ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『大空港』#14

2020-01-07 00:00:13 | 刑事ドラマ'70年代









 
☆第14話『いのち炎の如く 壮烈!! 梶刑事の最期』

(1978.11.6.OA/脚本=池上金男/監督=日高武治)

青森から東京に向かう特急列車内で某共和国の駐日大使が暗殺され、全国的なニュースになります。

そして新東京(成田)国際空港内のトイレでスリ常習犯の他殺死体が発見され、ワイヤーロープを使った殺しの手口が大使暗殺のそれと酷似してるため、空港特捜部のチーフこと加賀警視(鶴田浩二)は2つの事件の繋がりを探るよう部下たちに指示します。

そんな折り、銃弾の古傷が悪化して入院中の部下=梶警部(緒形 拳)を見舞いに行った加賀チーフは、主治医から梶の余命が良くて3か月であると聞かされ、愕然とします。

それに薄々感づきながら現場復帰する気満々の梶は、以前自分が逮捕して何かと面倒をみたベテランスリのオヤジ(花沢徳衛)が、殺されたスリの仲間だから何か知ってる筈だと息巻くんだけど、チーフは静養を命じて鯉沼(中村雅俊)と海原(高岡健二)にオヤジを当たらせます。

しかし、オヤジは確かに何か知ってる様子なんだけど、梶以外の刑事に協力する気は無いようで口をつぐみます。

オヤジは、殺された若手スリが最後にスッたパスポートを持っているのでした。その持ち主は、特急列車で共和国の大使を暗殺した殺し屋(浜田 晃)。スられたことにすぐ気づき、若手スリを捕まえて取り戻そうとしたんだけど、彼はすでにパスポートを仲間に渡してたワケです。

そのパスポートには大使館にいる黒幕(田口 計)が殺しを指示した証拠となるビザが挟まれており、殺し屋は何としてもそれを取り戻さなきゃいけない。

そこまでは知らないまでも犯罪の匂いを嗅ぎ付けたオヤジは、男手一つで育ててる愛娘の進学費用を稼ぐべく、パスポートの持ち主に取引を迫るという危険な賭けに出ます。

で、当然ながら殺されそうになり、すんでのところで鯉沼と海原に救われるんだけど、それでも捜査には協力しようとしない。

どうやら暗殺事件の背後には共和国の過激派が絡んでおり、早く殺し屋を逮捕しないと間もなく来日する同国の特使も狙われるに違いない!

焦った鯉沼たちはオヤジを説得するため、梶警部が余命3ヶ月である事実をオヤジに打ち明けるという禁じ手を冒します。

その頃、加賀チーフは病院に呼び出され、家族の希望により梶を退院させる意向を主治医から聞かされて、いよいよ大事な部下を失う覚悟を迫られます。

梶の妻(吉野佳子)と一緒に病室を見舞ったチーフは、温泉旅行を手配するから家族で行って来るよう提案するんだけど、退院できると聞いた梶の第一声は「おおっ、じゃあ明日からさっそく仕事だ!」でしたw

「バカ言っちゃいかん。退院はいいが、今言ったように充分家庭サービスをして、今までの借りを返したら出勤したまえ」

「……それは命令ですか?」

「命令だ」

たったそれだけのやり取りでも、鶴田浩二&緒形拳という名優2人が演じるとさすが、切なさが込み上げてきます。

で、仕方なく出勤を諦めた梶だけど、そこに知らなくていいことを知ってしまったスリのオヤジが駆けつけ、殺し屋のパスポートとビザを梶に渡してしまいます。

それを見て、間もなく成田に到着予定の特使が狙われることを察した梶は、病院を飛び出して空港に駆けつけ、その顔を知ってるオヤジと2人で殺し屋を探し回るのでした。

そして爆弾が積まれたトラックをリモコンで遠隔操作する殺し屋を見つけた梶は、特使を乗せた旅客機を守るためトラックに飛び乗り、なんとか衝突を回避させるもフェンスに激突、爆発したトラックもろとも炎上しちゃいます。

「せめて、家族旅行だけはして逝けば良かったのに……」

切ない顔でチーフはそう呟きますが、大好きな刑事の仕事に殉じて逝けたのは、梶にとって本望だったかも知れません。

だけど死に目にも会えなかった家族は切ないどころじゃ済みません。梶夫妻には5人もの子供がいるし、奥さん役の吉野佳子さんは後に『太陽にほえろ!』でもトシさん(地井武男)の奥さん役を演じて、離婚という憂き目に遭われます。

1978年秋、人気絶頂で「お化け番組」と呼ばれた日テレの『太陽にほえろ!』がボン(宮内 淳)の殉職を1年延期し、その隙を狙ったのかどうか分からないけどフジテレビ「月9」枠で放映中だったこの『大空港』は、番組スタートから僅か3ヶ月でベテランの梶を殉職させちゃいました。(緒形拳さんが最初から1クール契約だったんでしょう)

以降、1年半の放映期間で歴代レギュラー全10名のうち実に6名が死亡という、異常に高い殉職率で(全員一挙殉職の『警視庁殺人課』は例外として)『太陽にほえろ!』を遥かに凌駕する鬼畜番組として、この『大空港』も侮れない作品です。

セクシーショットは空港特捜部の紅一点=神坂紀子を演じた片平なぎささん、当時19歳。1年後に海外転勤という形で降板(そして後に殉職。転勤した人までわざわざ殺さなくても!)、一足先に殉職した中村雅俊さん主演の学園ドラマ『ゆうひが丘の総理大臣』の後番組『あさひが丘の大統領』でヒロイン=涼子先生役に抜擢され、やはり『太陽にほえろ!』で殉職したばかりの宮内淳さんと1年間共演することになります。当時のテレビ界はほんと殉職刑事だらけ。それが一種のステイタスになってましたね。
 
コメント (2)
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