~ 恩師の御著書「講演集」より ~
講演集、 一
「母娘の責め合いと反省の功徳」
先の続き・・・
その翌日のこと、夕方から雨が降ってきた。
娘さんは例の宗教の所に出掛けており、
洗濯物が干したままなのですね。
ああこれを取り込んでおかないと濡らしたら叱られると思って、
取り入れていた時に、
その意地の悪い娘さんの幼い頃がふと思い浮かんできたそうです。
子供さんが三人ありまして、
上の二人は嫁に行って下の娘が養子を取って跡取りです。
この人の幼い頃はちょうど姑さんの具合が悪くて
看病に多忙な時だったそうです。
末娘は女中さんに任せっきりで、
自分は姑さんの世話についていた。
「ああ、あの子を抱いて育てることがなかったなあ」と、
その思いが蘇ったというのです。
上の子二人は我が胸に抱いて育てた、
あの子は抱くこともできなかった、
それでも姑さんの看病に精一杯尽くしたんやから
これは正しいと思っていたけど、あの子の立場に立ってみると、
どんな思いをしただろうか、
母親に抱かれることもなく寂しく辛かったのと違うだろうか、
と気付いてくると、もう末の娘に対して、しまった、悪い事をした、
申し訳ないことをした、と可哀そうで、
涙がこぼれてたまらなくなってきたそうです。
すると、そこへ娘さんが帰って見えた。
お母さんは仲の悪い娘さんの前に手をついて詫びられたのですね。
あなたの幼い頃、抱いてあげることも遊んであげることもできなかった。
寂しいかったのと違うかと泣いて話されると、娘さんも、
私だけ、なんで上の姉さんのようにしてもらえんのかと思って
ずーっと寂しかった、辛かった」と娘さんもワンワン泣き出して、
そしてお母さんが「可哀そうなことをした、堪忍して」と詫びますと、
娘さんも「今迄の親不孝を許して下さい。
私は今迄言えなかったのです。
これからは本当の親孝行をさせて下さい」と言って、
親子で抱き合って泣いて詫び合ったそうです。
このことがあって、お母さんから電話がかかって来ました。
今まで張り詰めていた心がほどけて、変な気持ちだと言います。
「心の中の芯が抜けてしまったようです。
しかし有難いです」とおっしゃっています。
この子はいやらしい子だ、敵の生まれ変わりだという一心だったのが、
自然に消えて、
何とも言えないと泣いて話しておられました。
~ 感謝・合掌 ~