恩師の御著書「真理を求める愚か者の独り言」より
第一章 或る愚か者の生涯
◆絶対を忘れているむなしさ◆
最も考えるべき事柄を考えるのが哲学だとしたら、
この青年が哲学を勉強した理由が
自分自身でわからなくなったというのも当然でしょう。
死ぬことは生きることと同じくらい大事なことです。
生きていればいずれは死ぬのは当たり前です。
これは絶対に避けられないことです。
医療技術がいかに発達しようが、
この絶対ということはなくなりません。
絶対に死ぬものであるならば、
いかにして楽に死ぬかということは、
私たち一人一人にとっては大きな問題のはずです。
人様に迷惑もかけず、
楽に死ねたらいいとは誰もが口にする言葉です。
しかし、自分の平素の心掛けと努力次第で、
望みどおりに楽に死ねるということを理解していらっしゃる方は
甚だ少ないと思います。
死は恐ろしくて醜いもので、
望み通りの死に方はできないものと信じられ、
そらが常識のようになっております。
死を忌み嫌っていたあの哲学科出身の青年も例外ではありません。