生涯いちエンジニアを目指して、ついに半老人になってしまいました。

その場考学研究所:ボーイング777のエンジンの国際開発のチーフエンジニアの眼をとおして技術のあり方の疑問を解きます

 メタエンジニアの眼シリーズ(02);「明六雑誌」とその周辺

2016年05月24日 10時47分44秒 | メタエンジニアの眼
書籍名;「明六雑誌」とその周辺

編集者;神奈川大学人文学研究所
発行所; お茶の水書房 発行年、月;2004.3   文献番号;KMB004
初回作成日;H26.7.19 最終改定日;H28.5.24


                                                              
「明六雑誌」が発行されたのは、明治7年から8年までのたった20ヶ月間であった。明六社は森有礼により提唱され、投稿者は福沢諭吉、西周、津田真道などの当時の錚々たるメンバーであった。掲載された論文は114編で、文明開化論、言語政策、婦人問題、哲学、思想、政治、経済、法律、教育に及んでいたと、序文で述べられている。

神奈川大学で、この書の研究会が持たれたのは、その原本が同大学の図書館に所蔵されている為であろう。巻頭に写真等が示されている。この雑誌に掲載された論文の価値は、副題にある、西洋文化の受容にあるのだが、もっとも有名なのは、文中に翻訳されている西洋の文献の和訳に用いられた「和製漢語」である。代表的なものは科学、哲学、法学などだが、その数は有に1000語を超している。表3(pp.181)に依れば、合計1566語で、多くは消滅したが、現有語として528語が存在する。
 中でも、「西周の人生三宝説」で用いられた語は多く現在の科学・政治・文化の中で使われている。彼が、その文章の中で、西洋文献や著者名などを逐語訳していたためであろう。

西周の人生三宝説は、掲載途中で雑誌が廃刊となったので,未完の説と云われている。また、彼の育った儒教の環境と、西洋哲学のいいとこどりの色彩が強く、「失敗した真理」などとも云われている。
人生三宝説の三宝とは、健康・知識・富有である。彼は、その執筆の意図を
『今茲に論する趣旨は此一般福祉を人間最大の眼目と立て、此れに達する方略を論せむとす』
と記されている。ここで、福祉という言葉は、happinessであり、現在では幸福とすべきであろう。そして、彼は一般人の最上極処のhappinessを達成するための方略として、人生の三宝を挙げている。そして、中でも知識=教育が最も大切な基礎であるとしている、即ち、健康は人生の大前提ではあるが、知識の増進(=教育)が、健康の維持と富有の確保に決定的であるからである。また富有については、
『金と富の差別は経済学に譲るべし』としか述べずに、別途の著書「百学連環」の制産学(現在の経済学)の中で論じている。

                                                                               


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