「エンジェル・ハート」新たな運命との出逢い篇 第25話 死にたがる依頼者

2013-07-01 12:30:00 | ドラマ/映画/ドキュメンタリー
 シャンイン、新宿に来て2年目の冬を迎えていた。

 しかし相変わらずスナイパーとしてしての腕は1流だ。

 幼稚園の送迎バスに突っ込もうとしていた居眠り運転の車をタイヤを撃って阻止する。そんなことは朝飯前だ。

 しかしシャンインのその様子をある男が見ていた。

 遼は、そんなシャンインを叱るがすっかり遼に慣れ、日本語の上手くなったシャンインは他の女たちが遼をあしらうように上手くあしらっている。

 遼はなんでもかんでも銃を撃ちすぎるシャンインを注意する。電車の中で痴漢をしている男を見たらその手まで撃ち抜こうとしたらしい。
 しかし、(今回の幼稚園送迎バス)遼パパならどうした?親は子供を映す鏡であるってねと言われると、返す言葉がない。

 シャンインは人前でよく食べるようになり、遼にはどんどん香に似てくるような気がしていた。
 しかし2人が話していたハンバーガーショップで遼はなんだか不審な男に気付く。

 店を出た後もその男は遼とシャンインをつけてくる。

 そして男は2人に声をかける。板前?

 男は震えていた。そして遼とシャンインに土下座をし、私と弟を一緒に殺して下さいと言い出す。

 男は福留裕介と言い、福留食堂を営業していた。

 彼は双子の弟の裕司と年に1度誕生日にこの食堂で会うという。それがもうすぐだ。その日に2人を殺してほしいという。

 何故ここで?と聞くシャンインに、裕介は、ここは弟の裕司と一緒に捨てられていた場所で、捨てられていた日が誕生日だという。

 裕介にとってはつつましやかでも幸せを手に入れた場所だという。裕福ではないが、育ててくれた食堂の夫婦は兄弟を可愛がってくれた。
 しかし裕司は不満を抱くようになり、悪い道に走って行った。ある日兄と大喧嘩し、飛び出した。

 遼は向こうずねの祐二と呼ばれる極道になった、かと言う。

 今じゃ本家から小さな事務所を任され、いっぱしの極道になっていると、遼はいう。

 裕介は、祐司にとって福留食堂は自分を捨てた親や世間を恨み続けるために存在している場所だという。祐司はもはや歯止めの効かない狂犬だと拳を振るわせる。
 でも、どうしてお兄さんまでとシャンインが聞くと、あんな奴でも私の経った1人の肉親、分身なんだと答えた。それを手にかける。私も生きてはいけない。

 そんな…それに私たちは人殺しは…と言いかけるシャンインを遼が、松竹梅とあるがどれがいいとさえぎる。殺しのランクさ。

 梅は弾1発で竹は身体中蜂の巣で松は木端微塵ばらばらにすると、手で作った銃を裕介に突きつけながらいう。

 そして、どれがいいと、迫る。そして、そうだ。あんたいい人そうだから死ぬまでの時間も選べるサービスにするぜという。

 裕介は震え上がっていた。

 遼パパいい加減にして。思わず言うシャンインに遼は、脅しだよ脅しという。こういう手合いは具体的な話で決心が鈍るもんなのさという。
 しかし裕介は、1発で10秒ほどで死ぬでお願いしますと言い出す。

 え、何故それを選ぶのかな…。まさかの返答に困った遼が聞く。
 裕介は、撃たれたあとこんな形でしか止められない兄を許せという時間が欲しい。そして弟の方が先に死ねるようにしてほしい。せめて私が弟を看取ってやりたいと涙を流す。

 いいだろう、承知した。お願いします。ちょっと。

 遼の返答と頭を下げる裕介にシャンインは戸惑うだけだった。

 2人は裕介と別れ、話していた。
 本当にこの依頼を受ける気?聞くシャンインに、このまま放っておけないだろう、あの兄弟、まずは裏を取ってからだよと遼は答える。
 シャンインは、はーいはい、了解しました。でも私は殺しなんて絶対しないからというと、走り去っていく。

 (有〉裕福工業って言うのが奴らの事務所だよと祐司の様子を見はりに来たシャンインに何故か信宏(しんほん)がついてくる。
 事務所の場所教えてくれるだけでよかったのにと言っても、そりゃシャンインの役に立てるの嬉しいからと、切ない男心をにじませた。

 そこへ車が止まり、向こうずねの祐司が降りてきた。しかし運転手を殴る。そして、おせーぞ、こののろま。車がついたらすぐドアを開けろと努鳴っている。
 
 遼は食堂で飯をかっ込んでいた。裕介は話していた。家には2人を大学進学させるだけの資金がなかったので、弟の祐司にと譲ったが、祐司はその金を競馬で使いはたした。それを責めると俺は大馬鹿さ。大学よりこっちの方が向いてるんだよと包丁を握った。そしてその包丁を自らの額に振りおろした。
 これでハクがつくぜ。もう堅気には戻れねえと驚く裕介と養父母の前で言った。
 家を出て何年かすると祐司は金を持ってくるようになりました。裕介の話は続いた。でも父は極道ものの金は受け取れないと拒み、4年前両親が交通事故で死に…なのにあいつ葬式にも来ないで…数日後ちょっこり顔を出したあいつに、裕介は2度とここには来るなと言い、それ以来祐司は来なくなった。
 
 遼が言う。だが、誕生日だけは、その路地に来る、か。
 裕介は、その都度足を洗えと説得しましたが、手が付けられなくなる一方で…。

 
 シャンインは裕福工業に入るのに催眠ガスを使い、組員を全員眠らせていた。信宏は大袈裟すぎないかと言うが、シャンインは正面突破での手加減って面倒なんだもんと気にしていない。下手した殺した大変でしょと言うが、心の中で信宏は正面突破以外考えられないのかよと思わず言っていた。

 資料を調べている内に信宏は金庫を開け、そこに現金とヤク、そして子ども銀行と書かれた古い箱を見つけた。
 どうした?聞くシャンインにそれを見せると、何これ、おもちゃの金庫?
 信宏は、こんなもん大事に閉まってなにが入ってるんだろうなという。

 シャンインが子ども金庫を開けると昔の家族写真やいかにも子どもが集めそうなどうでもいいものが詰まっていた。信宏は1つの通帳を見つける。裕介の名前で多額の貯金がしてあった。

 シャンインは、祐司も形は違うけど家族を思う気持ちは同じだったと…と気付く。そして睡眠ガスで眠っている祐司の顔を見ると、やっぱり双子ね。眠っているとお兄さんの優しい顔に似ている気がすると思う。

 そして目覚めた祐司達や組員は開けられた金庫が殻になっているのを見て震え上がる。誰の仕業だ。白昼堂々、どっちかの大きな組織の仕業にちがいねえと思う。

 まさか、まだ16,7歳の少女たちの仕業とは思うまい。

 どうします?組長このままだと本家へのしのぎが…それにヤクまでもと組員は言うが。
 うるせー。それより子ども金庫が亡くなっていることが祐司には問題だった。

 そこへ祐司の携帯電話が鳴る。ブツは預かってる、こう言えば判るかな。
 きさまー。
 
 祐司は電話で指定された公園のベンチに夜、向かった。

 しかしそのベンチにシャンインが座っている。祐司は、おい、ねーちゃん、そこは俺の指定席なんだけどな。
 シャンインは、ちゃんと1人で来たようね。関心、関心と言い、裕介名義の貯金通帳をちらかせる。
 ふざけるな。使いに用はねえ、と祐司は怒鳴る。

 そして電話の男はどこだ?出て来いと努鳴る。
 シャンインは、思った通りの反応ね、だから代理の男にかけさせたの。女だと信じてもらえないと思ってという。金庫のブツは私が奪ったのよ。
 なんだと…。

 しかし祐司は笑いだし、ねーちゃんが、そいつはスゲーと信じていない。そしてふざけんなーと飛びかかろうとするが、シャンインに簡単に足を引っ掛けられ転ぶ。
 その様子を見て、初めてシャンインが、お前プロか?はなから俺のたま取るのが目的で…。
 そうよ…シャンインは低い声で応じる。そして祐司の頭に後ろから銃を突きつけ、引き金を引きかけるが、一点明るい声で、そうだ、最期に遺言でも聞いてあげるという。
 ないのか?じゃ。
 祐司は慌てて、ある、ある、あると叫ぶ。そしてその通帳を兄貴に…というが、シャンインは底抜けに明るい声で、やだ、私がもらうって決めてるの、この大金という。
 しかし祐司はそれを兄に渡さないと死んでも死にきれねえ。極道にまでなって溜めたかいがないという。
 
 へー面白いことを言うのね。ことと次第によっては考えてあげるというと、考える…祐司は呟き、シャンインは、だ・か・ら、ちゃんと話してみなと祐司にまた銃を突きつけた。

 祐司は言った。
 俺は貧乏な家族に早く楽になってほしかったんだ。
 子どもの頃、祐司は養父母の話しを聞いてしまった。自分の服を買えと父親が金を母親に渡しても、そうは言ってもついこれを見ちゃうと、あの子たちの服、継ぎはげらだけだからと子どもの服を買ってきてしまう。

 父親がだからってお前だってろくな服持ってないじゃないかと言っても、妻は笑ってあなただって同じことしたんじゃないですか?と言う。父親はしょうがねーなと言っている。

 それに対し、祐司は、そんなダサイ服着るもんか。いらないから返して来いとしか言えなかった。

 祐司はいう。
 あんときはいたたまれなかった。だからあんな真似を。俺たちは家のお荷物だ。だから早く家を出たかった。あんときはそう思ったよ。そして金を稼いでやるって。けど俺、馬鹿ですぐキレるから、なにやってもダメでよ。早く稼ぐには極道しかないと思ってた。俺がいなきゃ、家も楽になると思って飛び出した。額に傷つけて、これがあれば、俺とそっくりな兄貴も襲われることもないだろうと思って。

 そして必死で稼いだ金を親父に…だけど受け取ってもらえなかった。あのとき、受け取ってくれてれば過労で居眠り運転なんかで死ぬことはなかった。
 葬式、行きたかったよ。でも俺が行けば迷惑かけるし。
 後日兄を訪ねたが、兄は怒り、この親不幸者と追い返された。そのとき、せめてこれを仏壇にと通帳を持参していたという。
 シャンインは、話を聞き、本当、馬鹿ね、と言い、また催涙ガスをかがせて眠らせる。
 
 次祐司が目覚めた時は自分の事務所の前だった。そして通帳と一緒に、そういうものは自分で渡しなさいと書いた手紙があった。

 シャンインは、遼に話していた。祐司は根は優しい弟よ、このことを裕介さんに話せばきっと兄弟の仲も回復するわという。
 しかし遼はそのことはまだ裕介には伏せとこうという。
 
 2人が食堂を訪ねると、全品95円セールをしていて、店は大繁盛だった。
 
 しょうがないから遼もシャンインも手伝うことになるが、全く死のうって奴がなに考えてんだよと遼はぼやく。
 客が100円を払うと、裕介は5円のお釣りを返すが、それには赤いリボンが巻かれている5円にご縁をというやつですという。
 遼もシャンインも気付いた。世話になった人達に最後の挨拶か…。

 店は終わったが。まだあと2日セールは続くらしい。そこへ1人の女性が訪ねてきた。
 
 昭美という、学生の頃ここをよく手伝ってくれた女性らしい。早速遼がアピールをするが、シャンインに止められる。
 そして帰るあきみにも5円を渡す。それを見てなにかあったの?と聞くが、なにかって?と祐介はとぼける。
 
 遼は昭美が帰ったあと、惚れてるのか?相手もまんざらではなさそうだが…。
 ああ、言ったのかもう?言えるわけないですよ。弟のこともあるし…。

 胸が痛いな、死を覚悟した人間のやることは。遼が言うのに。シャンインは、遼パパ何故祐司のこと、言わない?と再び聞く。

 言えば裕介はさんも…。

 しかし遼は思いがけないことを言った。
 祐司は生命を狙われている。本家がヤクの密売のことを祐司に全部かぶせて、消そうという情報が入った。
 死人に口なしか。ようやくシティーハンターの仕事らしくなってきたな。

 昭美が戻ってきて、遼達にゆうちゃんなにがあったんでしょうか?と聞く。遼はとぼけるが、5円を遼に渡しこれは受け取れません。受け取ったらゆうちゃんとはもう会えないような気がして…。言って走りさって言った。
  
 遼は言う。人は例え1人でも自分を必要とする人がいれば生きる価値はあるはずだ。裕介は多くの人に必要とされている。
 そして裕介も祐司もお互いを1番必要としているんだ。