12.2 ジェットエンジンの原理
飛行機が高速で飛べる原理は、単純に考えれば作用と反作用だけの問題となる。つまり、プロペラ機やジェット機と扇風機は同じ原理になっている。(図12.2) 扇風機は風が発生しても動かないが、それは発生する力が弱く、扇風機自身の重量による台座の摩擦力に勝てないからで、もし車を付けた台座に乗せれば、風と反対方向に動く。(2)同様に、プロペラ機でも、プロペラの回移転数が低いときには、発生する力は弱く、ブレーキによって停止している。
図12.2 推進に貢献する反作用(2)
ジェット機の場合も同様で、エンジンがアイドリング(待機状態での運転)の時には飛行機は動いてはならない。そのために、エンジンのアイドリング時の出力は、定格の1%以下に抑えなくてはならない。実は、このことは設計上少し難しい。なぜならば、エンジンが自立回転をするのは、タービンが発生する軸力と、圧縮機に加えられる軸力とが一致した時であり、その状態ではまだ回転数は低く、エンジン内の空気の流れは不安定なままである。
特に、ファンジェットエンジンでは、最前部にあるファンを通過する空気の大部分は、タービンでの仕事をせずに、そのまま後方に噴出されて推力になってしまう。従って、アイドリング時には、コアー側を流れる空気を熱力学的によほどの高効率で作用させないと成立しない。
さらに、着陸時にはフライトアイドルで着陸態勢のまま進行中に、何らかの異常事態が発生し場合には、所定時間内に最大出力の95%まで急加速ができなければならない。このように、ジェットエンジンでは通常のガスタービンでは求められないいくつもの特殊条件がある。そのことについては次の巻で述べる。
ジェットエンジンはガスタービンの一種であり、その基本はブレイトンサイクルとして1872年にブレイトン(George Bailey Brayton、1830-1892)によって熱機関として考案された。当初は、圧縮工程と膨張工程をシリンダー内のピストンで結ぶもので、ターボ式ではなかった。
このサイクルは、比較されるオットーサイクル(ガソリンエンジンの原理で1877年に考案)とディーゼルサイクル(ディーゼルエンジンの原理で1892年に考案)より早くに発表されたのだが、有効な仕事を取り出すためには、構造が複雑になることと、定圧燃焼を維持することが困難と見なされて実用化が遅れた。しかし、連続サイクルが可能な回転式の圧縮機とタービンが開発されて連続燃焼が容易になると、ガスタービンとしての開発が一気に進むことになった。しかし、その構造と必要な出力を得るための各要素の性能向上が難しく、実用化は20世紀からであった。一方で、19世紀には多くの熱機関が発明されて、順次実用化が進められた。その間の年表を(図12.3)に示す。
図12.3 ブレイトン時代における熱機関の歴史
また、ブレイトンサイクルでは、一般的に温度比と圧力比が高くなるほど熱効率は良くなる。従って、気圧も気温も低い高空であっても、地上と同じ温度比と圧力比であれば、熱効率を保つことができる。また、全体性能の向上は、タービンの入り口温度(TET;Turbine Entry Temperature)とそれに応じた圧力により実現する。要素のポリトロピック効率を88%と仮定した時のマッハ0.8での巡行時の熱効率を図1.4に示す。(4)
図12.4 タービン入り口温度と熱効率の関係(4)
飛行機が高速で飛べる原理は、単純に考えれば作用と反作用だけの問題となる。つまり、プロペラ機やジェット機と扇風機は同じ原理になっている。(図12.2) 扇風機は風が発生しても動かないが、それは発生する力が弱く、扇風機自身の重量による台座の摩擦力に勝てないからで、もし車を付けた台座に乗せれば、風と反対方向に動く。(2)同様に、プロペラ機でも、プロペラの回移転数が低いときには、発生する力は弱く、ブレーキによって停止している。
図12.2 推進に貢献する反作用(2)
ジェット機の場合も同様で、エンジンがアイドリング(待機状態での運転)の時には飛行機は動いてはならない。そのために、エンジンのアイドリング時の出力は、定格の1%以下に抑えなくてはならない。実は、このことは設計上少し難しい。なぜならば、エンジンが自立回転をするのは、タービンが発生する軸力と、圧縮機に加えられる軸力とが一致した時であり、その状態ではまだ回転数は低く、エンジン内の空気の流れは不安定なままである。
特に、ファンジェットエンジンでは、最前部にあるファンを通過する空気の大部分は、タービンでの仕事をせずに、そのまま後方に噴出されて推力になってしまう。従って、アイドリング時には、コアー側を流れる空気を熱力学的によほどの高効率で作用させないと成立しない。
さらに、着陸時にはフライトアイドルで着陸態勢のまま進行中に、何らかの異常事態が発生し場合には、所定時間内に最大出力の95%まで急加速ができなければならない。このように、ジェットエンジンでは通常のガスタービンでは求められないいくつもの特殊条件がある。そのことについては次の巻で述べる。
ジェットエンジンはガスタービンの一種であり、その基本はブレイトンサイクルとして1872年にブレイトン(George Bailey Brayton、1830-1892)によって熱機関として考案された。当初は、圧縮工程と膨張工程をシリンダー内のピストンで結ぶもので、ターボ式ではなかった。
このサイクルは、比較されるオットーサイクル(ガソリンエンジンの原理で1877年に考案)とディーゼルサイクル(ディーゼルエンジンの原理で1892年に考案)より早くに発表されたのだが、有効な仕事を取り出すためには、構造が複雑になることと、定圧燃焼を維持することが困難と見なされて実用化が遅れた。しかし、連続サイクルが可能な回転式の圧縮機とタービンが開発されて連続燃焼が容易になると、ガスタービンとしての開発が一気に進むことになった。しかし、その構造と必要な出力を得るための各要素の性能向上が難しく、実用化は20世紀からであった。一方で、19世紀には多くの熱機関が発明されて、順次実用化が進められた。その間の年表を(図12.3)に示す。
図12.3 ブレイトン時代における熱機関の歴史
また、ブレイトンサイクルでは、一般的に温度比と圧力比が高くなるほど熱効率は良くなる。従って、気圧も気温も低い高空であっても、地上と同じ温度比と圧力比であれば、熱効率を保つことができる。また、全体性能の向上は、タービンの入り口温度(TET;Turbine Entry Temperature)とそれに応じた圧力により実現する。要素のポリトロピック効率を88%と仮定した時のマッハ0.8での巡行時の熱効率を図1.4に示す。(4)
図12.4 タービン入り口温度と熱効率の関係(4)
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