ささやかな幸せ

SUPER EIGHT、本、美術鑑賞、俳句、お茶が好き!
毎日小さな幸せを見つけて暮らしたい。

『終わった人』

2017-06-24 22:04:38 | 
『終わった人』 内館牧子 講談社
 大手銀行の出世コースから子会社に出向、転籍させられそのまま定年を迎えた田代壮介。仕事一筋だった彼は途方に暮れた。妻は夫との旅行などに乗り気ではない。「まだ俺は成仏していない。どんな仕事でもいいから働きたい」と職探しをするが、取り立てて特技もない定年後の男に職などそうない。生き甲斐を求め、居場所を探して、惑い、あがき続ける男に再生の時は訪れるのか?
 おもしろかった。脚本家でもある内館さんの本だから、きっとドラマ化されるな。要所要所に出てくる石川啄木の歌がその場面にピッタリで効いている。
 我が家も何年後かに夫が定年を迎える。きっとこんな感じなんだろうなと思いつつ読む。夫が仕事に邁進できたのは、妻が家事をこなしているから。家に帰れば、食事は出てくる、風呂は沸いてる、服はきれいに洗濯されている、布団には清潔なシーツ。当たり前に思うなよ。定年になったら急に女房孝行するって?今まで妻をほっておいて?壮介の妻・千草の気持ちがよ~くわかるわ~。
 カルチャーセンターの受付をしているアラフォー女性に、もしかしたらと思う壮介。男って、バカだなあ。壮介の娘・道子の言葉のなんて的確なこと!
 「将来を嘱望された男ほど、美人の誉が高かった女ほど、同窓会に来ない」「人の行きつくとこは大差ない」という言葉も「内館さん、さすが!」と思う。しかし、何といっても一番響いた言葉は「思い出と戦っても勝てねンだよ」(あとがきでプロレスラー武藤敬司さんの名言だと述べている)関ジャニ∞の曲ではないが「今」が大切。
 エンディングは、普通という感じで少し残念だった。
 本を読んで夫との関係を考える。「生まれ返っても、またあなたと結婚したい」と言ったら「勘弁してくれ」と夫に言われた私。「来世も再来世も一緒に」と言った海老蔵さんと小林麻央さん夫婦のように、強い愛で結ばれてはいないが、せめて「一緒になってよかった」と言えるような関係を築いていきたい。
 どこかで読んだが、妻が夫を介護するのは「仕返し介護」、夫が妻を介護するのは「罪滅ぼし介護」というそうだ。「仕返し」はしたくないなあ。
コメント
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