(第27回) 付録2009.5.6
クサフジの茂みに白い蝶の姿が見えました。モンシロチョウより、やや大きめ、ミヤマシロチョウです。千遇一遍のチャンス、この機会を逃してはなりません。オーイ食事はしないのか!というバスの運ちゃんの声など完全無視です。
正確には、台湾産と同じタカサゴミヤマシロチョウ。日本の高山蝶ミヤマシロチョウとは、後翅裏面の中室の形が異なります。ミヤマシロチョウは平べったい三角形、こちらは後半部分が広く膨れます。また、後翅裏面が黄色味を帯びる前者と違って、こちらは前翅ともども純白、清楚さがひときわ引き立ちます。中国大陸では、前者は四川・雲南からチベットにかけての高地帯に分布していますが、こちらは湖北省や広西壮族自治区(前週、桂林北郊でも何頭か見かけたけれど、良い写真は写せなかった)などの、より標高の低い、いわば里山地帯に分布しています。日本のミヤマシロチョウはもとより、台湾のタカサゴシロチョウも高標高地に分布している(以前、南部山地の標高3000m近い稜線で撮影したことがある)ので、最も標高が低く温かい地域に棲むミヤマシロチョウの仲間、ということが出来るでしょう。
ついでに、3日前に、猫児坪で撮影したタカサゴミヤマシロチョウも披露しておきましょう。ゲンゲやクロツバメシジミを撮影した田んぼの、すぐ近くの小さな売店で、帰りのバス待ちをしていた時に現れたもの。一生懸命撮影している時にはどのチョウも姿を現さないのに、そんな時に限って現れるものです。吸蜜中の花はナワシロイチゴ、前回述べたように、日本産とは葉の形が著しく異なります。
ここでの訪花植物はクサフジ(猫児坪でもクサフジにやって来ていました)。Viciaソラマメ属は、羽状複葉の先端の一枚が欠け、ヒゲ状になっていることで、Astragalusゲンゲ属と区別がつきます。ゲンゲ属同様、様々な花序のタイプがあり、花が一個ずつ咲くカラスのエンドウなどは、ちょっと見は(ソラマメ属とは別属の)エンドウマメの花に良く似ています。総状花序の花が片側に寄って集まるクサフジ型の種は、日本産としてはクサフジの他にツルフジバカマなど数種があって、僕には未だに区別がつきません。従って、この花も、クサフジなのかツルフジバカマなのか、はたまたその他の種なのかは不明。
クサフジやツルフジバカマなどは、花序に小花を多数つけるため、チョウたちには大人気です。殊に、モンキチョウやルリシジミ・ツバメシジミなど、この植物を食草とするチョウたちをよく見かけます。写真は産卵中のルリシジミ。ルリシジミの仲間も同定が極めて難しいのですが、これはたぶんルリシジミそのものだと思います。
思わぬ収穫があったので、まあ良かったとしましょう。でも、宣昌へ到着して銀行に行ったら、やはりまだ振り込まれていなかった。明日まで待たねばなりません。一文無しです。知らない中国人にお金を借りるわけにもいかないし、後払いで泊めてもらえる宿を探さねばなりません。しかしどこも門前払い、パスポートを見せて、明朝支払う、などと言っても、端から信用などして貰えない。途方に暮れてしまいました。どだい、このような中途半端な都市の中途半端なホテルでは、パスポートの効力は全く無いのです。そこで一計、外国人の泊まる、町一番の大きなホテルに行けば何とかなるだろうと、4つ星の豪華ホテルを尋ねてみました。見事交渉成立。この5年間で宿泊した最高級のホテルと相成りました(宿泊費は5000円ほど)。贅沢に、ルームサービスの夜食です。
《次の中国紀行プレイバックは、『2009.5.19 湖南南山~広西芙蓉村 野生アジサイの探索に雨中50㎞踏破』です(掲載期日は未定)》