「グラジオラス」(以下、Gとも)の学名を調べるついでに、LとRに関する曖昧な記憶に決着をつけようと、ネット・サーフィンをした。
以前どこかで、Gは花の大きさと咲き順に gradation があるから gradiolus と見たような気がして、何となく納得して、そのまま放置しておいた。こんどブログするにあたって、あれこれ見ると、語源はラテン語の gladius(剣)説が多かった。他方で、はっきりしないという説明もあるが、ここでは多数説を採る。綴りは gladiolus.、学名だからラテン語、となると複数形は gladioli だ。英語はこれをそのまま流用している。ただし、ときに g_ses もありとされる。
さて、おなじみ Google で gradiolus と入れると、「もしかして gladiolus」と言われた。想定範囲内ということでさらに続けると、gr_ で出てきたのは、ほぼ日本人による記事だけ。ジャズ音楽家の Scott Joplin(1868-1917)に rag シリーズがあって、みな、植物の名が付けられている。もみじラグ、枝垂れ柳ラグ、パイナプル・ラグ、そしてグラジオラス・ラグ。いくつかのウェブ・ペイジが、Gをすべて gr_ と書いている。
ランボー(1854-91)の初期の詩 Le Dormeur du Val(直訳すると the dreamer of the valley)に、Gが出てくるというので見た。
http://www.mag4.net/Rimbaud/
その第3節に、こうある。
Les pieds dans les glaïeuls, il dort. Souriant comme
Sourirait un enfant malade, il fait un somme :
Nature, berce-le chaudement : il a froid.
この les glaïeuls(単数形は le glaïeul)がグラジオラス。(手元の白水社「新仏和中辞典」に gladiolus はない)
この部分の Oliver Bernard、1962年訳(上記 Rimbaud HP)は、
His feet in the yellow flags, he lies sleeping. Smiling as
A sick child might smile, he is having a nap :
Cradle him warmly, Nature : he is cold.
また Monji Kunio(門司邦雄)、2003年訳は、
http://eyedia.com/rimbaud/japonais.html
His feet in the gradiolus, He sleeps.
Smiling like a sick child, He takes a nap:
Nature, cradle him warmly, he feels cold.
とする。
門司氏は、この詩にたった一つの注釈を加える。
Note:The "gradiolus" means a sword, a soldier or a combat. The word comes from Latin "gladius" that means a sword. Because the shape of the leaf is just like a sword. M. Claude Duchet says that this gradiolus is the iris in the swamp in Ardenne, which has yellow flowers in June and July.
以上、それぞれが、英語・フランス語に堪能な研究者であるはずなのに、弘法もなんとやらの類かなと、ひとり深夜に思いを巡らした。
そもそもこれはあら捜しではなく、え?ランボーが? 凡人には許されないことも天才には、という例かもという、言ってみれば確認作業から始まったサーフィンであった。
追記:書き終えて1時間ほど推敲していて、また気がついたことがある。門司氏のHPに は、2004年訳が別にあって、そこでは gr_ が gl_ に訂正されていた。氏の名誉のために 付け加えておく。ほっとした。
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