goo blog サービス終了のお知らせ 

青山潤三の世界・あや子版

あや子が紹介する、青山潤三氏の世界です。ジオログ「青山潤三ネイチャークラブ」もよろしく

中国の野生植物 Wild Plants of China リンドウ科Gentianoceae-54

2021-03-28 13:00:00 | コロナ 差別問題と民主化運動 中国の花




Gentianopsis sp. 迴旋扁蕾? (雲南省梅里雪山)



雲南省迪庆藏族自治州徳钦県梅里雪山明永村。標高2400m付近。2013.9.29 [photo by Monica Lee]
日本における最希少植物のひとつ、チチブリンドウ(迴旋扁蕾Gentianopsis contorta)または、それにごく近縁な種と思われる。

日本産のリンドウ科植物は、30種ほど。その半分以上が、いわゆる高山植物である。高山植物には希少種が多い。でも、図鑑を作る必要があったので、意地になってほとんどの種を撮影した。ちなみに屋久島産は9種、こちらも希少種や興味深い種揃いなのだが、 むろん全種を撮影した。

日本の山地性希少リンドウで、一種だけ撮影が叶わなかった種がある。奥秩父と、南アルプスの北端近くに位置する白岩岳2287mにのみ分布する*、チチブリンドウである。

山頂付近は、ギリギリ「高山」の範疇に入れられなくもないが、生えている場所は中腹の石灰岩地帯、いわゆる「特殊岩石地生育植物」を代表する種なのだ。

奥秩父の中核部、甲武信岳2475m(木賊山2469m/三宝山2483m)の周辺の、特殊岩石(石灰岩?)地域と思われる、道の無い中腹山中を、何度か探し回ったが、見つけることが出来なかった(探していた場所よりも、もっと低い標高に生えているようだ)。

*最近の情報では、滋賀県の伊吹山を始め、意外な場所(さほど標高の高くないところ)から記録されている。といって、どの地域においても普遍的に見られるわけではなく、第一級の希少植物には変わりない。

中国に拠点を移して以来、日本の山々からは足が遠のき、チチブリンドウの探索も、それきりになってしまった。

2013年の秋、モニカを雲南梅里雪山での撮影・調査に派遣した。9月末から10月にかけてで、蝶や各種の花の季節はほぼ終えている。後年を考えての予行演習ということで、成果はもとより期待していない。むろん、大した成果は挙げることなく戻ってきた。

花を終えて、枯れ草や種子になったものが多かった。ここに示した写真の個体も、その一つと思っていた。一応、シロウマリンドウ属であろうことは分かっていたので、今回纏めるに当たって、チェックしてみた。

種子と思い込んでいたのは、どうやら萼筒部のようである。先端に、ちらっと花被弁のようなものが見える。むしろ蕾の状態に近い(あるいは花を閉じている)のかも知れない。

この特異な雰囲気は、(実物か図鑑類かはともかく)どこかで見たような気が、、、、。“チチブリンドウ”の名が、ちらっと過ぎった。でも、僕が図鑑などで見た記憶のあるチチブリンドウは、もっと短躯の植物体だったはず。それに余りにも距離が離れすぎている。でも気になって、一応インターネットでチェックした。どうやら、チチブリンドウである。プロポーションの違いを除けば、概ね特徴が一致する。

実は、チチブリンドウの存在を思いつく前に、「中国植物志」で、ある程度近いと思われる種の見当をつけていた(殊に次に紹介する香格里拉尼西産の個体に対して)。「迴旋扁蕾」という種である。学名はGentianopsis contorta。チチブリンドウの学名も調べてみた。Gentianopsis contorta。なんと、同じ種が雲南にも分布しているわけである。

「中国植物志」に示された分布域は、チベット、云南、贵州、四川、青海、辽宁(東北地方)。海拔1920-3550m。国外では、ヒマラヤ西北地区(模式标本产地)、ネパール、日本にも分布。

かなりの広域分布種だ。もっとも、次に紹介する「迴旋扁蕾」の典型個体の撮影地は、特殊岩石に覆われた山の山裾である。と言っても、中国大陸の多くの地域では、日本では「特殊」とされている地質がむしろ一般的だったりするわけで、日本が変なのである。

ちなみに、奥秩父の甲武信岳の山腹樹林内には、日本では一属一種でここだけに生える、スイカズラ科のホザキツキヌキソウのような、やはり超希少種も生育している。こちらも中国では比較的広範囲に分布しているようで、僕は四川省雪宝頂5588mの近く(九賽溝渓谷)で撮影している。雲南省玉龍雪山5596mの山麓では、色違い(白→赤)の実を付ける同属種にも出会ったことがある。

雲南省とチベットとの省境(四川省やミャンマーやインド・アッサムとの境もすぐ近く)に聳える梅里雪山6740mの氷河の末端下に、奥秩父と同じ(またはごく近縁な)種が生えていても、それほど不思議ではないのかも知れない。

ここでは、一応、(暫定的に)チチブリンドウとは別の種と考え、Gentianopsis sp.としておく。





雲南省梅里雪山明永。標高2400m付近。2013.9.29 [photo by Monica Lee]



雲南省梅里雪山。撮影地点は氷河の下。2012.7.4


Gentianopsis contorta 迴旋扁蕾 (雲南省香格里拉)



雲南省迪庆州香格里拉市尼西郷。標高2800m付近。2005.9.28 

種Gentianopsis contorta迴旋扁蕾は、上記したように、ヒマラヤ山脈西北部から、中国の高山帯を経て、中国東北部、そして日本のごく一部地域に至る広域に分布しているわけだが、それらの地域集団が面的に連続しているのか、特定の地域に断続分布しているのか、などについては、僕は良く把握はしていない。Gentianopsis contorta=チチブリンドウ、と言い切って良いのかどうかも含めて。

この写真の撮影地点は、特殊岩石が大きく露出した山塊の下方。そのような点に置いては、日本のチチブリンドウの産地と共通するように思われる。





雲南省香格里拉尼西。標高2800m付近。2005.9.28


Gentianopsis grandis 大花扁蕾 (雲南省香格里拉)



雲南省迪庆州香格里拉市尼西郷。標高2800m付近。2005.9.28

中国大陸の最も広範囲に分布するシロウマリンドウ属の種は、ひとつはGentianopsis barbata扁蕾(プライベート・ネーム:ヘンライソウ)、もう一つは次回紹介予定のGentianopsis paludosa湿性扁蕾(プライベート・ネーム:ツチノコヘンライソウ)であろう。前者は花筒部が長く萼筒基部は花茎に流れ、後者は全体に短くずんぐりしていて基部は花茎に流れない。この、Gentianopsis grandis大花扁蕾(プライベート・ネーム:オオバナヘンライソウ)も、種としては前者に含めても良いのでは、と思われるが、「中国植物志」に従って、一応種を分けて置く。香格里拉北方の、石灰岩の山の中腹路傍に、チチブリンドウと共に生えていた。写真で見るように、花の大きさや花色は個体変異に富む。











雲南省香格里拉尼西。標高2700m付近。2005.9.28



石灰石の山。香格里拉の町の西北にある石灰岩の山

Gentianopsis grandis 大花扁蕾 (雲南四川省境山地)



雲南省迪庆州香格里拉市格咱翁水郷中甸大雪山(四川省境山地)。標高4300m付近。2009.9.12







雲南雲南四川省境山地(中甸大雪山)。標高4300m付近。2009.9.12



中甸大雪山。

・・・・・・・・・・・・

Gentianopsis ?? sp. (雲南省香格里拉)

写真20
云南省迪庆藏族自治州香格里拉市小中甸郷。標高3200m付近。2005.10.2

シロウマリンドウ属の一種と思われるが、定かではない(「中国植物志」では該当する種を見出し得なかった)。萼裂片は基部まで裂ける。もしかすると、リンドウ科ではないのかも知れない(例えばキキョウ科の種?)。香格里拉南方(小中甸)で、紅葉したイワタイゲキ属の種が群落を作る湿原の脇に生えていた。一応、プライベート・ネームを“クビレヘンライソウ”としておく。



雲南省香格里拉小中甸。標高3200m付近。2005.10.2

・・・・・・・・・・・・

シロウマリンドウ(扁蕾)属Gentianopsisの紹介は次回に続く。







コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする