「化学工場が、廃水を工場外に放流するにあたっては、常に最高の知識と技術を用いて排水中に危険物混入の有無および動植物や人体に対する影響のいかんにつき調査研究を尽くして、その安全性を確認するとともに、万一有害であることが判明し、あるいはその安全性に疑念を生じた場合には直ちに操業を中止するなどして必要最大限の防止措置を講じ、特に地域住民の生命・健康に対する危害を未然に防止すべき高度の注意義務を有するものといわなければならない。
いかなる工場といえども、地域住民の生命・健康を侵害し、これを犠牲にすることは許されないからである。」
「被告工場における排水の水質が法令上の制限基準や行政基準に合致し、その排水処理方法が同業他事業所のそれより優れていたとしても、被告工場がアセト・アルデヒド排水を放流した行為については、終始過失があったと推認するに十分であり、廃水の放流が、被告の企業活動そのものとしてなされたという意味において、被告は過失の責任を免れないものといわなければならない。」
写真集 水俣 MINAMATA W.ユージン・スミス、アイリーン・M.スミス