Feelin' Groovy 11

I have MY books.

タプカ

2005-06-21 | 
先日書いた審査員の応募のため読んでいた『ナターシャ』について
書評は応募するため載せられないけど、
気に入った短編をご紹介します。
以下は書評ではなく全あらすじが載っているので
自分が読む前からストーリーを知りたくない方は
読まない方がよいかも。。。


(『ナターシャ』デイヴィッド・ベズモーズギス著 新潮社より「タプカ」)


隣人の大切な犬「タプカ」の世話を任され、
また自らも可愛がっていたのに、ちょっとした軽はずみの行動で
タプカを交通事故に遭わせてしまった6歳の主人公。
隣人に理由を問われ、「ただ逃げてしまったのだ」と断言する。
手術をすれば命は助かるが、その代金は隣人に払える額ではない。
タプカを死なせるわけにはいかない隣人は
集中治療室の床にすわりこみ体を揺らす。
事態を把握した医者も一緒にすわりこみ、体を揺らす。
次の引用はその揺れと主人公のやりとり。


揺れは言った。_____いいか、クソバカ、タプカは生きのびる。
医者は手術をしてくれる。
金は見つかるか払わなくてすむか、どっちかだ。
私は揺れにむかって言った。____ほんとによかった。
ぼくはタプカが大好きだ。
けがをさせるつもりはなかったんだ。許してほしい。
揺れは答えた。___現実というものがあり、また真実というものがある。
タプカは生きのびる、これは現実だ。だが、正直になろうじゃないか。
お前はタプカを殺した、これが真実だ。
リタを見ろ。ミーシャを見ろ。なあおい、それで通ると思ってるのか。
おまえはタプカを殺し、そして、決して許されることはないんだ


6歳の少年が現実と真実という言葉を使って考えられるだろうか、
という疑問はこの際ナシとしましょう。
(いや、やはり不自然と言えば不自然ですが
 読んでる時はそれを感じさせませんでした。
 自分が主人公に感情移入するから、
 6歳だということを忘れてしまうんですねぇ)
まあ、自分の目の前に広げられる光景を見て
何かしら言葉にならないものを感じるでしょう。
その重要な経験が人を成長させていく、
そういった少年時代の1部を切り取り鮮やかに表現した短編です。
あらすじを書いてしまったけれど
一番感心したのは簡潔な文章なので是非直接読んでみてください。
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