旧黒磯村の賀茂神社(駒形神社)には雨を降らせる箱宮があったそうです。遠くの村が、雨乞いしても雨が降らなかったので、箱宮を夜中にそっと自分の村へ運んだそうです。いじっているうちに箱宮の蓋が外れて、稲妻が龍のように空へ駆け上がり、大雨が降り雷が鳴り作物が流されてしまい、村人は困って、あわてて箱宮を黒磯村に戻したそうです。そこで年寄りが集まって念仏を唱えると、雨雷は止んだそうです。念仏はその後、五か村念仏と呼ばれるようになったそうです。写真は賀茂神社です。
昔から大塚池には、池中に水が湧き出る水釜と泥釜があるそうです。この水釜は竹竿(たけざお)を何本もつないでも底には届かなかったそうです。毎年土用ごろになると、湧水の量が増して、その付近は危険だから近寄るなといわれていたそうです。写真は10月の大塚池です。
下入野に華蔵院(けぞういん ひたちなか市)の末寺である長楽寺というお寺があったそうです。両寺と、芦川という武士の家にいる3匹の大猫が、お月夜のころになると毎晩長楽寺に集まり、「三拍子揃わないと調子があわない。これで揃った」といって踊り出したそうです。華蔵院の猫が遅れてきて、「今夜は和尚様の帰りが遅く、衣を着てくることができなかった」といったり、毎晩出かける猫を不思議に思って寺に見に来た芦川に、きれいな娘に化けた猫が「よくおいでになりましたね」といったりしたそうです。写真は華蔵院(ひたちなか市栄町1-1-33)です。
大足(おおだら)横宿に阿弥陀院というお寺があったそうです。本堂の天井に龍が描かれたそうですが、その龍が水を飲みに行くという噂が立ち、調べてみると、田や畑に龍の腹跡のようなものが続いているのが見つかったそうです。坊さんのいう「これは仏さまのお慈悲です。みなで供養しましょう」ということになったそうです。村の人は「この天井の龍の絵は、狩野法眼様が描いたものだっぺ」といっていたそうです。
むかしある富豪の家で、大晦日の晩に、奉公人が間違って火を絶やしてしまったそうです。困りに困っていたところ、ちょうど葬式の行列が火をつけて家の前を通りかかったそうです。その火をもらって、その家は元日を迎えることができたそうです。大晦日に火は元日まで持ち越せというということだそうです。