などいくつかの題詠を、合わせて百首にまとめ
て楽しむやり方。ふつうは単独詠だが、複数詠もある。新古今歌人に多い。