生涯いちエンジニアを目指して、ついに半老人になってしまいました。

その場考学研究所:ボーイング777のエンジンの国際開発のチーフエンジニアの眼をとおして技術のあり方の疑問を解きます

その場考学との徘徊(09) 真田丸の鏝文字と塗り壁

2016年06月04日 19時39分04秒 | その場考学との徘徊
真田丸の鏝文字と塗り壁

NHKの大河ドラマの真田丸の題字で有名になった左官の鋏土秀平氏は高山の出身で高山市内には彼が塗った土壁がいくつもある。壁というよりは絵画といったほうが適当かもしれない。
 真田丸を中心に高山市内で開催中の、彼の作品の特別展を拝見した。すべての作品には、詩や文章が添えられており、独特の雰囲気を醸し出している。

 真田丸の巨大な題字は作成時のヴィデオだったが、ドラマの主人公を表した3作品に感銘を受けた。3日前のことで、メモも取らなかったので正確ではないが、横2メートル、縦70cmくらいだったと思う。
六文銭の下に、左から「女性たち」、「真田信幸」、「真田信繁」だった。すべて顔料や塗料は使わず、色々な土を塗った作品なのだが、どう見ても日本画のように見えてしまう。女性たちは、幾重の流線が右に向かって彗星のように進んでいる。一団となって平和に向かって突き進んでいる印象だった。中央の信幸のイメージは、漆黒の空の中心に太い銀河が横切り、小さな星が無数に点在している。平和な徳川の治世になって、過去に戦死した多くの仲間を思っている。最後の信繁のイメージは、幾筋かの細い線がわずかに曲がりながらも突き進んでいる。線の彫は深い。いずれも画像で示すことができないのは、残念だ。
 
 唯一紹介できるのが、美術館のエントランスの天井と壁だ。その写真をいくつか示す。









 売店で1冊の本を買った。「ソリストの思考術―鋏土秀平の生きる力」六耀社[2012]で、シリーズ本の第5巻になっている。冒頭の次の言葉に惹かれて買ってしまった。
『ソリストのもともとの意味は「独奏者」だが、このシリーズでは「独“創”者」と位置付けている。流されず、おもねらず、自分のやり方を貫き、独自のスタイルを築いた者が、現代のソリスト、・・・。』とある。
 多くの逸話が語られているのだが、面白かったのは「土蔵論争」。市内の文化財として、江戸時代に農民一揆の首謀者を匿った土蔵を修理することになった。彼は、意図的に当時の素人の壁塗りの技術と、一部の剥がれ落ちを敢えて再現した。評価は真っ二つに分かれた。下手な職人だ、との評価が多かったようだ。



「和を以て貴しとなす」と、「独走、独創」はある意味矛盾する。グローバル化の世界にあって、これをどう両立させてゆくかが、これからの課題なのだろう。


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