イスラエル政権 二国共存の努力続けよ
2009年4月2日 (オバマ大統領トルコ入りの背景資料)
イスラエルで右派主導のネタニヤフ政権が発足した。左派の労働党を取り込んだが、和平後退の印象はぬぐえない。国民の安全はパレスチナとの共存しかあり得ぬことを、双方が忘れてはなるまい。
新政権はパレスチナ自治区ガザへの空爆など猛攻撃後に行われた総選挙(定数一二〇)で倍増以上の議席を確保したネタニヤフ党首のリクードを中核に、極右「わが家イスラエル」とユダヤ教政党シャスなど「二国家共存」に否定的な右派勢力が参加して発足した。
中東和平より国民の治安、安全保障を優先する世論が示された総選挙からは当然かもしれない。だが、組閣を任されたネタニヤフ氏は、ガザ攻撃での国際的な強い批判と、イスラムとの対話、中東和平に意気込む米国・オバマ新政権に配慮し、当初は比較第一党で前政権を主導した中道カディマとの大連立を模索したものの、カディマのリブニ前外相が和平推進路線の立場から応じなかった。
そこで労働党に接触、バラク党首の国防相留任を引き換えに連立入りを説得、過半数を確保した。内部反発もあった労働党は、存在感を失わない選択をしたようだ。
ネタニヤフ氏は十年前の首相時代、東エルサレムへの入植を進め当時の米クリントン政権と対立したが、今回はさらに危うい。アラブ人追放を叫ぶ極右・わが家イスラエルのリーベルマン党首を外相に就任させたからだ。どのような対アラブ外交戦略を展開するのか、国際社会も不安を隠せない。
イスラエル人にとっても安全保障を得るにはパレスチナ人との共存しかないことは歴史の教訓として学んでいるはずだ。ネタニヤフ氏がエルサレム近郊に大入植地を認める密約をしたとの情報も流れている。イスラエル寄りだったブッシュ前米政権とは少し異なり、対話路線を掲げるオバマ政権は入植凍結を早急に働き掛ける意向だが、両者の仲介をめぐって外交努力への真価が問われよう。
さらにイラク、アフガニスタン情勢にも絡んで米政権が接触を試みるイランに対し、ネタニヤフ新政権は強硬姿勢を強めており、緊張が増幅しかねない。
一方、パレスチナ側もヨルダン川西岸の自治政府とイスラム原理主義組織ハマスの支配するガザ地区に内部分裂したままという不安材料もある。イスラエル新政権が中東を再び暴力の連鎖など混乱に陥れることがないよう、国際社会は見守っていかねばならない。