若い頃の宮勤めは、名月を見るのも胸おどらせたものだ。でも今となっては、あと何年この月を見なければならないのかしら、という老い先だけが気になってしまう。男にちやほやされなくなった寂しさ、とも読める。
ひらかなy120:きゅうちゅうの むかしのつきを おもいだし
なみだにくもる これからのひび
ひらかなs1510:むかしみし くもゐをめぐる あきのつき
いまいくとせか そでにやどさん
【略注】○雲居=雲の中。月に掛ける。転じて宮中。
○袖に宿さん=「昔」「いま」の対比から、「袖」は懐旧の涙。「宿す」は「雲居」「月」
の縁語であり、「袖」との縁語として「涙を宿す」の意。
○讃岐=二条院讃岐が通用。源頼政の娘。二条天皇に仕えたあと、藤原重頼の
妻。のち出家・隠棲。喜寿ごろまでの長命。16首入集。